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「病は気から」って本当なの? #もやもや解決ゼミ

日常に潜む「お悩み・ギモン」=「もやもや」を学術的に解決するもやもや解決ゼミ。
気の持ちようによって、病気の症状は軽くなったり、重くなったりする「病は気から」ということわざがありますね。はたして「病は気から」は本当なのでしょうか?

北海道大学 遺伝子病制御研究所 大学院医学院 分子神経免疫学の村上正晃教授に答えてもらいました!村上先生は「ストレスと免疫系の関係」についての世界的な研究者です。

「病は気から」は本当なの?

「病は気から」は本当にあると思います。実際にいくつかのヒト疾患での臨床研究で、抑鬱(うつ)状態の患者は症状が悪いことも発表されています。また、私たち自身も気分が乗らないときなどは体がだるく、気分がよいときには体が軽くなりますね。

これまでの説明としては自律神経系、つまり交感神経と副交感神経のバランスが関連するなどと説明されてきました。

しかし、私たちの研究チームは、自己反応性の免疫細胞がストレスによる胃痛や腸炎といった消化器系の不調に加えて、突然死を引き起こす心臓疾患に関係している可能性について明らかにしつつあります。これはまさに「病は気から」の仕組みを解明することなのです。

ストレスによって「ゲートウェイ反射」が起こる

その仕組みについて簡単に説明してみましょう。

人間の免疫細胞は、本来、細菌やウイルスなどから体を守る役割を果たします。しかし、その一方で体の成分に反応して自分自身の体を攻撃してしまうことがあります。これを自己反応、自己免疫というのですが、この自己反応性の免疫細胞によって、関節リウマチ、膠原病、1型糖尿病などの自己免疫疾患を含めてさまざま疾患が引き起こされることがわかっています。

脳を構成するタンパク質に反応する自己反応性の免疫細胞が、ストレスによって脳内に到達して小さな炎症を起こし、たまたまそこが胃につながる神経回路であれば、これが活性化されることで胃に支障が出る。このようなメカニズムになっているのではないか、と考えられます。

しかし、中枢神経・脳に血液を送る血管には「血液脳関門」という一種のフィルターがあって、細菌やウイルスのみならず、免疫細胞や大きなタンパク質などが流れこまないようになっているのです。

ではなぜ、この血液脳関門を突破して自己反応性の免疫細胞が脳に送られるのでしょうか? 実は、何らかの原因で一種のバイパス、「入り口」が作られることがあるのです。

この入り口を「Gateway(ゲートウェイ)」といい、いろいろな刺激でゲートウェイができ、自己反応性免疫細胞の中枢神経・脳への侵入を許してしまうことを「ゲートウェイ反射」と呼んでいます。
わたしたちの研究チームはこの仕組みを2012年に世界で初めて明らかにしました。

また、わたしたちの研究チームは、ストレスによっても「ゲートウェイ反射」が起こり得ることを示しました。
マウス実験では、ストレスによって胃が痛くなったり、下痢になったりといった症状の差が現れることもわかっています。

病気を遠ざけるには「気の持ちよう」をどのようにすればいいの?

ストレスをためないで楽しく生きること、いろいろなことに挑戦して前向きに暮らすことが重要でしょう。

マウスでも楽しい環境、あるいは、いろいろな未経験の道具などがある環境では、病気の発症が遅れることがわかってきています。

また、現在わたしの研究チームは、上記の自己反応性免疫細胞(T細胞)を特定できる技術を開発中です。それが実現すれば、加齢などで増加した自己反応性T細胞を特定し、これを除去することによって、ストレスに関連する病気の発症を予防・治療できるかもしれません。



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