■連載/石野純也のガチレビュー
ネット経由で書き換え可能なSIMカードの「eSIM」を内蔵した端末が、徐々に増えている。普及の立役者は、iPhoneだ。アップルは2018年に発売したiPhone XS、XS Max、XRをeSIMに対応させ、その後継機にあたるiPhone 11 Pro、11 Pro Max、11にもその機能を継承した。アップル自身が販売するSIMフリーモデルではもちろん、いわゆるキャリア版でもSIMロックを解除するだけでeSIMの利用が可能になる。
Androidもこの動きに追随しており、日本ではグーグルのPixel 4、4 XLがeSIMに対応した。楽天モバイルの専用モデルである「Rakuten mini」も、eSIMに対応する予定だ。モデル数で言えばまだ一部にとどまるが、販売台数面ではiPhoneの対応が大きい。アップルが仮に今のシェアを維持したまま端末を最新モデルに置き換えていければ、将来的には約半分のスマホユーザーがeSIM対応端末を所有することになる。
ユーザーにとってのメリットは、通信料を節約できるところにある。特に影響がわかりやすいのは、海外で利用した際の料金。ドコモやauは、24時間あたり980円のデータローミングサービスを提供しているが、それでも10日間使えば料金は1万円に迫る。これに対し、ローミングサービスの安価な海外キャリアをeSIMとして設定すれば、料金を1/5程度に節約可能だ。今回、筆者の出張に合わせ活用したのが、3香港という香港のキャリアだ。
中国・深センで3香港のeSIMを使ってみた
ローミング専用SIMと香港用SIMを用意、料金は10日で138香港ドル
3香港は、香港に拠点を構える大手キャリアの1つ。iPhoneが搭載したタイミングでいち早くeSIMのサービスを打ち出しており、その内容も徐々にアップデートしている。本稿執筆時点でのサービスは主に2種類。国際ローミングに特化したサービスと、香港で利用するための国内データ通信サービスが、その2つだ。
今回利用した国際ローミングサービスは、28の国や地域に対応。中国、マカオ、台湾、韓国といった近隣の国や地域はもちろんのこと、アメリカやカナダ、フランスなど、欧米の一部でも利用できる。ドイツなど、欧州で非対応な国もあるため万能というわけではないが、料金は10日で138香港ドル。日本円にして、約1900円とリーズナブルなため、対応している国では非常にお得なサービスだ。
データ容量は一応、無制限になっているが、1日500MBを超えると速度が128Kbpsに制限される。ブラウジングや文字中心のSNSなら読み込むことはできるが、画像などの表示にはかなり時間がかかる。事実上、1日500MBまで使えるeSIMサービスと考えておけばいいだろう。1日のカウントは、香港時間の0時が基準になるため、時差の大きな北米などでは少々使いづらい面もある。逆に、中国やマカオ、台湾など、香港と時差のない国や地域では深夜0時ピッタリに容量がリセットされる。
初回申し込みの際は10日、138香港ドルのプランしか選択できないが、継続して利用することも可能。更新時には、1日プランも選択できる。こちらの料金は15香港ドルで、200円強といったところ。有効期限が180日(約6か月)あるため、半年に1回程度、旅行や出張で海外に出るユーザーには重宝する。しかもiPhoneにeSIMを設定すると、DSDS(デュアルSIM/デュアルスタンバイ)になるため、普段の電話番号で待受けしつつ、データ通信にだけ3香港を利用できる。