米国のみならず世界中で、がん治療が奇跡的と言ってもいいほどの進歩を遂げているにもかかわらず、依然としてこの病気は米国で死因の第2位を占めている。
問題は、人間の体が一人一人異なるため、あらゆる病気の症状も患者に固有であるということだ。一般的にがん治療の有効性は、ある種類のがんにかかっている人のうち同じ治療法でいかに多くの人を治せるのかにかかっている。
疾患の理解が進むにつれて、個別の疾患に標的を定めた治療が市場に出始めた。Xilis(ジリス)の創業者は、その種の治療をさらに効果的にするプロセスを開発した。
Xilisは、それぞれデューク大学の教授および研究者であるXiling Shen(シリン・シェン)氏とDavid Hsu(デイビッド・スー)氏が創業した。同社における技術は、オランダの研究科学者Hans Clevers(ハンス・クレバース)氏の研究をベースとしている。クレバース氏は、2004年にライフサイエンスのBreakthrough Prizeを受賞し、現在はロシュの取締役を務める。同氏は、研究用に人間の小型臓器を培養する手法の改良に貢献した。
シェン氏とスー氏はその研究を一歩進め、がん患者の腫瘍を培養・維持できるプロセスを開発している。医師や製薬会社が、一つ一つのがんにあった治療法を開発するのに役立つ。
「当社の技術は、1つのがん生検から1万個の微小な腫瘍を生成し、どのがん治療が患者に効果があるのか、またはないのかを検証する」とシェン氏は声明で述べた。「臨床試験ではすでに、当社の技術が治療の成功に貢献する見込みを示すデータや、薬剤耐性患者への新しい治療法発見を示唆するデータもある」。
創業者らは2019年の早い時期に、研究での発見に基づき臨床試験を開始した。その結果は非常に有望だったため、2人はこの技術を活用に向けて会社を設立し、臨床現場で使えるまでの時間を短縮するため資金調達することを決めた。臨床で使えるようになれば、患者は標的を定めた治療法の恩恵にあずかれる。
シェン氏はインタビューに対し、同社の技術には非常に説得力があるため、先駆者であるクレバース氏が共同創業者として会社に参画し、将来の開発に協力することに同意した、と述べた。
「我々が発明したのは、マイクロ流体力学で使える微小な液体だ」とシェンは言う。「マイクロオルガノイド(試験管内で作られた小型臓器)を培養して、その3次元の微小環境でがん細胞を腫瘍に成長させる」
Xilisは技術の商業化を加速するため、シードで300万ドル(約3億3000万円)を調達した。投資家には、数十億ドル(数千億円)規模のがん治療技術開発企業Guardant Healthの初期投資家であるFelicis Ventures、元NFLのスーパースターJoe Montana(ジョー・モンタナ)氏のファンドであるLiquid 2 Ventures、Pear、8VCなどが名を連ねる。
同社の技術の価値は、短期的には患者一人一人に的確に合わせた治療を生み出す能力にあるが、長期的には同社が蓄積するデータセットに価値がある。「当社が保管・蓄積するマイクロオルガノイドを、製薬会社が試験に使いたいと考えている」とシェン氏は言う。
シェン氏は、新薬の有効性を検証する初期的な試験で何百万ドル(何億円)も節約できる可能性を、製薬会社が見逃すはずはないと言う。この技術を利用すれば、製薬会社は「はるかに早くかつ低コストで大規模な医薬品スクリーニングを行うことができる」
画像クレジット:Oregon State University / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.