ライブ動画配信サービス「SHOWROOM」を運営するSHOWROOMが、新たに開始を予定している動画メディアのコンセプトついて発表しました。
「Entertainment Technology Conference 2019」と題した新戦略発表会で、前田裕二社長が語ったのは、同社のライブ配信プラットフォームから、「エンタメテックカンパニー」への転換です。
「短いけど深く突き刺さる」動画
「Short,but Deep.」――。これが2020年3月までの開始を目指す、新動画メディアのコンセプトです。サービス名は未定。プロの作成するコンテンツに限定した「短いけど深く突き刺さる」動画メディアを展開するといいます。
前田社長は「必ずしも人を感動させるのに、長い時間は必要と思っていません。もしかすると30秒でも15秒でもいいかもしれない。短い時間の中に、プロのクリエイティビティをうまく掛け合わせて、感動を作るチャンレンジをしていきたい」と語ります。
12月5日に資本提携を発表した、ジャニーズ事務所系列のレコード会社であるジェイ・ストームとともに、コンテンツを制作予定。すでにトップアーティストと話をしており、「あこがれの場になるようなコンテンツを初期に発信したい」と前田社長は意気込みます。
同社がスマホ向けの短尺動画サービスを始める背景として、メディア環境の変化を挙げます。「スマホが登場したことによって、1億人がエンタメを享受できるスクリーンを手にした。細切れの時間がエンタメを享受できる時間に変わりました」(同)。スマホ登場以前は、自宅などでまとまった時間がある時に触れるのは、プロの作ったテレビ、映画などのコンテンツがメイン。それに対して、スマホ時代はスキマ時間に多く触れるのが、TwitterやYouTubeなどのアマチュアの手掛けたコンテンツであると、前田社長は指摘します。
「スマホ時代のスキマ時間に、本気のクオリティのプロコンテンツを当ててみたらどうなるだろう、というワクワクから、僕らのビジネスのアイディアの芽が生まれています」(同)
5Gでプロ動画に回帰する?
インターネットの登場でアマチュアが自由に発信できるようになりましたが、今後の「メディア3.0」の時代はプロのコンテンツに回帰すると前田社長は予測します。
「今までスマホは、プロの作り手や演者にとって、自分のコンテンツを載せるに足るものではなかった。映像のクオリティなどクリエイティブの制約という問題が、5Gの登場によって大きく変わってくる」(同)
さらに、現状の動画市場のポジションを考えると、スマホ向け(縦動画)にコンテンツを作成するプロのメディアのプレーヤーがいないと指摘。その理由として考えられるのは、プロの作り手はテレビや映画の横画面を基準に、クリエイティブを制作し、スマホはあくまでセカンドスクリーンという扱いだったからからだと分析します。
収益モデルは未定ですが、広告だけでなく、月額制などを複合的に検討しているといいます。
「音声メディア」と「VRライブ」も
動画メディアの後には、音声メディアを始める計画。集中して聞きたくなる情報量の多いコンテンツを、ニッポン放送と展開予定です。
ほかにも、β版としてスタートさせていたライブプラットフォームサービス「SHOWSTAGE(ショウステージ)」を正式発表。VR(仮想現実)空間での生ライブで、自分も同じ空間にいるかのように体感できるというものです。AR(拡張現実)機能も年内に追加予定で、現実の映像に重ねてライブ映像を視聴できるようになります。
新規戦略として発表された「動画メディア」「音声メディア」「ライブ」ですが、既存のSHOWROOM事業との関連はどこにあるのでしょうか。これら3つに共通点として、前田社長は「すべてステージだと言える」と語ります。
今までのSHOWROOMは、ファンが0人のところから1,000人ぐらいの規模まで広げるのを得意としていました。しかし、マスの世界でスターにするには力不足だったとして、「SHOWROOMが演者の方にとって、必ずしも夢の舞台ではなかったという経営課題がありました」と総括します。