キャッシュレス決済サービス「LINE Pay」の残高が、銀行口座へ直接振り込み出来るようになった。
PayPayやメルペイ、楽天Payといった競合他社に先駆けた新サービスだが、その先にはどんな目論見があるのだろうか。
ポイントは「手数料」と「利便性」
LINE Payでは2019年12月9日から、口座番号か電話番号、もしくはメールアドレスを入力すれば、残高を銀行口座に直接振り込めるようになった。振込先口座は、個人法人を問わない。振込手数料は1回176円(税込)で、1日10万円を上限に利用できる。
新サービスのポイントは、金銭面と利便性にある。まずは振込手数料(176円)の価格設定だが、これは3大メガバンクのネットバンキング(他行あて、3万円以上)より、150~250円ほど安価に設定された。LINE Payの発表文でも「金融機関のインターネットバンキングに比べて、曜日時間帯によって変動しないシンプルかつ日常的にお使いいただきやすい料金」を特長のひとつに掲げている。ただ、住信SBIネット銀行やGMOあおぞらネット銀行(いずれも157円/回)といったネット専業銀行と比較すると、そこまで優位に立っているわけではない。
利便性は、なんと言っても、コミュニケーションアプリ「LINE」の中で、銀行振込が行えることにある(iPhone版は近日対応予定)。スマホによるネットバンキングでは、ログインパスワードとは別に、「取引パスワード」や暗証番号を入力したうえで、メールやアプリで受け取ったワンタイムパスワードによる二段階認証を行うのが一般的だ。その点、LINE Pay振込では、6ケタの専用パスワードを入力するだけ。事前に行うアカウントの本人確認でセキュリティを確保する。もっともこれを「便利」と取るか、「不安」と感じるかは、ユーザーによってわかれそうだ。
「スーパーアプリ」を彩る振込機能
デジタルを介した送金サービス自体は、とくに目新しいものではない。イーバンク銀行(現:楽天銀行)が02年に開始した「メルマネ」は、受取人が必ずしも同行の口座を持っている必要はなく、メールアドレスと名前を入力するだけで送金できる。他行宛の手数料は、1回168円と、LINE Payより若干安価に設定されている。
ただLINE・ヤフー連合は、ひとつのアプリ内で、幅広いサービスを利用できる「スーパーアプリ」を目指している。その戦略から考えると、銀行振込そのもので勝負をかけるというよりも、あくまで「使い慣れたLINEで振り込みもできるよ」といった付加価値を目指しているのかもしれない。
仮に、LINEそのものの価値を高める目的なのであれば、ライバルはキャッシュレス決済ではない。メールや電話といったコミュニケーションツールや、各種ニュースサイト、ソーシャルゲーム......LINEのスーパーアプリ化が進めば進むほど、競合は増えていく。今回の新機能は、その中の調味料的な役割になりそうだ。