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Operaの元CEOによる高機能ブラウザ・Vivaldiが「ユーザーエージェント文字列をChromeに見せかける」ことを余儀なくされた理由とは?

ブラウザのユーザーエージェント文字列とは、アクセスするウェブサイトのホストサーバーに対してブラウザが送信する、使用しているOSやデバイスのアーキテクチャ、ブラウザの情報などを含んだテキストです。ノルウェー発のブラウザ・Operaを開発するオペラ・ソフトウェアの元CEOであるヨン・スティーブンソン・フォン・テッツナー氏らが開発するブラウザの「Vivaldi」は、このユーザーエージェント文字列を「Chromeと同じものに変更する」と発表しました。

User Agent Changes | Vivaldi Browser

https://vivaldi.com/ja/blog/user-agent-changes/

ユーザーエージェント文字列は本来、ウェブサイトがユーザーに対してよりよいエクスペリエンスを提供するために用いられます。たとえばユーザーエージェント文字列の情報をもとに、使用するデバイスなどの環境に応じて最適な画面表示を行ったり、コンテンツのダウンロードに際してウェブサイトが適切なオプションを提示したりすることが可能です。

しかしVivaldi開発チームのRuarí Ødegaard氏は、「時間がたつにつれて、ユーザーエージェント文字列は一部の開発者によって悪用され、権力のある大企業によって乱用されるようになりました」と指摘。近年では、Cookieを使わずにユーザーを特定するブラウザ・フィンガープリントの手がかりとしてユーザーエージェント文字列を用いるなど、本来の意図とは違う使われ方もされています。

Ødegaard氏によると、Vivaldiユーザーから寄せられた「特定のウェブサイトの動作がおかしい」というバグ報告の中には、ユーザーエージェント文字列が原因となっているケースがあるとのこと。Vivaldiのユーザーエージェント文字列は頻繁にウェブサイトからブロックされたり、別のウェブサイトを紹介されたりするとØdegaard氏は述べています。実際にVivaldiがLinuxの最新安定版で使用しているユーザーエージェント文字列が以下のもの。

Mozilla/5.0 (X11; Linux x86_64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/78.0.3904.99 Safari/537.36 Vivaldi/2.9.1705.41

ウェブサイトの開発者は自身が動作をチェックしたブラウザからのアクセスのみを許可して、それ以外のブラウザからのアクセスを拒否する場合があるそうです。そのため、シェアの少ないVivaldiをはじめとする小規模なブラウザが正直にユーザーエージェント文字列を申告すると、正当なブラウザであるにもかかわらずアクセスを拒否されてしまう事態が発生しているとのこと。

さらに一部のウェブサイトでは、特にVivaldiをターゲットにしたブロックや一部機能の制限が行われている可能性が高いとØdegaard氏は指摘。わざとVivaldiからのアクセスに対して不便な挙動をするウェブサイトの一例として、Ødegaard氏は以下のものを挙げています。

・GoogleドキュメントにVivaldiでアクセスすると、警告が表示される。

・FacebookのWhatsAppウェブインターフェースにVivaldiでアクセスしようとすると、ウェブサイトにアクセスすることができない。

・MicrosoftのグループチャットツールであるMicrosoft TeamsにVivaldiでアクセスしようとすると、ウェブサイトにアクセスすることができない。

・NetflixにVivaldiでアクセスしようとすると、ウェブブラウザ用のプラグインであるMicrosoft Silverlightのインストールを提案される。

Vivaldiの開発チームがユーザーエージェント文字列の「Vivaldi」のスペルをあえて「Vivaldo」「Vxvaldi」といった間違ったつづりにした際、以上の問題は発生しなかったとのこと。巨大なテクノロジー企業がVivaldiからのアクセスを意図的に妨害しようとすれば、「ユーザーはVivaldi側に何か問題があると考えてしまうでしょう」とØdegaard氏は述べています。

Vivaldiはこれらの問題に対して、直接ウェブサイトの管理者に「Vivaldiからのアクセスを許可してくれ」とリクエストするなどの対応を行ってきましたが、一向に改善される見込みがないとのこと。そこでVivaldiの開発チームは、ユーザーエージェント文字列をGoogle開発のブラウザ・Chromeと同じものにしてしまうことで、Vivaldiからのアクセスを弾かれないようにすることを決定しました。

開発チームは「Vivaldiからのアクセスが問題ないと確認されているウェブサイトのリスト」を作成し、これら一部のウェブサイトにだけは正しいVivaldiのユーザーエージェント文字列を送信し、それ以外のウェブサイトにはChromeと同じユーザーエージェント文字列を送信するシステムを開発。次にリリースするVivaldiのバージョンから、この機能を搭載する予定だと述べています。



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