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「全固体電池」開発にしのぎ 次世代「本命」、近づく実用化

全固体電池を研究する東京工業大の菅野了次教授=11月21日、横浜市緑区

ノーベル化学賞を受賞する旭化成の吉野彰名誉フェロー(71)が開発したリチウムイオン電池は、スマートフォンやパソコンを普及させ、暮らしを様変わりさせた。一方、次世代電池の「本命」は電極間のイオン移動を担う電解質に固体の材料を用いた「全固体電池」とされ、各国が開発にしのぎを削っている。

現行のリチウムイオン電池は、正極と負極の間に液体の電解質を用い、有機溶媒の電解質が発火するリスクがある。使用できる温度の制限も厳しく、冷却機構を設けると大型化が避けられない。

電解質に固体材料を使う全固体電池は、電解質の蒸発による発火リスクや性能の低下はなくなる。作動可能な温度の幅が広く、小さくても多くの電気を蓄えられる。

東京工業大の研究室で試験中の全固体電池=11月21日、横浜市緑区

固体の電解質に適した物質を見つけたのが、東京工業大の菅野了次教授(63)だ。2011年に液体電解質に匹敵する出力が得られる固体を発見。16年にはさらに高性能な材質を開発し、「固体の方がメリットがあるところまで来た」と話す。

吉野氏は11月に経済産業省で講演した際、「間違いなく基礎研究レベルのブレークスルー(飛躍的進歩)があった」と評価した。

全固体電池は日本が一歩リードしているが、世界各国で激しい開発競争が進む。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は研究開発プロジェクトに、22年度までの5年で100億円を投じる。メーカーや大学などが協力し、量産化に向けた研究を加速。リチウムイオン電池と同じ大きさで3倍のエネルギーを蓄え、製造コストや充電時間が3分の1になる電池の実現を目指す。

菅野教授は、リチウムイオン電池がパソコンなどとともに普及したように、「新しい電池は新しい機器に入る」と指摘。全固体電池は大量の電気が必要な電気自動車などに使われるとみている。



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