キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は12月9日、独LuxFluxと販売代理店契約を締結し、LuxFluxの統合ハイパースペクトル画像処理ソフトウェアの国内ユーザー向け提供を2019年12月上旬より開始すると発表した。
紫外域から赤外域まで、幅広い波長を撮像できるハイパースペクトルカメラは近年の技術革新から、活用範囲が年々拡大している。しかし、その画像処理には複数の波長の画像を処理するための専用ソフトウェア、とくに製造現場ではオンラインを活用したリアルタイム撮像と、それを元にした解析が求められており、画像処理に不慣れなユーザーがそうした機能を手軽に活用できるようにする必要があった。
LuxFluxの画像処理ソフトは、機械学習(ML)をベースとしたAI(人工知能)を有しており、それによる解析や測定のモデル開発が可能であるため、製造ラインにおける対象物の可視化や分類、測定といったことを容易に実現することを可能とする。また、分類用途のほか、対象物の成分量の「測定」も可能であり、例えば半導体ウェハ表面全体の膜厚を一気に測定するといったことが可能になるという。さらに、ソフトウェア単体のため、ユーザーは自分のニーズに応じたハイパースペクトルカメラを選択して、組み合わせて利用することが可能となっている。
ソフトウェアとしては、ハイパースペクトルカメラおよび画像をまとめたキューブデータ(hdr)に対し、多波長での分類、AIによる学習モデルの生成、検証可能な開発用ツール「fluxTrainer」(fluxTrainerにリニアステージの制御機能を付けた「fluxTrainer Pro」も用意)ならびに、fluxTrainerで生成した学習モデルをベースに、キューブデータベースのリアルタイム分類・測定を可能とするライブラリを含んだ実行用ツール「fluxRuntime」の3製品を提供する。
想定価格はfluxTrainerが113万円(税別)、fluxTrainer Proが170万円(同)、fluxRuntimeが128万円(同)で、2022年に1億円の売り上げを目指すとしている。
ターゲット市場としては、半導体、製造業界、自動車、鉄鋼、印刷、放送、食品、医療、製薬、建築などと幅広い領域への適用が期待できるが、まずは同社がこれまでの取り組みで強みを有する半導体製造装置内部の膜厚計測の機能強化といった提案を進めていくとする。従来、半導体ウェハの膜厚計測はウェハ全面ではなく、ポイントごとの測定であったが、ハイパースペクトルカメラによる近赤外領域による厚み測定を活用することで、複数の膜種の厚みなどを手軽に全域測定することができるようになるという。
また、キヤノンITSとしても、これまで機械学習などのノウハウがあまりないユーザーに対する効果的な使い方に関するサポートなども行っていきたいとしており、半導体製造装置分野でまずは実績を作り、その他の産業分野などにも拡大していきたいとしており、ハイパースペクトルの市民化へ向け、積極的にアピールしていきたいとしている。