科学には研究論文がつきものだ。科学の中にもそれぞれの分野があり、世界中の研究者たちが自身の研究成果を伝えるために論文を執筆しているが、個々の論文が世間に対してどの程度の影響を与えるのかを知ることが、研究者らにとって非常に重要なこととなる。
アメリカに拠点を置く国際情報サービス会社「クラリベイト・アナリティクス社」の事業部門であるWeb of Science Groupは、「世界高被引用論文著書(Highly Cited Researchers)」リストの2019年度版を11月19日に発表した。
2014年から毎年恒例となっているこの発表では、引用された論文の数の多さから、世界中で強い影響力のある研究者や所属国または機関などを割り出している。
今回注目されているのが、去年3位だった中国がイギリスを追い抜いて2位になったことだ。1位は前年同様アメリカとなっている。
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全世界に大きな影響を与える高被引用論文著者
研究論文が他の研究者に引用された数が特に多い研究者6,217人を、「高被引用論文著者リスト2019年版」として発表したクラリベイト・アナリティクス社。
従来の学術論文の影響度を推し量る方法では、ジャーナル誌に掲載された個々の研究論文の被引用回数まで調べることができないという難点があったことから、同社は高被引用論文著者という概念を設けた。
高被引用論文とは、世界に与えるインパクトの高い論文数分析において、後続の研究に大きな影響を与えている論文のことを示し、科学全体を自然科学および社会科学の21の分野に分類し、各研究分野で過去10年間の累計被引用数が世界トップ1%に入る論文を、このように定義づけている。
今年のトップ3は、米国、中国、英国
リストによると、研究者の85%はわずか10か国の機関で働いているのみで、6217人の研究者のうち、ほぼ半数(2737人)がアメリカに拠点を置いている。
従って、高被引用論文著者が最も多い国は米国で44%を占めている。去年のランクでは2位が英国、3位が中国となっていたが、今年は中国が英国を抜いて2位に浮上。
高被引用論文著者数においては、中国は去年482人だったのに対し今年は636人と大幅に増加している。
中国は同社のリストで2017年に4位から3位にランクアップしており、2014年最初の発表から、実に3倍にも数が増えている。
ちなみに、今年のリスト4位はドイツ(327人)、5位はオーストラリア(271人)で、2018年と順位に変化はない。日本はというと、去年の13位から今年11位にランクアップしたものの、トップテンに入ることは叶わなかった。
高被引用論文著者という概念の注意点
国によっては、論文の捏造などが社会問題になっているため、科学者の貢献の重要性の指標として、引用を使用することは議論の余地ある問題とされている。
また、注意しなければならないのは「高被引用論文著者に選出された研究者全てが、常に優秀であるとは限らない」ということだ。
つまり、被引用回数はその論文が他の論文で引用された回数の総数を表しているだけであり、論文内容自体の重要性は評価の対象外だからだ。
各研究者がどれほど優れた論文を執筆しているかという点については、本人の論文そのものを読んで確かめるしかないようだ。
References:chemistryworldなど / written by Scarlet / edited by parumo
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2019-12-07 02:02:30