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視力低下を抑制するメガネや量子コンピュータ利用素材開発など革新的技術の知財を補強

特許庁では、スタートアップ企業の知財戦略を支援するプログラム「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」を2018年度から実施。その活動のひとつとして、知財戦略に関心のある知財やビジネスの専門家やスタートアップのネットワーキングイベント「ナレッジシェアプログム」を定期開催している。今回は「今年度第2期採択スタートアップ企業のお披露目会」と題し、採択企業によるピッチと交流会が開かれた。

2019年度のIPASでは、第1期に10社、第2期に5社の計15社を募集。第2期には50社以上の応募のなかから、株式会社Alivas、株式会社坪田ラボ、BionicM株式会社、QunaSys株式会社、UBiENCE株式会社の5社が採択された。

薬が効かない慢性便秘に低侵襲性治療という選択肢

株式会社Alivasは、東京大学ジャパンバイオデザイン発の医療機器開発スタートアップ。先進国では人口の14%が慢性便秘に悩んでおり、そのうち26%が医療にかかっている。既存の治療法は、下剤など経口薬の処方が一般的だが、薬だけでは完治が難しく、7割の患者が不満を抱えている。結腸全摘出という外科的な治療法もあるが、体の負担が大きく現実的ではない。

同社は、外科手術ほどのリスクがなく、内科よりも有効な治療として、新しい医療機器による低侵襲性治療を提案。現在は試作機による動物実験をしている段階だ。プレゼンの直前に、技術資料のスライドがメンター弁理士からの指摘により削除されており、具体的な治療法は非公開となった。さっそくIPASの指導が始まっているようだ。

目の健康に必要な光を通すメガネで近視の進行を防ぐ

株式会社坪田ラボは、近視、ドライアイ、老眼の治療を目指す、慶応大学発ベンチャー。近視は世界中で増え続け、現在は人類の80%以上が近眼だ。都内の私立中学校での調査によると95.3%がすでに近視だという。近視は悪化すると、失明の危険性もあり、早めに視力低下を防ぐことが大切だ。

坪田ラボでは、近視の進行を抑制するには、太陽光に含まれるバイオレットライト(波長360~400nmの光)を浴びる必要があるが、通常の近視用メガネをかけると、バイオレットライトを遮断してしまう。そこで、坪田ラボでは、バイオレットライトを通すメガネJINSと共同開発(現在発売中)。さらに、バイオレットライトを放出するメガネを開発中だ。現在、治験を行なっており、2023年を目途に医療機器としての認可を目指している。

視力低下を抑制するバイオレットライトを通すレンズ「JINSバイオレットプラスレンズ」をJINSと共同開発

動作を学習するロボット義足を開発

現在の義足の99%は動力を持たない受動式義足で、膝の曲げ伸ばしができず、立ち上がる時も片足ずつしか上げられない、といった不自由さを抱えている。筋力のない高齢者の場合、義足は足腰の負担が大きく、車いすや寝たきりになってしまいがちだ。BionicM株式会社のCEO 孫小軍氏自身が義足ユーザーであり、生活に不便さを感じていたことからロボット義足を開発。

ロボット工学を応用し、義足内のセンサーで収集した動作のデータを学習させることで、使えば使うほどに自然な動きができるように調整されるという。現在は、膝と足首の機能を代替するプロトタイプを開発中だ。

膝や足首のセンサーで動きを検知し、動作をアシスト

量子コンピューターで新たな素材開発

QunaSys株式会社は、量子コンピューターで動作する量子物理計算アルゴリズムを開発しているスタートアップ。量子コンピューター技術は近年急速に発展しており、10月23日にはGoogleが54qubitを達成。3年以内には中規模のNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer)と呼ばれる量子コンピューターが開発され、量子科学計算などで実用化が始まる見込みだという。

スパコンなどの従来のコンピューターでは計算ができなかった自然科学のシミュレーションが可能になれば、新たな素材開発など産業の発展が期待できる。同社では、国内の化学メーカーと共同でNISQ向けのアルゴリズム開発に取り組んでいるところだ。



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