本記事はFIXERが提供する「cloud.config Tech Blog」に掲載された「Googleだけじゃない!Microsoftの量子コンピューティング Azure Quantum」を再編集したものです。
Azure Quantumは量子コンピューティング の世界で本命になれるのか?
量子コンピューティングが現実になる未来が見えてきたことで、世界にまた、いくつかの新しい対立軸が生まれていて面白い。
Google vs IBM
世界最高性能のスパコンで1万年かかる計算を、Googleの量子コンピューターが3分20秒で処理したという発表は記憶に新しいが、これに対してIBMは 「1つの問題だけを解くために作られた研究室内の実験に過ぎず、現実の用途に使用できない」「弁護の余地のない単なる間違い」と述べて反論している。
<参考記事>量子コンピューターでの偉業達成を誇るGoogle、それを認めないIBM
この手のIT巨人同士の殴り合いは、相手を変え、話題を変えて延々続いていくと思われるが、量子超越性を達成するために必要となる膨大なメモリー空間と、予測不可能な量子現象を安定して処理するプロセッサの量産にはもう少し時間がかかるらしい。
量子コンピューターの実用化を前に生まれている、もうひとつの対立軸が
Quantum Computing vs Blockchain Cryptography
である。
そもそも今の暗号化技術は「事実上不可能になるほど膨大な計算力がないと解読できない」という前提に成り立っているが、その膨大な計算を余裕でこなせる量子コンピューターが普及しはじめると「その前提は崩壊するよ」というものである。 これでついに、何度も危機にさらされてきたビットコインもオワコンか?と思いきや、世界最強の鉾(ほこ)が完成する前に、世界最強の盾(たて)を開発している人たちがいる。
NIST米国商務省標準化技術研究所の耐量子コンピューター暗号プロジェクトが、量子コンピューターに耐性のある「耐量子計算機暗号」の標準化に向けて準備を進めているが、我らがMicrosoft Research の暗号学者たちも、公開鍵暗号アルゴリズムとプロトコルの開発をすすめてくれているらしい。
そして、世界のすべての人間をエンパワーするMicrosoftは鉾(ほこ)と盾(たて)の両方を、誰でも使えるように!(量子コンピューティングも民主化?)と、プロジェクトを進めている。
量子コンピューティングを目指すデベロッパーなら誰でも使える開発環境として、Quantum Development Kitを提供している。 このQDKを使って、Azure QuantumというAzure上の量子コンピューティング環境に誰でもアクセスできる。そして開発言語はQ#。キューシャープって、名前だけとてもプリティではあるが、量子コンピューティングの基礎を学習しないと、これまでのプログラミングでは歯が立たたないのでご用心。
とは言え、誰でも「量子の型」(英語でもquantum kataというらしい)を学べるようにチュートリアルも提供されている。
クラウドコンピューティングへのシフトには、すっかり乗り遅れてしまった感のある日本の技術者が「量子コンピューティングの実用化はまだまだ先でしょ?」なんて言わないことを期待して、ここにほんの一部だけ、量子コンピューティングの未来を紹介してみた。