PCやスマホを使って、英語学習を時短にする便利なサービスやツールなどを紹介する連載。今回は、洋楽の歌詞で英語を勉強できる「Genius」を紹介します。
歌詞検索アプリのGenius。もともとはヒップホップを中心としたRap Geniusというメディアが出発点
長束氏のおすすめポイント
スラングや言葉遊びについて知ることができる
英語を通して好きな分野に触れることは習慣形成の点から見ても有効
誰にも優先度の高い英語の練習法は存在するが、苦手な物にだけ取り組んでいると続かないことが多い。そんな人にオススメなのが「好きな物→苦手だけど必要な物→好きな物」という順で学習を進める方法である。例えばまずは好きな歌手やラッパーの歌詞の意味を調べてみたりすることから始める、そうすることで取っ掛かりのハードルも低くなるし他のトレーニングにも手が伸びやすくなる。苦手でしんどいことで終わると疲れも感じやすいが、最後にまたこのアプリに戻ってくることで練習後の体感もよりいい形で終われる。洋楽を聞く人にとってこのアプリはとても便利なものになるだろう。
「Genius」は、総合音楽サイトである「genius.com」が提供するアプリ。Geniusはもともとラップ音楽の歌詞の注釈を集めたサイトだったが、歌詞だけでなく、ヒップホップのさまざまな情報を扱うようになり、ヒップホップ以外の情報も集められている。
曲の歌詞はメッセージ性が強い。ブルース、ヒップホップ、ジャズ、ロック、パンクなど、時代を反映したものから、普遍的なものまで、そのメッセージの内容は多岐にわたるが、歴史的、文化的などの背景を把握していないと理解しきれないものも多い。
そうした背景を含めた情報を注釈(annotation)という形で紹介するのがこのGenius。PC向けのサイトだけでなく、スマートフォンアプリとしてもリリースされている。スマートフォンアプリとしては「Genius: Song Lyrics & More」という名称で、iOSとAndroidに対応する。
アプリを起動すると、音楽情報が表示される。メディアということで、各種ニュースなどが閲覧できる。「Search」からは歌詞の検索が可能。また、スマートフォンのマイクを使って周囲に流れている音楽を聴き取ることで曲を検索することもできる。
曲が見つかれば、歌詞が表示される。曲の解説もあるので、その背景を知ることも可能だ。歌詞には、文章や単語などにリンクが張られており、タッチするとその歌詞の意味や背景の注釈が表示される。
例えば、Sex Pistolsの「Anarchy in the U.K.」にある「Your future dream is a shopping scheme」という歌詞。直訳の意味としては「お前の将来の夢はショッピングモール」といったぐらいで、よく分からない。注釈を見ると、70年代の若者の行動、経済的背景などが紹介され、その背景が見えてくる。
「Anarchy in the U.K.」の歌詞。色が変わっているのが注釈のある部分。検索した限りは、ヒップホップの曲の方が注釈が多い印象がある
注釈自体は外部のユーザーが記載しているもので、それを利用者が評価する仕組みとなっており、必ずしも正解とは限らないが、参考にはなる。Eminemの「Lose Yourself」を見ると、1番の歌詞についてEminem自身が『Jimmy Smith Jr.」(注:Eminemの自伝的映画「8 Mile」の主人公)のことを歌っている。自分のことではなく』といった注釈を載せており、本人や楽曲のプロデューサーが書き込む例もあって面白い。
Eminem自身が注釈を載せている例も
ヒップホップに限らず、大量の歌詞が登録されているので、単に歌詞を知りたいだけでも便利。歌詞は文法的な省略などもあるが、表現の工夫にもなるし、音楽と一緒に覚えられるので、記憶しやすい。背景を学習することで理解を深める手助けにもなる。スラングなどもあってそのまま使うと危ない表現もあるが、ある程度学習が進んでいると便利だし、学習だけでなく実用性も高いアプリだ。
大学在学中は、外国語学部で英語学・英文学・音声学などを学び、米ケンタッキー州でTESOL(英語教授法)について学ぶ。帰国後は、教育業界で英語指導に携わり実務経験を積んだ。各種SNSを駆使し英語学習に便利なWebサービス等について調べ、実際に使っては周りに紹介している。