16世紀のイングランド王であるヘンリー8世を題材とした戯曲「ヘンリー8世」は、ウィリアム・シェイクスピアとジョン・フレッチャーが共同で制作した作品です。2019年10月末に発表された最新の研究では、人工知能(AI)を用いて「シェイクスピアとフレッチャーのどちらがどれだけ多くの割合を担当したのか?」が分析されています。
[1911.05652] Relative contributions of Shakespeare and Fletcher in Henry VIII: An Analysis Based on Most Frequent Words and Most Frequent Rhythmic Patterns
戯曲「ヘンリー8世」はシェイクスピアとフレッチャーの共作として知られていますが、どちらの作家が制作におけるより多くの割合を担ったかは明らかになっていませんでした。チェコのチェコ科学アカデミーで働くペトル・プレハーチュ氏は、機械学習を用いてヘンリー8世のどの部分がシェイクスピアにより書かれた部分で、どの部分がフレッチャーにより書かれた部分なのかを分析しています。
分析では機械学習を用いたアルゴリズムに、シェイクスピアの「テンペスト」や、フレッチャーの「Valentinian」といった過去の戯曲をそれぞれ学習させることで、言葉選びやリズムから「シェイクスピアの作風」と「フレッチャーの作風」を判断できるように訓練したそうです。
長年の研究結果と同じように、プレハーチュ氏の開発したAIは戯曲「ヘンリー8世」の半分以上がシェイクスピアの書いたものと判断しました。しかし、AIの分析によると作品の後半からフレッチャーが戯曲「ヘンリー8世」の制作を引き継いだだけでなく、他のシーンでも時々フレッチャーの文章が散見されたそうです。また、シェイクスピアとフレッチャーの文章が混在するような部分も存在したため、詳細は不明ながら、シェイクスピアとフレッチャーが非常に密接に戯曲の作成に携わっていた可能性も示唆されています。
また、戯曲の「ヘンリー8世」についてはシェイクスピアとフレッチャー以外に、劇作家のフィリップ・マッシンジャーも制作に携わっていたのではと推測されていたのですが、プレハーチュ氏のAIによる分析では「マッシンジャーは制作には携わっていない」という分析結果が出ています。
ただし、シェイクスピアがフレッチャーを、あるいはフレッチャーがシェイクスピアを、あるいは互いに互いを模倣した可能性もあるため、今回の研究結果を本当に役に立つものにするには「まだ多くの作業が残っている」とのことです。
2019-11-26 02:59:02