LGエレクトロニクスは11日、「LG G8X ThinQ」の説明会を開催。12月以降にソフトバンクから発売される同モデルの特徴を解説するとともに、5G時代に向け、2画面スマホに注力していく方針を明かしました。
デュアルスクリーンケースを装着することで、2画面化できるスマホの原点は、2月にスペイン・バルセロナで開催されたMWCにさかのぼります。同イベントで、LGは5G対応の「LG V50 ThinQ 5G」を発表。米国や韓国などの5Gローンチに合わせ、導入された経緯があります。この2画面スマホのLTE版として開発されたのがG8X ThinQで、先にドイツ・ベルリンで開催されたIFAでお披露目されています。これを日本で導入したのが、ソフトバンクだったというわけです。
MWCで発表された「LG V50 ThinQ 5G」が、デュアルスクリーンケース対応モデルの原点
LGエレクトロニクス・ジャパンのモバイルコミュニケーション プロダクトチーム長、金希哲(キム・ヒチョル)氏が、「特に日本市場では、2画面スマホは全然新しいものではなかった」と言うとおり、日本では過去にも2画面スマホが発売され、話題を集めた経緯があります。2013年にはNECカシオ(当時)が「MEDIAS W」を発売していたほか、最近ではドコモとZTEが共同開発した「M」も存在します。また、先にauから発売になったサムスンの「Galaxy Fold」も、フォルダブルではありますが、2画面スマホの進化形と言えるかもしれません。
日本では、(主にドコモから)2画面スマホが度々発売されてきた。写真はドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」
一方で、「メディアの皆さんやギークな皆さんは飛びつくが、成功を収めたかというとクエスチョンマークがつく」(金氏)のも事実。金氏によると、「大きい、思い、2画面持つのが大変、ニッチすぎる、高い」などが、2画面スマホならではのウィークポイントだったといいます。対するG8X ThinQは、デュアルスクリーンケースが同梱されますが、ケースを付けずにスマホ単体でも持ち運ぶことができます。
LGの金氏は、デュアルスクリーンケースを取り外して"普通のスマホ"としても使えることもアピール
実際、V50 ThinQ 5Gが発売された韓国では、ケースを取り外して持ち歩き、必要なときだけデュアルスクリーンケースを装着する使い方が多いそうです。じっくり使いたい時だけ2画面化できるためか、利用時間も長くなる傾向があるといいます。韓国では、4時間以上利用するユーザーが実に37%と非常に多いことが分かります。
韓国では、必要な時だけケースをつけ、2画面化する使い方が主流になっているという
Galaxy Foldとは異なり、1つの画面を折りたためるわけではないため、2画面にまたがってアプリを表示するには制約もあります。ブラウザなど、一部アプリは「ワイドモード」に対応している一方で、非対応のアプリは片側の画面でしか表示できません。ワイドモードで起動しても、中央部分にヒンジやベゼルがあるため、画面が見づらくなるのが難点です。
一部アプリはワイドモードに対応するが、ヒンジやベゼルが中央にあるため、画面が少々見づらい
逆に、ブラウザを同時に開いて両方に書かれていることを見比べたり、「Pokémon GO」と「ドラゴンクエストウォーク」のような位置ゲーを同時に開いて、2つのゲームを一気に進めたりといったことは、G8X ThinQの得意とするところ。また、韓国Naverの開発した「Whale」というブラウザを使うと、2つの画面をタブのように利用でき、左に記事の一覧、右にその中身を開いて次々に切り替えていくといったことが可能になります。
2画面表示に対応した「Whale」というブラウザ。リンクをダブルタップすると隣の画面で開ける
片側をゲームのコントローラーにできるのも、G8X ThinQの特徴です。QRコード決済を利用する際に、同時にポイントアプリを開いておけるのも、この端末ならではと言えるかもしれません。画面を2分割すればほかのスマホでも実現できることではありますが、こうしたアプリはAndroid標準の分割機能に対応していないケースも多いため、決済の場面でも重宝しそうです。
片側をコントローラーにできるのも特徴
端末を取り扱うソフトバンクも、デュアルスクリーンを生かしたコンテンツを投入する予定。先の金氏によると、「バスケットLIVE」というBリーグの試合を放映する動画アプリが、マルチアングルに対応するとのこと。視点を切り替えて観戦したり、選手のスタッツ情報を表示したりといった画面の切り替えができるようになるといいます。
ソフトバンクも、2画面対応サービスを開始する予定
こうしたコンテンツは、5Gの高速・大容量によるメリットを、ユーザーに分かりやすく見せるために利用されています。実際、ソフトバンクも5Gのプレサービスで同様のサービスを実験していたほか、ドコモもプレサービス用にLGのデュアルスクリーン端末を導入して、ラグビーワールドカップの中継を行っていました。その意味で、G8X ThinQは5Gの"世界観"を先取りする端末です。ソフトバンクも、そのような意図で、この端末を導入したといいます。
ドコモは、5GプレサービスでLGのV50 ThinQ 5Gベースの端末を使用していた
とは言え、G8X ThinQは、あくまで商用モデル。売れなければ、ユーザーが世界観を体験することはできません。先に挙げたように、常時2画面でないため、重さなどの問題はある程度解決されていますが、Galaxy Foldのような価格になってしまうと、万人受けは難しくなります。G8X ThinQがいくらになるのかがカギと言えますが、ソフトバンクによると、10万円を切る予定とのこと。「半額サポート」改め「トクするサポート」を使えば、端末の返却は必要になりますが、5万円切りが実現する格好です。
auが同様の目的でGalaxy Foldを導入したことをふまえると、ソフトバンクにとってのG8X ThinQは、まさに「ジェネリックFold」と言えるかもしれません。技術的にはディスプレイそのものを折り曲げられる方が驚きもありますが、運用面や価格面を考えると、デュアルスクリーンケースが付属している方が、多くのユーザーにとって現実的な選択肢になるからです。
金氏によると、LGはきたる5G時代に向け、デュアルスクリーンケース対応モデルを戦略的に投入していくとのこと。この発言からは、デュアルスクリーンケースがLGにとっての"飛び道具"ではないことがうかがえます。ディスプレイそのものを折り曲げられるGalaxy Foldのような端末の価格がこなれてくるのが先か、デュアルスクリーンモデルが受け入られるのが先かは未知数な部分がありますが、いずれにせよ、5Gの広がりに合わせ、スマホもその姿を変えていくことになりそうです。
2019-11-12 19:02:46