今年の9月14日、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの石油施設が複数のドローンによって襲撃を受けた事件はまだ記憶に新しい。
だが、そのおよそ2週間後となる9月末に、襲撃されたアブカイクの施設が正常な生産体制を取り戻したことはあまり報じられていない。そして、その体制復元の陰に、人工知能(AI)やロボットなど最新テクノロジーの活躍があるとの話題が各国メディアによって報じられている。
サウジアラムコは石油生産で世界に名を馳せる企業だが、同時に、テクノロジーなどのR&Dも盛んに行うテック企業という一面もある。例えば、プラント点検用ロボットやドローン、スマートヘルメット、AI&ビッグデータソリューションなどを自社で設計・開発しており、ダーランの本社に併設された「4th Industrial Revolution Center(4IRC)」では、その技術の粋を確認することができるという。
同社が開発するロボットは、パイプラインや貯蔵タンクの内部の温度、摩耗状態、物質などを点検する用途で使われる。従来、生産設備の点検は人間が目視で行ってきが、自社開発したロボットを導入することで精度が格段に高くなったというのがサウジアラムコの説明だ。
また同社では、プラントの煙突から生成される汚染物質の成分や温度を把握するためにドローンを利用しているという。監視・点検データを解析し、検査時間を短縮するソリューションも保有する。
各工場の稼働および汚染物質の排出状況については、AIとビッグデータ技術をベースにした点検システムが監視。パイプラインを通じて移動中の原油およびガスの量や速度も、リアルタイムで把握されている。なお、ロボットとドローンは原油やガス漏れなどにより火災事故が発生した際、その状況を把握・解決するためにも動員される。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は過去に、化石燃料に依存する”石器時代”はすぐに終わるとし、同社の株式5%を売却しAIや電気自動車、太陽光産業など新産業に分散投資していく意向を明かしたことがある。
目下、国内で新規株式公開(IPO)を開始し、世界最高規模案件になると予想されているサウジアラムコ。石油に頼らない体質づくりをめざす改革のなか、テクノロジー企業としての側面はどこまで強化されるのか。今後の去就に注目したい。