Googleから新しいAndroidスマホ「Pixel 4」が登場しました。AI活用の高性能カメラで人気になった「Pixel 3」の後継として注目度が高い一品ですが、目玉機能の「Motion Sense」は日本国内では未対応(来春対応予定)とされており、真の実力をチェックするには時期尚早という感があります。今回は対象をカメラ機能に絞り、従来からどのように進化したかを、先代の「Pixel 3」のほか、先日発売されたiPhoneの最新機種「iPhone 11 Pro」と比較してみます(テストには大画面版のiPhone 11 Pro Maxを使用)。
また、スマホは3~4年に一度しか買い替えない人にとっては、古い世代のスマホとの差も気になるはず。そこで今回は上記3製品に加え、2016年発売の「iPhone SE」も併せて比較します。
まずはPixel 4の特徴をおさらい
まずは簡単に、製品の特徴をおさらいしておきましょう。ボディサイズは従来のPixel 3から一回り大きくなったほか、重量はこのサイズのスマホとしては「やや軽量」な162gに落ち着きました。iPhone 11 Pro(188g)より軽いとはいえ、従来は150gを切る軽さ(146g)が魅力だっただけに、軽さ重視でPixel 3を愛用している筆者としては少々残念です。
従来のPixel 3は背面に指紋認証センサーが搭載されていましたが、本製品では顔認証へと変更されています。ロック解除後にスワイプする必要がないので、iPhone 11の顔認証より圧倒的にスピーディなのですが、これから冬にかけてマスクをする機会が増える中、指紋認証が使えず顔認証頼りなのは若干不安はあります。
従来はシングルレンズで2倍ズームを実現していたカメラは、デュアルレンズへとパワーアップしています。ただしiPhone 11シリーズのような超広角レンズを搭載しないのは、比較する上で大きなハンデです。また従来もズーム自体は使えたので、どのくらいの差があるのかも気になります。以下ではそれらもチェックしていきます。
では早速、カメラの性能の違いを見ていきましょう。ざっと試した限りでは、従来のPixel 3およびiPhone 11 Proと違いが出やすいのは「夜景」「色合い」そして「デジタルズーム」というのが筆者の結論です。以下ではその3つの特徴について、作例を交えつつ紹介します。
これら4製品を並べた比較写真は、すべて以下のような配置になっていますので、Pixel 4が気になる人は下段右を基準に、iPhone 11 Proが気になる人は上段右を基準に、ほかの機種との違いをチェックしてみてください。なお撮影は「夜景モード(ナイトモード)」への切り替えを除き、基本的にカメラ任せで行っています。
その1)「夜景モード」は星空もバッチリ?
まずは進化した「夜景モード」について見ていきましょう。なおiPhone 11 Proは新しくリリースされたiOS 13.2の「Deep Fusion」で暗所での画質が改善されていますが、以下の撮影にはリリースが間に合わず、従来のナイトモードで比較していることを予めお断りしておきます。
さて、Pixel 3の名を一躍有名にした夜景モードですが、全体を明るく見せようとするせいか、色は全体的に淡くなる傾向にありました。しかし本製品ではかなりメリハリがつくようになり、どの部分にもしっかりと色が乗っています。
iPhone 11 Proのナイトモードと比べた場合、彩度が低く全体が茶色っぽくなるiPhone 11 Proに対し、Pixel 4は彩度が高く、茶色い木の葉や枝も青々と生い茂っているように描写されます。これをわざとらしいと捉えるか、それとも自然な加工の範囲と考えるかは、人によって意見が分かれそうですが、筆者的にはありだと思います。
また、夜空を写した場合も、空にノイズが乗ることもなく、鮮やかな色合いで写ります。それでいて手前の木々もきちんと描写されるなど、さすがの完成度です。今回は試していませんが、天の川の撮影が可能という謳い文句は伊達ではなさそうです。
なお写真だけ見ていると分かりませんが、Pixel 4にも弱点はあります。それはシャッターを切ってから撮影完了までの待ち時間が、従来より長いことです。具体的には、Pixel 3では撮影完了に6~7秒かかるところ、本製品は10秒ほどかかります。シャッターを切ったまま耐えなくてはいけない時間が長いのは、Pixel 3やiPhone 11 Proに慣れていると若干ストレスです。
ただしその反面、暗所でピントが合わず何度もフォーカスを試行しがちなPixel 3に対し、Pixel 4は高速かつ的確にピントが合います。またきちんと写っているか撮影後の確認が欠かせないPixel 3に対し、Pixel 4は「Live HDR+」によってリアルタイムで確認できる利点もあります。トータルでは五分五分といったところでしょうか。
特徴2)やや青みの強かった「色合い」もバランスよく改善!
次は「色合い」について見ていきましょう。Pixel 3は画面が全体的に青みがかっているのが特徴で、画作りがシャープに見える反面、やや冷たく感じることもありましたが、本製品では色合いはかなり自然になり、コントラストも大きく改善されています。
また従来のPixel 3は、手前の被写体を明るくしつつ、背景を暗いままにすることで奥行きを強調する癖があり、明るさを手動で調整する必要がありましたが、本製品では背景もオートで明るく描写されるよう改善されています。結果的に、もともと自然な色合いのiPhone 11 Proの画作りにかなり似た仕上がりになっています。
特徴3)常識を覆す? 劣化が少ない「デジタルズーム」がすごい!
最後に紹介するのが「デジタルズーム」です。デジタルズームといえば、光学ズームと違って解像度が低下することから、使用を避けている人も多いでしょう。筆者もその一人なわけですが、今回のPixel 4ではデジタルズームでも劣化が少なく、実用的なレベルへと進化していて驚かされます。
以下の写真はいずれも、1枚目で丸印をつけたエリアを、各スマホのデジタルズームの最大倍率(iPhone 11 Proは10倍、Pixel 3/4は8倍、iPhone SEは6倍相当)で撮影したものを切り出していますが、Pixel 4のディティールはほかよりも明らかに上です。iPhone 11 Proも善戦しており、Pixel 3が相手だと優勢ですが、Pixel 4にはわずかに及ばない印象です。
従来はレンズ1枚で「超解像ズーム」を実現していたところ、望遠レンズが加わったことで、このようなクオリティでのデジタルズームが可能になったのでしょう。これならばデジタルズームに抵抗がある人でも、ひとつ試してみるか、という気になるはずです。
また面白いのが、デジタルズームでも逆光補正が行われることです。iPhone 11 Proはディティールはしっかりしているものの逆光補正が行われないため暗いまま、一方のPixel 3は逆光補正は行われるものの若干シャープさに欠けます。しかし本製品は、ディティールも十分でかつ明るく補正されており、ベストと言える出来栄えです。
「超広角レンズが必要かどうか」で機種選びが変わる
以上のように、Pixel 3とiPhone 11 Proは、被写体の種類によって得手不得手があるのに対し、本製品はどんな場面にも対応できるオールラウンダーという印象です。価格が税込89,980円と、同じ64GBモデルのiPhone 11 Pro(税込117,480円)より安いのも魅力です。
もっとも、では今すぐ手持ちのスマホからPixel 4に乗り換えるべきかというと、そこまで急務ではない、というのが筆者の考えです。というのも本製品は冒頭にも書いたように、目玉機能である「Motion Sense」が日本国内では未対応、またテキスト起こし機能も日本語では使えず、前者の対応は少なくとも来春までは待つ必要があるからです。
もちろん、今回比較したiPhone SEなどの世代の古いスマホからの買い替えなら文句なくオススメなのですが、トータルの実力を見るのなら、せめてMotion Senseの対応を待ってからでも遅くないように思います。特にPixel 3は、本製品に近い夜景モードがアップデートで提供される見込みですので、Pixel 3のユーザはそれを試してからでも遅くはありません。
また今回の作例では扱っていませんが、iPhone 11シリーズには「超広角レンズ」という大きな武器があります。カメラでの撮影をトータルで楽しみたい場合、超広角レンズを搭載したiPhone 11シリーズの優位性は、現時点では揺るがないでしょう。こればかりはソフトウェアで(少なくとも今のところは)どうにかなるものではありません。
そんなわけで、世代が古いスマホからの買い替えであれば十分にお勧めできますが、比較的新しめの機種を使っている場合は、どこにポイントを置くかで判断が変わってきます。超広角レンズが必須であればiPhone 11シリーズ、そうでなければトータルの性能でこのPixel 4、現時点でこれらを選ぶのであれば、そのような判断基準になると言えそうです。