筆者は2021年、折りたたみ式スマートフォンについて、日常的な使い方という点で真の革新性と言えるものがほとんどなく、期待外れだとする記事を書いた。よくできているのだが、画面が折りたためるという斬新さ以外には他の「Android」搭載端末と全く同じで、それが問題だった。サイズや画面アスペクト比が珍しいためにアプリケーションやゲームがそのままではうまく動作しない。また、ユーザーが少ないため、開発者が他と異なる形やサイズに合わせてアプリケーションを開発する時間、手間、コストを費やす動機に欠ける。
しかし、5月に開催される「Google I/O」で登場する可能性があるうわさの折りたたみ式「Pixel」で、Googleは間もなくこの状況を変えるかもしれない。同社は、手頃な価格の魅力的なスマートフォンのハードウェアを作ると同時にソフトウェアの問題に対処できるという独自の地位にある。
はっきり言って、筆者は折りたたみ式端末が好きだ。「Samsung Galaxy Z Fold 4」や「HONOR Magic Vs」のような、一般的なスマートフォンからほぼタブレットサイズのデバイスに変わり、動画やゲーム、文書を大きなスペースに表示できる大型の「横折り」モデルを特に好んでいる。初代「Galaxy Fold」を入手した時、真ん中で画面が折りたためるのを見て本当に興奮したことを覚えている。人前で使っていると、いろいろな人が立ち止まって見せてほしいと頼んできた。あるバーテンダーは、目を奪われてビールを1杯おごってくれた。ありがとう。
それでも、ソフトウェアの面で折りたたみ式スマートフォンは後れを取っている。Androidは主に通常の縦長タイプのスマホに合わせて開発されており、それらはたいてい6~6.8インチで、標準的なアスペクト比は16:9ほどだ。つまり「Galaxy S23 Ultra」や「Pixel 7 Pro」はAndroidを存分に活用しており、アプリ開発者はこういったフォームファクターに合わせてアプリを設計する。なぜなら、それが最も一般的なサイズであり、したがって最も多くのデバイスに最適化されたアプリになるからだ。
「Android 12L」「Android 13」ではサイズの問題に対応したが、全てのアプリが最適化されたわけではなく、画面に何も映っていないスペースを多く残すか、そうでなければ画面に合わせておかしな具合に画像を引き伸ばすしかない。例えば、Galaxy Z Fold 4では、外側のディプレイは細長い23.1:9のアスペクト比だが、内側のディスプレイはより正方形に近い21.6:18というアスペクト比だ。開発者は2つの非標準サイズを考慮に入れる必要がある。それも、たった1つのデバイスのために。
これは当初からAndroidが抱えている同じ断片化の問題だ。異なるデバイスが多いということは、開発者の制作を困難にする。ディスプレイサイズの種類を少なくして、アスペクト比もほぼ同じにそろえるというAppleの戦略のおかげで、同社のスマートフォンは概して開発者が取り組みやすいプラットフォームだった。しかし、Googleは長年にわたってAndroidを使いやすいものにしようと懸命に取り組んできており、折りたたみ式スマートフォンでも同じことができるはずだ。
したがって、折りたたみ式のPixelも開発者が苦労するデバイスになるかどうかと言えば、おそらくそうはならないだろう。Googleが製品ラインアップに折りたたみ式ディスプレイ技術を組み込もうとしているなら、折りたたみ式スマートフォンやさまざまなフォームファクターに合わせたAndroidのメジャーアップデートが行われると考えていいだろう。アプリのサイズを自動的に変更したり、Galaxy Z Fold4などの大型ディスプレイを使用する場合はデュアルスクリーンにしたり、あるいは内側と外側のディスプレイを活用するための仕掛けをさらにデフォルトアプリに組み込んだりするなど、ソフトウェアの機能向上を期待したい。
Googleはさらに、サムスンなど主要な開発パートナーとの連携を強化して、既存のアプリを折りたたみ式デバイス向けに最適化するだけでなく、この種のスマートフォンでのみ利用できるまったく新しいアプリを開発できるよう支援することになるだろう。こうしたパートナーシップは、Googleが第1世代となる魅力的な折りたたみ式デバイスを開発する上で極めて重要となる。とりわけ、分析企業StatCounterによると、折りたたみ式でない現行のPixelは米国でのスマートフォン市場シェアが2%にすぎないからだ。これに対し、サムスンは米国で30%近いシェアを握っている。
Pixelは、卓越したAndroid体験を「iPhone」やGalaxy Sシリーズのフラッグシップモデルより数百ドル安い優れたハードウェアで提供する傾向が強い。折りたたみ式のPixelを手頃な価格で発売するには、Googleのパートナーシップが鍵となる。価格を低く抑えることはより多くのユーザーを獲得するために不可欠であり、ひいてはそれが折りたたみ式デバイスを中心としたアプリを作ろうとする開発者の意欲を引き出すことになる。
言うまでもなく、こうした見方は仮定や推測に基づくものであり、Googleが折りたたみ式スマートフォンを発売するかどうか、確実なことは分からない。同社がソフトウェア開発企業と協力して普及を促進する戦略を取っているかどうかも不明だ。Googleが折りたたみ式というこのカテゴリーを主流に押し上げるには、その知名度で勝負する以上のものが必要にもなるだろう。Microsoftの「Surface Duo 2」やサムスンのGalaxy Z Foldが広く普及していないことを忘れてはならない。
しかし、筆者は依然として期待を抱いている。そうする必要があるのだ。標準的なスマートフォンはますます退屈で似たようなものになってきている。スマートフォンについて書くことを仕事にしている人間にとって、これは問題だ。折りたたみ式デバイスは、目新しいわくわくするような方法で物事をこなす機会を生み出すが、このカテゴリーが成功するか否かはGoogleにかかっている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
2023-04-02 21:39:28