電子機器を充電器から外し、電源をオフにして一切使っていなくてもバッテリーは消耗します。「自然放電」と呼ばれるこの現象の原因をダルハウジー大学の研究者らが突き止め、この問題に対処しようとしています。
ダルハウジー大学のマイケル・メッツガー氏らの研究チームは、リチウムイオン電池のセルが自然放電する原因を調査しており、研究の一環としてリチウムイオン電池のセルをさまざまな温度下にさらした後、分解を行いました。
一般的な電解質の溶液を含むリチウムイオン電池のセルを異なる温度まで加熱した結果、25℃のセルの電解質溶液は透明のままでしたが、55℃の電解液は薄茶色、70℃の際には血のように赤い色をしていたとのこと。
その後、電解質溶液の化学分析を行い、化学組成を調査したところ、バッテリーセルの電極を固定するためのテープを構成するポリエチレンテレフタラートが化学分解し、自然放電につながる分子を生成していることを発見しました。
「レドックスシャトル」と呼ばれるこの分子が、電極のプラス側とマイナス側を往復することで、実際にバッテリーを駆動させていないにもかかわらず、まるでバッテリー駆動時のようにバックグラウンドでの自然放電が行われます。
メッツガー氏は「自然放電の原因としてのバッテリー内のテープやプラスチックフィルムなどはこれまで研究がなく、この原因は予想していませんでした。バッテリーの自然放電を抑えたい場合には、さまざまな工夫や考慮が必要です」「これは商業的に大きな発見です。この発見はバッテリーセルの改善に間違いなく役に立つでしょう」と述べました。
今回の研究は、従来のポリエチレンテレフタレート製のテープに代わる、劣化が少ない安定した材質のテープの採用につながる可能性があり、すでに発表をもとに複数の企業がバッテリーの性能の改善を模索しているとのことです。