1月28日は、欧米の公的機関などが定めた「データプライバシーデー」だった。Apple(アップル)は世界約500カ所の全直営店でiPhoneのプライバシー保護に関するワークショップ「Today at Apple」を開催している。
アップルはこれまでも、スマートフォン内にある情報に関して積極的に発信してきた。テレビなどでも公開された、ユーザーの個人情報がオークションにかけられるという衝撃的な動画も記憶に新しい。ここでアップルはスマホユーザーを取り巻く環境を警告するだけでなく、「あなたのデータをiPhoneは守ります」という同社の姿勢を強くアピールしている。
ティム・クックCEOは、2022年4月に開催されたIAPP(国際プライバシー専門家協会)のキーノートで「個人情報が平然と盗まれるような世界では、プライバシーは存在しない。脅威からユーザーを守ることほど、私たちが真剣に取り組んでいることはない。私たちは収集するデータの量を最小限に抑え、人々のデバイスで直接処理されるデータの量を最大化するように取り組んでいる」と述べている。
iPhoneの場合、アプリのインストールは必ずアップルが用意するApp Storeから入手する流れになっているのも、ユーザーのプライバシー保護を重視する考えによるものだ。他のOSでも正規のダウンロードサイト、アプリが用意されているが、それ以外の方法でアプリを端末にインストールできるサイドローディングが可能になっているため、便利なときもあるがリスクも大きく、実際に個人情報流出が起こっている。
アップルは先に行った発表で「プライバシーは基本的人権であり、アップルの中心にある大切な理念の1つ」と強くうたっている。
iPhone内に用意されたさまざまなプライバシー保護機能
データプライバシーデー当日、東京駅の前にあるApple丸の内でも、プライバシー保護に関するワークショップが開催された。
セッション「スキルiPhoneでプライバシーを保護しよう」は予約優先で無料。開催時間は30分だ。参加者は20名前後。男女比率は半々で、カップルや夫婦で参加している人も多かった。
まず紹介されたのは、パスワードやパスキーなどを使ったiPhoneのプライバシーを守る機能だ。Safariには画面遷移の際に個人情報を保護する機能やWalletで管理するApple Pay機能でクレジットカードの購入情報をデータとしてサイトに渡さない設定、写真アプリでは顔情報が認識されているがデバイス上でのみ管理されていることなどが紹介された。
メールは今やオンオフ問わず生活で欠かせないものとして活用されているが、広く知られているように情報流出のリスクも大きい。そのため、iPhoneには本人特定につながる情報を渡さないメールのプライバシー保護設定が可能だ。
位置情報や情報のトラッキングにしても同様で、情報をアプリに許可・共有するかは自分で選択できる。新しいアプリを使い始めるとき「トラッキングを許可するか」を聞かれることがあるが、これは他のアプリをまたがって、デバイス上で取得した情報を利用して良いかを尋ねるもので、いわゆる「リタゲ(リターゲティング)」と呼ばれるインターネット広告でも活用されている。
「すべてをオフに」にすると、もちろんプライバシーは保護される。しかしオンにして、ある程度の情報を共有することで、ユーザーは自分が望む情報や広告を的確に奨めてもらえるという利便性も得られる。大事なのは、そのバランスであり、ユーザーが何を望むかという点だ。
さらに「個人情報安全性チェック」という機能も紹介された。スマートフォンは今や生活の一部。家族や恋人と位置情報や写真などの共有は当たり前になっている人も多いだろう。しかし、相手との関係や信頼が突然変わることもある。そうした特定の人とのシェアを解消したいと思ったときに、すぐ使えるのがこの機能だ。
アップルはこの個人情報安全性チェックに「緊急リセット」も用意している。例えばデバイスを使用している本人にDVやストーカーなど「身の危険」が降りかかったときに、一刻も早く居場所の共有を止めたいときになど、パニックに陥ってしまい設定を一つひとつ変更する余裕はない。本機能であれば、どんな状況でもすぐに共有設定をリセットすることができる。
どこまで何を保護するか、決めるのはユーザー
ユーザーごとに置かれたシチュエーションは異なり、iPhoneの使い方も異なる。そのためさまざまなアプリや機能が用意され、ユーザーは自分なりにカスタマイズして使っている。プライバシーの保護も同様だ。
パスワードやパスキー、メール、位置情報そしてトラッキングの設定、個人情報安全性チェックなど、しっかりプライバシーを保護できる機能を用意されているが、それは「選択肢」だ。すべての人に共通する保護機能(もちろん用意されている)だけでなく、プライバシー保護もカスタマイズが必要であり、「万人向けの正解」はない。
位置情報やトラッキングの設定などオフにすることでアプリをより便利に使えるケースもある。プライバシー保護と利便性のバランスを考えるのは「ユーザー自身」であり、アップルもそれを推奨し、希望するプライバシーの保護を実現できる仕組みを用意しているのだ。
セッション終了後、参加者は「iPhoneを使っているが、位置共有など自分の情報の伝わり方・管理に不安があった。自分のデータの共有について理解できたし、もっと詳しく話を聞いてみたいと感じた。今はホームボタンがあるiPhoneを使っているが、Face IDのタイプに機種変更するのも良さそうと新しい端末にも興味が沸いた」という。
アップルの消費者を守るプライバシーへの取り組みはこちらで確認することができる。