Intelは9月27日~9月28日(現地時間、日本時間9月28日~9月29日)の2日間にわたり、米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるサンノゼ・コンベンション・センターで同社年次イベント「Intel Innovation」を開催した。
その中でIntelは、正式発表が遅れている開発コードネーム「Sapphire Rapids」こと第4世代Xeon Scalable Processor(第4世代Xeon SP)に関して何もアナウンスをしなかったが、気になる情報を公開している。その1つが第4世代Xeon SP向けの液浸冷却のリファレンスデザインを開発して、それを顧客に対して提供することを検討していることだ。
そうしたサーバー機器を液浸冷却してサステナブルなデータセンター構築を目指している、日本のKDDIとの協力も拡大していく計画だとIntelは説明したほか、KDDI株式会社DX推進本部プラットフォーム技術部 北山真太郎氏が、KDDIの液浸冷却を活用したコンテナ型データセンター開発の取り組みを説明した。
サステナブルなIT環境の実現を目指して、データセンターでも液浸冷却や水冷などが注目を集める
Intelは、開発コードネーム「Sapphire Rapid」で知られる第4世代Xeon SPの開発を続けており、5月のVisionでは特定の顧客に対して出荷を開始したことは明らかにされていたが、未だに、より広範囲の一般顧客への出荷や正式発表は行なわれていない。今回のIntel Innovationでもそれは同様で、Sapphire Rapidsに関しては何もアナウンスはなかった。しかし、展示会場では多くのOEMメーカーがSapphire Rapidsを搭載したシステムを展示したりしており、そんなに遠くない時期に正式発表がありそうな雰囲気は醸し出していた。
そうした状況にあるSapphire Rapidsだが、今回のInnovationでは非常に興味深い発表が行なわれた。それはIntelがSapphire Rapids向けに、液浸冷却のリファレンスデザインの提供予定であるという発表だ。
ウクライナ紛争が起きたことにより、特に欧州では深刻なエネルギー不足が発生しており、電気料金などのエネルギーコストは増大している。そうしたこともあり、サステナビリティ(持続成長可能性、環境などに配慮して事業を継続すること)の観点からも、データセンターの全体の電力を削減する取り組みが注目されている。しかし、データセンターに求められる処理能力の要求は増え続けるばかり、処理能力を落として電力を削減するというのは難しいのが現状だ。そこで、大量の電力を消費する要因となっている、冷却用のファンをなくすことに注目が集まっている。
一般的なサーバーの冷却方法である空冷ではかなりの数のファンを回すため、電力がどうしても増えてしまうからだ。このため、ヒートパイプに液体を入れて循環させることで冷却する水冷、システムを特殊な油の中に浸すことでシステム全体を冷やす液浸などの手法がデータセンターでも導入され始めている。
Sapphire Rapids向けに液浸冷却の標準デザインを提供、KDDIとも協力拡大
今回Intelは「Architecting the Sustainable Data Center with Intel's Open IP Immersion Cooling Modular Reference Solutions」という名前の技術セッションを行ない、この中でSapphire Rapids向けに液浸冷却のリファレンスデザインを作成し、顧客に提供する計画を明らかにした。
台湾Intelで計画されているこのリファレンスデザインは、Intelがタンク、CDU(Coolant Distribution Unit、冷却液配分装置)、モジュラー化されたマザーボードなどのサーバー装置、タンクに入れるシャシーなどがセットになって提供され、比較的短期間で液浸冷却のシステムを開発できるようにするという。現在でも開発が行なわれており、Sapphire Rapidsが第4世代Xeon SPとして正式に提供されるようになった後で顧客に提供される計画だと説明された。