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ハレー彗星が100億ドルのウェッブ宇宙望遠鏡を破損させる可能性

今後2年の間に、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、ハレー彗星が太陽系に残した宇宙の塵とデブリの中を通過する。

科学者たちは、2022年5月に100億ドル(約1兆3000万円)の宇宙望遠鏡が流星塵によって損傷を受けた事故を繰り返さないよう緩和策を検討している。

ご心配なく、ハレー彗星そのものがウェッブ望遠鏡に衝突することはない。

ハレー彗星の大きさは約15キロメートル×8キロメートルで、約75年周期で太陽を周回しているが、太陽系に戻って地球の比較的近くを通過する(そして最も明るい星、シリウスのように輝く)ことは2061年までない。

ウェッブ宇宙望遠鏡は2040年代の初頭まで人類の貴重な宇宙観測所として存続することが期待されているが、おそらくその頃には役目を終えているだろう。

彗星は塵、岩石、氷などでできており、太陽に近づくと溶けて物質を撒き散らす。太陽系に入るときとそこから出ていくとき、彗星は太陽の周囲を回る前後にも、砂粒大の塵からなる軌跡を残す。

ウェッブの技術者らは、1カ月に1回程度の流星衝突を予測しているが、望遠鏡が流星群の中を通過する際には、その数がはるかに多くなる可能性がある。

ネイチャーによると、アラバマ州ハンツビルのマーシャル宇宙飛行センターにある、NASA(航空宇宙局)の流星環境室では、現在ウェッブの技術者のために、流星群予測の計算をしている。

これはウェッブ宇宙望遠鏡が、飛んでくる粒子群から逃れるように操作され、ミラーに粒子が衝突するのを防ごうとしているとも考えられる。つまり、軌道運動の方向を見る時間を最小限にすることを意味している。

このシナリオは、2023年5月と2024年5月の2度、ウェッブ宇宙望遠鏡がハレー彗星の流星群の中を通過するとき問題になる可能性がある。

ハレー彗星の流星群は、地球で観測された2つの著名な流星群、5月のみずがめ座η(イータ)流星群と10月のオリオン座流星群の主要因になっている。どちらも1時間当たり約20個の「流れ星」を生みだし、微小な宇宙塵が地球の大気圏に衝突し、エネルギーを光として放つ。

ウェッブの巨大な6.5メートルの主鏡は18個の金メッキされたベリリウム製の六角形セグメントから成り、深宇宙に対して完全に露出している。セグメントの1つ、C3は2022年5月23日から25日の間に流星塵の衝突を受けた。衝突は修復不可能な永久的損傷を起こしたが、観測の画像品質に影響がないことが期待されている。

望遠鏡の主鏡もより小さいが測定可能な流星塵4個の衝突を受けたが、すべて予想の範囲内だった。

流星塵の衝突は、宇宙で作業する上で避けられない事象だが、現在ウェッブの技術者らは、主鏡がどの程度の頻度で衝突を受けるか、それに対して何ができるのかを再評価している。

ウェッブ宇宙望遠鏡は地球から約160万キロメートルのL2点を周回している。

ハレー彗星が太陽系で最後に観測されたのは1986年で、翌年には同彗星が太陽に向かって戻る前に地球から最も遠い地点で観測された。現在の距離は約35AU(太陽と地球間の距離の35倍)で、これはほぼ地球から準惑星の冥王星までの距離だ。現在はうみへび座の中、こいぬ座の輝星、プロキオンに近くにいる。

肉眼で見える彗星で人の一生に2回現れるのはこれだけだ。ハレー彗星は紀元前240年以来75年ごとに観測されているが、同じ輝ける物体が繰り返し夜空に帰ってくることがわかったのは、1705年に英国の天文学者エドモンド・ハレーが発見した時だった。ハレーは1758年の登場を待たずに亡くなったが、彼はその時期を正確に予測していた。



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