自動運転を支えるLiDARメーカーの株価が軒並み下落する中、新たなスタートアップ「Red Leader」は、従来の企業とは異なるアプローチでこの分野に参入した。同社の特徴は、ハードウェアではなく、ソフトウェアに特化している点だ。
他社の技術をデジタル一眼レフカメラに例えると、Red LeaderのテクノロジーはiPhoneのカメラだと言える。同社は、ソフトウェアを駆使することで、より高度で高価なハードウェアに対抗することを目指している。カリフォルニア州マウンテンビューに本拠を置くRed Leaderは5月26日、シリーズAラウンドで1000万ドル(約13億円)を調達したことを明らかにした。
このラウンドには、NextViewとマイクロン・テクノロジーズのVC部門「マイクロン・ベンチャーズ」が参加した。2018年設立のRed Leaderの評価額は、5500万ドル(約55億円)に達した。
Red Leaderは、LiDAR向けのソフトウェアを開発している。過去2年間で、ベロダインやルミナー、Aeva、OusterなどのLiDARメーカーが、SPAC(特別目的買収会社)との合併を通じてIPOを果たしているが、業績が期待を下回り、株価は軒並み下落している。
「各社は、この技術をよりよくパッケージ化するにはどうしたら良いか悩んでいる」とRed Leaderの共同創業者でCEOのジェイク・ヒラード(Jake Hillard)は話す。
Red Leaderのソフトウェアは、安価で検出距離が短いLiDARセンサーの画像を微調整することに特化しており、一般的な自動運転車向けではない。同社は、ロボットフォークリフトや物流ロボット向けに、このソフトウェアを開発した。
ヒラードによると、同社のソフトウェアの秘密は、LiDARの画質に影響を与える信号処理のために開発したアルゴリズムにあるという。現在26歳のヒラードと25歳のレベッカ・ウォン(Rebecca Wong)は、スタンフォード大学工学部に在籍していた2018年1月にRed Leaderを立ち上げた。ヒラードは、大学の研究グループを率いてレーザー衛星を打ち上げた後、スペースXで初期のスターリンク衛星の打ち上げに携わった。
ウォンは、高高度ロケットの専門家だ。ヒラードは、スタンフォード大学を中退した後に大学中退を条件とするティール・フェローシップに選ばれている。
YouTubeのデモ動画で注目
彼らは4人のチームで2021年末にソフトウェアのデモ版を完成させた。LiDARにRed Leaderのソフトウェアを組み合わせることで、リアルタイムで周辺画像を10倍の解像度で見ることが可能になる。「その模様ユーチューブで公開したことが、今回の調達につながった」とヒラードは言う。
彼によると、Red Leaderは5件のPoC(技術検証)契約を締結しており、約25万ドルの収益を見込んでいるが、顧客名は公表できないという。同社は、来年の第1四半期までに5社と500万ドルから1500万ドルの契約を結んで技術の試験導入を開始し、3年以内に1件当たり5000万ドルのフルスケール生産契約を複数締結することを目指している。
5件の契約を獲得できれば、2025年には収益が2億5000万ドルに達することになる。ベロダインの2021年の収益が6200万ドルであったことを考えると、これは非常に高い目標だ。しかし、マイクロン・ベンチャーズのGayathri Radhakrishnanは、達成可能な金額だと考えている。
「目標達成が2年後か3年後、4年後、5年後かは議論が分かれるかもしれないが、収益は非連続的な成長を遂げるだろう」とNextViewのLee Howerは話す。
「メーカーを顧客に持つことの良い点は、優れたソリューションを提供し、それが完璧に機能したとき、一気に物事が前進することだ」とヒラードは語った。