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メタバースが称賛されるなか、スナップCEOの「AR」セッションが注目を浴びた理由

写真・動画共有アプリ「スナップチャット」を運営する、米スナップのエヴァン・シュピーゲル共同創業者兼CEOが17日、パリで開催されたVivaTechに登壇した。

今回のVivaTechでは、メタバース関連のセッションが複数開かれ、3次元仮想空間であるメタバースを称賛する論調が目立っていた。メタバースとは「現実世界を仮想世界に置き換えること」であるが、それに対しシュピーゲルは「現実世界を強化する」ARの魅力にも触れ、「私たちが共有し、楽しんでいる現実世界は実は素晴らしい」と訴えた。

スナップチャットは「ARを通して世界を体験する手段」

スナップチャット最大の特徴は、AR(拡張現実)のレンズ機能を搭載している点。

この機能が若者を中心に支持を集め、アプリの利用者は右肩上がりだ。同社の発表によると、月間利用者数は世界で6億人以上、アクティブユーザー数は3億3200万人以上に達している。

シュピーゲルは、「スナップチャットの核はカメラだ」と強調する。過去100年以上にわたり、カメラは思い出を保存するためのものだった。しかし、スナップチャットはカメラを“会話の手段”へと変化させた。シュピーゲルは「(今やスナップチャットは会話の手段からさらに進み)ARを通して世界を体験する手段になっている」と説明する。

さらに同社は、「スマホの小さな画面にとらわれずに周りの世界を見ることができないか」というアイデアを起点に、カメラ付きサングラスやカメラ付きドローンを発表している。

「私たちの現実世界は素晴らしい」

近年注目が集まるメタバースについて、シュピーゲルは「私はまだメタバースが何であるかを、理解しようとしているところだ」とコメント。まだ黎明期であるという認識をにじませた。

一方でARについては、スナップチャット内で多くのユーザーが利用していることを引き合いに、「世界を変える可能性があることを私たちは目の当たりにしている」と述べ、その実用性を強調した。また、ARが広まっている現状について「(ARは)想像上の未来にあるものではなく、今現在起こっていること」とも述べた。

メタバースよりARに注力する方が現実的?

シュピーゲルのセッションは、カンファレンス全体ではメタバースを称賛するセッションが多い中で、際立っていた。セッション終了後は、シュピーゲルとの記念撮影を求める観客らがステージに押し寄せ、若者から絶大な支持を得ているスナップチャットの勢いを感じた。

筆者は、メタバースの活用シーンは当面限定的になると感じている。もちろん、よりリアルな体験ができるような技術革新が起きれば、メタバースが一気に普及する可能性はある。しかしそれまでは、すぐにマネタイズが難しいメタバースよりも、現在普及しているARに注力する方が現実的だ。

メタバースではなくARに力を入れるスナップチャット。シュピーゲルの経営者としての嗅覚を感じるセッションであった。



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