Apple公式の修理サービスには、修理してほしい端末を店舗まで持って行って修理してもらう「持ち込み修理」と、Apple指定の配送業者に修理端末を引き取ってもらい修理する「配送修理」の2種類が存在します。家の近くに対象店舗がない人や地方の暮らしの人にとって、家まで端末を引き取りに来てもらえる「配送修理」は非常に便利でありがたいサービスなのですが、このサービスを利用した男性が端末が保証期間内であったにもかかわらず端末料金満額を支払わされてしまうという事態に遭遇しています。
2022年2月、ヴィク・サン氏(70歳)は購入して4カ月しか経っていないApple Watchのバッテリーが故障して使えなくなったことに気づきました。サン氏はApple Watch購入時にハードウェア製品の保証期間を2年間に延長できるAppleCare+に加入していたため、「配送修理」を使ってApple Watchを修理することに決めます。
Apple公式の配送修理の場合、端末を修理に出すと同時に交換機、いわゆる代機を受け取ることができます。サン氏は配送業者としてFedExを指定し、交換機が届いた後、FedEx経由で故障した自身のApple WatchをAppleの修理センターへ送りました。この時、「交換機を受け取ってから2週間以内に故障した端末をAppleへ返送しなければいけない」という条件があったため、サン氏は手早く故障端末の返送を行ったそうです。
その翌月、サン氏がクレジットカードの明細書を確認したところ、Appleから328ドル(約4万3000円)の請求があることに気づきます。サン氏はApple Watchを309ドル(約4万円)で購入していたため、購入時よりも高額な請求ということになります。
Appleは配送修理において、修理することになる端末が手元に届かなかった場合に備え、交換機の本体代金をクレジットカードの利用枠で押さえます。これにより、顧客が故障端末を送らなかった場合でも、交換機をそのまま売却したこととすることで、損失が発生することを防ぎます。しかし、サン氏の場合は「明らかにサン氏に過失がない状態でApple Watchが故障」しており、さらに「AppleCare+の保証期間中に故障機を修理に送っている」ため、Apple Watchの本体代金を請求されるのは明らかにおかしいといえます。
サン氏はAppleのカスタマーセンターに電話で確認したところ、担当者に4回も電話を転送され、2時間以上も待たされた挙句、「故障機がAppleに届いていないため、交換機の本体代金を請求した」と説明されたそうです。
そこで、サン氏はFedExを使って送ったApple Watchの追跡番号をAppleのカスタマーサポートに伝えます。しかし、Appleは配送業者としてFedExを指定しているものの、Apple側で追跡番号から製品を追跡することはできないと伝えてきたそうです。そのため、サン氏は自身でFedExに電話する羽目になったとのこと。
サン氏はFedExとの電話でも90分間にわたり待たされ続け、追跡番号があるにもかかわらず配送したはずのApple Watchを見つけることはできなかった模様。サン氏は「Appleから請求された代金の支払い」をFedExに求めたそうですが、同社は数日後に「調査が完了したものの、あなたの要求に応えることはできません」というメールを返信してくくるだけだったそうです。なお、FedExはサン氏の要求に応えられない理由を、「当社の記録によると、FedExが提供した輸送サービスに起因するクレームを申し立てないことに同意するという内容の追加条項が、お客様の契約に含まれています」と説明しています。
これに対して、サン氏は詳細な説明をFedEx側に求めたものの、カスタマーサポートからの連絡はなかったそうです。困ったサン氏は再びAppleのカスタマーサポートに電話したそうですが、Appleは「FedExとのやり取りはご自身で対処ください」という姿勢を崩すことがなく、助けてくれることはなかったとのこと。
FedExに2度目の電話をかけたサン氏は、追加条項について「こんなものに同意した覚えはない」と伝えますが、FedEx側は「これはAppleと結んだ契約であるため、問題があると感じるならばサン氏がApple側とやり取りしてほしい」と伝えられます。
こんな具合に何度もAppleとFedExのカスタマーサポートとの電話を強いられることとなったサン氏は、「AppleとFedExはお互いに責任をなすりつけあっていました。私は卓球台でラリーされるピンポン玉のようでした」と語っています。
電話のたらいまわしに飽き飽きしたサン氏は、地元紙のThe Boston Globeに連絡しことの顛末を説明。その後、The Boston Globeの記者がFedExに説明を求めたところ、FedExはサン氏に「今回の配送にはAppleのアカウントが使用されており、AppleはFedExと追加条項を含む契約を結んでいるため、今回のような申し立てはお客様ではなくAppleが行う必要があります。Appleに連絡して、この申し立てを提出してもらう予定です」と説明したそうです。
The Boston Globeの記者はAppleにも説明を求めており、Apple側からはCorporate Executive Relationsチームのマネージャーが「サン氏にFedExと直接やり取りしてくださいと回答したのは間違いだった」と謝罪され、請求された328ドルが取り消しになったそうです。
サン氏は元セールスマンであり、自身のミスにより顧客が不利益を被った際には、それを補ってきたため、自身がこのまま引くのは間違いであると感じたそう。そこで、Corporate Executive Relationsチームのマネージャーに対して12.9インチのiPad Proを要求したものの、この要求は通らず、最終的にはAirPodsがサン氏の元にお詫びとして送られてきたそうです。