Epic Gamesは、自社のオンラインイベント「State of Unreal」で、次世代3D制作プラットフォーム「Unreal Engine 5」のリリースを発表した。Unreal Engineは主にゲームエンジンとして知られているが、映像作品におけるCG制作などでも利用されている。
Unreal Engine 5は、パフォーマンス向上は当然ながら、UIなど開発者が扱う部分にも手が加えられている。そしてなにより、最も大きな進化ポイントは、実写映像と見紛うほどのリアルな表現のために開発されたいくつかの技術だ。
たとえば、Naniteというジオメトリシステムでは、膨大な数のポリゴンオブジェクトを使用しながらスムーズなスケーリングを実現し、フレームレートを維持しての描画が可能だ。
一方、Lumenと称する技術は、日光からキャラクターが手にしている懐中電灯の明かりまで、あらゆる光源に適応する動的なグローバルイルミネーション(反射による間接光も含めてレンダリングする技法)を提供する。
この2つの印象的な新機能を効果的に示したのが、Epicが2021年12月に無償公開した技術デモ『The Matrix Awakens』だった。
ほかにも、オープンワールドなゲームやコンテンツにおけるマップを自動的に分割し、プレイヤーの視点の距離に応じて処理を調整するWorld Partitionなど、目立たないもののゲームなどにおける映像をよりリアルに再現するための改善、開発者らの作業が効率的になるいくつかの改善が、Unreal Engine 5には仕込まれている。
Unreal Engine 5のようなゲームエンジンは、いまやゲーム以外、特に映画やテレビドラマ作品などのCG加工映像でも使われている。過去のイベントでは、Disney+の人気SFドラマ『マンダロリアン』におけるバーチャルセットにUnrealが使われていることが紹介されていたが、Unreal Engine 5のリリースによって、このようなツールと映像メディア間のクロスオーバーもさらに増えるだろうと、EpicのKim Libreri CTOはThe Verge に語った。
ただし、ゲームスタジオがUnreal Engine 5の新機能をふんだんに使ったタイトルを完成させるには、まだしばらくの時間が必要になるだろう。スタジオはまずエンジンをテストし、それを使うゲーム開発プロジェクトの開始までに1年前後を要するからだ。
Unreal Engine 5が最初に発表されたのは約2年前で、いち早くこのエンジンを採用することが明らかにされたゲームタイトルのひとつ『Black Myth: Wukong』でさえ、そのリリース予定は2023年。『Witcher』シリーズの次回作も発売時期は未定のままだ。
ちなみに、今回のUnreal Engine 5の正式リリースに合わせて、ゲームスタジオのCrystal Dynamicsは、人気アクションゲームシリーズ『トゥームレイダー』の次回作をUnreal Engine 5で開発することを明らかにした。
今回のUnreal Engine 5のローンチの一環として、Epic Gamesは『The Matrix Awakens』デモのマップのサンプルデータを開発者向けに公開。また『Lyra』と名付けられた、Unreal Engine 5で開発されたマルチプレイヤーシューティングゲームのサンプルも公開した。いずれもゲーム開発者にとって “さわって学習する” タイプの良い教材になるはずだ。