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すべてのビジネスパーソンのクリエイティブワークを向上させる「Adobe Creative Cloud Express」が目指すクリエイティブの民主化とは

ビジネスパーソンはビジネスに専念し、画像・動画などのクリエイティブ分野はプロクリエイターに外部委託を行う。そうした常識が、パンデミックによる業務内容の変化を経て、いま急速に過去のものになりつつある。

パンデミック以降の世界では、SNSやオウンドメディアでの日常的な素早い発信が必須となり、リモートワークではデモ資料のクオリティ次第で契約締結まで可能になった。そこでは営業、総務などの「非クリエイティブ職」の人材によるクリエイティブワークが鍵を握る。

その流れを読み取ったのが、Photoshop、Illustrator、Premiere Proなどのクリエイティブ・プロツールの総本山・アドビである。「非クリエイティブ職」の人材のための無料でスタートできる「Adobe Creative Cloud Express」(2021年12月リリース)によって、アドビがビジネスの現場に与える革新とはどのようなものなのか。アドビ マーケティング本部 常務執行役員/シニアディレクター 里村明洋(以下、里村)に聞いた。

アドビは日本の転職市場で必要とされるスキルのニーズ調査を、21年春に行った。その結果、「非クリエイティブ職種」においても、クリエイティブスキルの必要性が、ここ10年で約4.2倍に増加したという。さらに同等業務の人材ならば、クリエイティブツール・スキルをもつ人材に、月収換算で“平均3.4万円”優遇する意志があることがわかった。

一方、同社がグローバルで実施した「中小企業の経営者におけるクリエイティブに関する実態調査」(2021年秋実施)では、経営者の82%が「クリエイティブなデザインがビジネスに成長をもたらす」と考えながら、その半数近くがアイデアを実現しクリエイティブをアウトプットするための時間、ツール、スキルがないと回答したという。

この2つの調査から浮かび上がってくるのは、ビジネスにおけるクリエイティブが重要になる一方で、外部委託する時間もコストもなく、内製化を実現したいと考えている企業の実情ではないだろうか。

アドビが抱えていたイノベーションのジレンマ
「もともとP&Gで消費財の営業、戦略、マーケティングを7年間行ったあと、より社会にインパクトを与えることができる仕事を求めてGoogleに移り、クロームキャストなどのハードウェアからGoogle Playのソフトウェア、検索プラットフォーム構築に従事しました。19年にアドビに入社したのは、マスマーケティングの経験とデジタルスキルが生かせると考えたからです。しかし、当時のアドビはクリエイティブツールの最高峰として君臨するがゆえの、いわゆるイノベーションのジレンマを抱えていました。

プロ・クリエイターに対する機能を最先端にブラッシュアップすることに特化することで、必要とされている大衆市場を見逃しているように思えたのです。これは私がもともとクリエイター出身ではないからこそ、より強くそう感じたのかもしれません」

アドビはすでにiPad版のPhotoshopなども発表していたが、それもプロの知識ありきのインターフェイスで、一般層にアプローチできるユーザビリティではないと、里村は感じていたという。

「調査からわかるとおり、いま求められているのは『非クリエイティブ職』のためのクリエイティブツールだと、私は考えたのです。

その背景には、パンデミックの長期化によるリモート業務の役割の進化があります。web会議ツールを使用した業務は、打ち合わせだけでなく契約締結にまで及ぶようになりました。リアルでの商品説明の代わりに、上質なクオリティで画像、動画などを活用することで、売り手のストーリーは、買い手に伝わり、契約締結まで可能なことがわかったのです」

その一方で、リアルな打ち合わせが難しくなった環境では、外部クリエイターに意図を伝えること自体が難しい。商談の明暗を分けるアジャイルな対応がしにくく、コストもかさむ一方だ。理想は営業、総務などの「非クリエイティブ職」の人材でも、一定のクオリティでデジタル成果物を生み出せること。しかしこれは従来のアドビの追求してきた戦略とは大きく異なっていた。

「これまでプロフェッショナルのための最先端・最高峰の機能のアプリケーションツールを提供してきたのがアドビです。Adobe Creative Cloud(2012年リリース)はさまざまなアドビ・アプリケーションを組み合わせて定額・安価で使用することのできるクリエイターや志望者のための画期的な仕組みでした。

しかしアプリケーションを使用するための知識や専門用語は、それぞれユーザーが勉強する必要がありました。これではとても一般ユーザーは太刀打ちできません」

そうしたジレンマはアメリカ本国でもすでに把握しており、2021年12月に各方面の思いが結実し、「Adobe Creative Cloud Express」がリリースされる。「非クリエイティブ職」の人材が知識なしで、無料で始められる、里村が待ちに待ったハードルの高さを限界まで下げた“クリエイティブの民主化”を実現するサービスだ。

「Adobe Creative Cloud Express」にはWeb版とモバイル版とがあり、作成されたコンテンツはクラウドで管理されており、両版の行き来が可能だ。さらにデバイスやOSに左右されることもない。特別な知識がなくても、PowerPointのためのプレゼン画像、SNS用の投稿動画、写真のリサイズからAIによる写真の切り抜きなどが高い精度で可能になるという画期的な仕組みである。

Adobe Creative Cloud Expressを実際に使用してみる
Adobe Creative Cloud Expressが、従来のAdobe Creative Cloudと違うのは、スタートラインだ。プロクリエイターは従来の知識・経験をもとに、完成図をまず頭の中で描く。そしてどのアプリケーションを使うべきか判断し、作業を開始する。

一方一般ユーザーはまず、何をどのようにつくるべきか、予想図を描くのが第一関門だ。しかしAdobe Creative Cloud Expressなら、Creative Cloudコミュニティーのクリエイターが作成したテンプレートが数多く用意されているので、ユーザーはテンプレートを選ぶだけでよい。

例えばバナーを作成したいのなら、目的に近いバナーのテンプレートを選び、文字や写真などの要素を入れ替えれば、プロ並のクオリティの作品が完成してしまうのだ。

それはInstagramストーリーでも、チラシでもYouTubeサムネールでも、企業ロゴ、名刺でも同様だ。どのテンプレートもクオリティが高いので、そのまま完成品としても通用する。なかでもポイントとなるのが、一般に広く使用されているプロ仕様のフォントが使えることだ。このフォントの力というのは、デザインを洗練させるための重要事項と言えるだろう。

これは音楽に例えると、かつては楽器をマスターしないとできなかった曲づくりが、楽器を使わず既存のプロのサンプリング音源素材を組み合わせて完成させることができるようになったコンピューターミュージック(DTM)の進化のようである。

ユーザーは音源を組み合わせるように画像などを組み合わせ、自身の意図で一部を変更すればいい。さながらDJのような感覚でクリエイティブ成果物を生み出すことができるのが、この「Adobe Creative Cloud Express」なのである。そのための複雑な専門知識は不要なので、使っていて実に楽しい。

そうしたテンプレートによる制作が可能な一方で、もっと身近で頻度高く必要なひと手間に対応した目的別の「クイックアクション」も画期的な利便性を実現している。

「目的のために、どのアプリケーションを使うか考えるのではなく、従来ユーザーのユースケースから導き出した頻度の高い目的を抽出し、画像をドロップするなどの簡単な操作で機能を提供できるようになっています」(里村)

写真で背景を削除したい(人物を切り抜きたい)なら「背景を削除」で画像をドラッグ&ドロップするだけで、すぐに背景を削除してくれる。切り抜き作業にはAI(Adobe Sensei)が、美しさも含めて判断する仕上げの工程があるのが実にアドビらしい。もちろん結果の微調整なども可能である。

他にも「ビデオをトリミング」「GIFに変換」など、必要だけれど少し面倒な作業に対してアプリケーションを切り替えることなく使用できるのは、そうした作業を部下に頼むときに、アプリの使い方から教える必要がないということでもある。これは教え手にとっても大きな魅力だ。



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