アップルが5万円台から買える新しい5G対応のiPhone SEを3月18日に発売する。2年前に発売された先代のiPhone SEから外観は大きく変えていないものの、中味には骨太な強化を図った。ユーザーが「長く使えるiPhone」として変貌を遂げている。
親しまれてきたコンパクトサイズと指紋センサーは継続
最初にまず新旧iPhone SEが「変わらなかったところ」を確認しよう。ディスプレイは同じ4.7インチのRetina HDとして、本体の外形寸法も変えずにキープした。質量は新しいiPhone SEがわずかに4gほどアップしている。
本体フロント側にはホームボタンを兼ねる指紋認証センサー「Touch ID」が継承された。次の新しいiOS 15.4以降からFace IDを搭載するiPhoneがマスクを着けたまま画面のロックを解除できるようになることが発表されていたので、筆者はこの機会にアップルがiPhoneをすべてFace ID搭載機に入れ替える可能性もあると考えていた。
だが実際には発表イベントの壇上でティム・クックCEOが述べていたように、日本を含む世界各地で「ホームボタンを搭載するコンパクトなiPhone」に寄せられる期待は今もなお大きいようで、アップルはこれを無視するわけにいかなかったのだろう。
私事になるが、筆者にもようやくスマホデビューを果たした高齢になる家族がいる。指で画面をタップしたりスワイプする操作にはなかなか馴染めずにいるが、やはり押すと手応えが返ってくるボタン操作は比較的覚えやすいようだ。
最新のA15 Bionicチップを搭載 長く使えるiPhoneにこだわった
第3世代のiPhone SEは、5G対応のほかにも表には見えにくい骨太な進化を遂げていた。重要なポイントは大きく2つある。
ひとつは最新のiPhone 13シリーズも搭載するA15 Bionicチップが、エントリーモデルであるiPhone SEに惜しげもなく採用されたことだ。
A15 BionicはiPhoneのパフォーマンス向上を引き出すとともに、駆動時の電力消費を低く抑えられる高効率なチップだ。5G対応の新機種はネットワーク通信時に4G LTEよりも電力を多く消費する負担の大きなタスクをこなしているが、第2世代のiPhone SEよりもバッテリーの持続時間は長く伸びている。例えばビデオ再生を連続で2時間以上、オーディオ再生は10時間以上長く楽しむことができる。
アップルのイベントでは、iPhone SEが最新のA15 Bionicチップを搭載したことで、この先も無料で提供されるiOSのソフトウェアアップデートによる機能追加が長く楽しめるメリットについても強調されていた。新しいiPhone SEは「中味が古くならないiPhone」なのだという。
そしてもうひとつ、新しいiPhone SEは本体ガラス素材の耐久性能がアップしたことについても大事なポイントとして言及しておきたい。
iPhone 13シリーズの背面に採用する耐久性の高いガラス素材が、第3世代のiPhone SEのディスプレイ側カバーガラスと、背面を覆うガラスの両方に使われている。本体側面の素材は航空宇宙産業で使われているものと同じグレードのアルミニウム7000シリーズだ。
iPhone SEを選ぶユーザーの中には、最新機種を頻繁に買い換えるガジェットファンよりも、1台のスマホを長く使い続ける層が多いことを見越して、アップルは「キズや破損に強いiPhone」を魅力として打ち出した。
ストレージサイズが最も小さい64GBモデルの販売価格を新旧iPhone SEどうしで比較すると、第3世代のiPhone SEは8000円ほど値上がりしている。
8000円分の価値は、最新のA15 Bionicチップを載せて、5G対応になったことだけでも“おつり”が来ると筆者は思うのだが、今年に入ってから国内の大型家電量販店などで4G対応の第2世代iPhone SEが安価に売られていたケースもあったことから、これから新しいiPhone SEの購入を躊躇する向きがあるかもしれない。
でもやはり、今では国内にも5Gでつながる通信エリアが拡大したことや、そのメリットが5Gでコンテンツをストリーミング、あるいはダウンロードする時の速さと安定感を実感させるほどにもなっていることから、これから買うなら5万円台から購入ができて、「長く使って元が取れる」5G対応のiPhoneを選ぶ方が賢明だと思う。
iPhone 13/13 Proシリーズに新色を追加
今回アップルは、昨年秋に発売したiPhone 13シリーズとiPhone 13 Proシリーズにグリーン系の新色を追加することもイベントで発表した。iPhone SEと同じ3月18日に発売される。
もちろん色の好みには個人差があるだろうが、日本国内では特に新生活シーズンが訪れることから、この機会にiPhoneの購入を検討していた人々の背中を押すことになりそうだ。
アップルは昨年もこの時期にiPhone 12シリーズの新色「パープル」を追加した。この戦略がiPhoneのセールスを“中押し”する効果が得られたのだろう。アップルはこれからもエントリーモデル、または新色をこの時期に投入して、iPhoneの印象をリフレッシュする「iPhone、春のリブート戦略」を続けるのかもしれない。この時期に新しい機種を発表してiPhoneと戦ってきたライバルにとっては厄介だ。
第3世代のiPhone SEは、高性能なA15 Bionicチップを載せたことで、暗い場所で従来よりも明るく色鮮やかな写真が撮影できたり、カメラの基本性能もブラッシュアップされているようだ。また機会があれば実機のハンズオンレポートも報告したい。