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Apple変革の象徴か。歴代最高性能の「Mac Studio」など新商品が一挙公開

日本時間3月9日早朝、Appleの新製品発表会がオンラインで開催された。事前の予想通りiPhone SEのニューモデルがお目見えになったほか、新色のiPhone 13、アップグレードされたiPad Airや、Mac対応の外部ディスプレイ「Studio Display」も発表された。 特に目立った新顔が、Appleシリコンを搭載した「Mac Studio」である。既存のMac miniを天地に拡大したような設計の省スペース型コンピュータで、Mac Proシリーズを置き換えるものと見られる。今回の新製品につき、簡単な解説を加えていきたい。 やっぱりお買い得なiPhone SE 低価格帯のiPhoneとして高い支持を受けているiPhone SE。2020年に発売された第2世代モデルでは、ホームボタンやTouch IDを存続させた守旧的な設計が評価された。そんなiPhone SEがこのたび、2年ぶりのモデルチェンジと相成った。 第3世代となったiPhone SEでは、iPhone 13に採用されたものと同じ6コアのA15 Bionicチップを搭載。公称によれば、グラフィック性能はiPhone 7の3.7倍、なおかつiPhone 8の2.2倍である。これらの古いiPhoneを使い続けている人にとっては、またとない“買い時”だろう。 Touch IDには根強い人気が 価格の安さ(5万7800円~)もさることながら、マスク着用時のロック解除が簡単なことから、(Face IDではなく)Touch ID仕様のiPhone SEを好むユーザーは多い。大きすぎず手になじむサイズや、タッチパネル上に邪魔なノッチがないことも概ね好評である。 2020年のiPhone SE(第2世代)を使っているユーザーも買い替えを検討していいが、2年前のモデルはまだ使用に耐える性能を有しており、経済状態によっては2年後(2024年)のニューモデルを待つ手もある。また、Androidスマートフォンからの乗り換えを考えているのならば、お買い得なiPhone SEは魅力的な選択肢となる。 iPad Airは「順当なアップグレード」 1年半ぶりのニューモデルとなったiPad Airでは、従来の「Aシリーズ」(iPhoneと共通)に換えてM1プロセッサを採用。CPUの世代も考えれば、順当なアップグレードが施されたといえる。 発表会においては、快適なゲームプレイを強調する映像が印象的に挿入された。主にグラフィック性能が強化されており、FPSなどのオンラインゲームで良い結果を残したい人ならば手に入れたいマシンである。 なお、無印・mini・Air・Proの4モデルが並行して展開されているiPadシリーズだが、今回更新されたのはAirのみだ。今後の棲み分けとしては、比較的廉価な無印iPadとiPad miniでは「Aシリーズ」のCPUを搭載し、高価格帯のiPad AirとiPad Proでは「Mシリーズ」(Macと共通)のCPUを搭載するものとみられる。 ちなみに、「M1」CPUの登場からはすでに1年が経過しているが、後継となる「M2」CPUはまだ発表されていない。Mシリーズのアップデートはおそらく2年おきになりそうだ。該当するシリーズの買い替えサイクルも、2の倍数年を基準に考えることになるだろう。 Mac Studioは何者だ!? ここまでは妥当なモデルチェンジであり、新しいiPhoneやiPadの登場に驚いた視聴者はいない。ところが一転「何だこれは」と疑ったのが、新製品のMac Studioである。 筐体はMac miniを天地に拡大したような外観だが、驚くべきことに、その容積はほとんどが冷却用ファンが占めている。フタを外したらヘリコプターになって飛んでいきそうな大きさだ。 現代のコンピュータにおいて肝要なのが、CPUなどの熱暴走を予防するための冷却系である。Intel時代のMac miniでは排熱が追いつかず、ユーザーが「部屋が熱くなる」と訴える一幕もあった。AppleがMac Studioで極端なデザインを採用したのも、後述する新設計のCPU「M1 Ultra」の性能を最大限発揮させるためだと思われる。 ただし、Mac Studioの静粛性に関してはまだ定かでない。「スタジオ」を名乗るモデルだけに、内部から爆音が漏れないことを祈るばかりだ。 なお、エントリーモデルは24万9800円~、上位モデルは49万9800円~というMac Studioは、価格帯においてタワー型のMac Pro(65万9780円~)に相当する。今後、Mac Proは終売となり、Mac Studioが取って代わるものと想定されるが、Intel搭載機としてMac Proの販売が続く可能性もある。 新CPU「M1 Ultra」とは… Mac Studioの上位モデルは、M1世代のハイエンドCPUとなる「M1 Ultra」を搭載する(下位モデルは最新型MacBook Proと共通の「M1 Max」)。この「M1 Ultra」が何というか、実に直情的なCPUなのである。 M1 Ultraの性能は、Appleシリコンとして最高というだけでなく、従来のMac Proシリーズに採用されたIntel製の「Xeon」を上回る。すなわち3月9日に、歴史的にも最高性能のMacが爆誕したことになる。 どうやって高性能を実現したのかというと、仕掛けは単純で、内部で2個のM1 Maxチップを接続している。「2個で2倍」という安直な発想だ。Appleはこの設計を「ウルトラフュージョン」と呼んでいる。 Mac Proを上回る性能と考えれば、Mac Studioは相対的に「省スペースのタワー型ハイエンドコンピュータ」ということになる(受ける印象は「大きくなったMac mini」だが……)。価格もMac Proと較べて安いため、プロユース市場における存在感は強まるものと予想される。 “デザイン先行”から脱却か ここで少しだけ、今世紀におけるAppleの躍進を振り返ろう。2008年に発表された初代のMacBook Airでは、機能を絞り込んで薄さを追求するという「デザイン先行の設計」で大成功を収めたため、その後のAppleのプロダクトには“デザインありき”という印象がつきまとった。 ところがM1 Ultra/Mac Studioの場合、超性能チップの完成がデザインに先行している。すなわち、「とにかくスゴいチップを作ろう」というのが出発点。そして「とにかくスゴいチップができたから、それを冷やせる筐体を」ということで、Mac Studioはあの異様な設計になったのだ。 そのためか発表会におけるプレゼンの順番も、「M1 Ultra」が先、Mac Studioが後であった。これはコンピュータの設計として極めて誠実な道筋だが、スティーブ・ジョブズ時代のAppleのイメージからは外れている。 もちろんプロユースの場合、デザイン以上に性能が要求されるのは言うまでもないし、Mac Studioのデザインだってそう悪くはない。ティム・クックCEO率いるAppleのプロダクトは保守的とも言われるが、Mac Studioからは性能向上への熱気が感じられた。



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