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Apple Watch心電図機能の認可、なぜ日本で2年半も遅れた?米国との差で見る、日本でイノベーションが起こらない理由

日本では2021年1月から利用可能になった、Apple Watchの心電図測定機能。

現在はこの機能を活用した「Apple Watch外来」を設けるクリニックも登場するなど、日本の医療界にも小さな変革を起こしつつあります。

しかし、この心電図機能がアメリカのApple Watchで使用可能になったのは2018年9月。

他国も次々と使用可能になる中、日本ではなかなか医療用機器としての試用の認可が降りず、アメリカに遅れること約2年半での認可となりました。

なぜ、このような差がついたのでしょうか?

■米国は医療用ソフトウェアのスピード認可を後押し

まずアメリカの事情について書くと、アメリカでは医療用ソフトウェアの承認プロセスを短縮化するために、「デジタルヘルスソフトウェア事前認証プログラム」(Digital Health Software Precertification (Pre-Cert) Program)というものが2017年の時点で作られていました。

医療用ソフトウェアの有効性や安全性を一つ一つ審査するには、非常に時間がかかります。

そこでアメリカでは、一つ一つのソフトウェアを審査する以前に、まずはソフトウェアの設計やメンテナンスの手法などを「企業ごと」に事前に審査。

そして基準を満たす企業をまず認定し、認定した企業が開発した医療用ソフトウェアについては、提出資料や情報を簡略化して新竿の期間短縮・効率化を図ったのです。

なお2017年7月に参加認定された企業9社は以下のもの。AppleのほかGoogleグループのスマートウォッチ企業のFitbit、そしてSamsungの米国法人も含まれていました。

Apple(米国)、Fitbit(米国)、Johnson & Johnson(米国)、Pear Therapeutics(米国)、Phosphorus(米国)、Roche(米国)、Samsung Electronics(米国)、Tidepool(米国)、Verily(米国)

■日本にはスピード認可の仕組みはなく、他ブランドの心電図も使えない状態

一方で日本には、そのようなスピード認可の仕組みは存在しなかったため、Apple Watchの心電図機能が使用可能になるまで、非常に長い時間がかかってしまいました。

なお、心電図機能は他のスマートウォッチでも搭載するものが出てきていますが、「外国では使えるけど日本では未認可のため使用不可」というモデルが複数あります(Fitbit、Withingsのモデルなど)。

日本で認可が降りているスマートウォッチは、まだApple Watchのみの状況です。

また医療用ソフトウェアではありませんが、スマートウォッチの非接触型決済(キャッシュレス決済)の分野においても、日本は遅れをとっている印象があります。

「本体にはNFCを搭載していて、海外では各種キャッシュレス決済が可能だけど、日本では使用不可」というスマートウォッチも複数あるのです。

イノベーションが次々と起こるアメリカのような国では、小さなトラブルが起こることには目をつぶりつつ、企業は革新的なサービスはいち早く市場に投入。また国家も、各種トラブルに対応しつつも、その認可を後押しする姿勢があります。

日本での展開後のUber Eats関連の各種騒動を見ると、「革新的なサービスにはトラブルが付き物」ということが分かります。

またUber Eatsの登場により、日本の飲食デリバリーの世界が大きく変わったことや、飲食にまつわる利便性が非常に向上したことも、明確な事実だと思います。

心電図機能のような医療関係のソフトウェアについては、認可に一定の期間が必要なことは理解できます。

しかし、それ以外の革新的なサービスについては「多少のトラブルは織り込み済みで、市場に投入してしまおう」という姿勢が企業や国家にもないと、日本は世界のトレンドから取り残されてしまうのではないか……。

筆者はそう感じますが、他国よりもミスやトラブルを恐れる習慣が根強い日本では、そうしたイノベーションの後押しも難しいんだろうな、とも感じるのでした。



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