「ミレニアル世代の私でも全てを理解しきれていない」と、レディット(Reddit)の共同創業者で現在38歳のアレクシス・オハニアン(Alexis Ohanian)は嘆く。レディットは、ミームやGIFなどのネット文化の広まりによって、5000万人以上のDAU(デイリー・アクティブ・ユーザー数)を抱える規模に成長したが、オハニアンが理解しきれていないのは、最近ネット上で大きな話題となっているNFTのことだ。
ネットビジネスに長年携わってきたオハニアンの言葉は、真実をついている。NFTの世界は、専門用語が多い上に、そのコンセプト自体がわかりにくい。NFTとは、non-fungible token(非代替性トークン)の略で、NFTアートはネット上のマーケットプレイスで売買されている。
オハニアンは、10月21日から始まったNFTに特化したポッドキャスト番組「Probably Nothing」の共同司会者に就任した。この番組はスポティファイやアップルポッドキャストなどで聴取できる。Probably Nothingという番組名は、NFTが本質的に無価値であると考えられていることに由来する。
もう1人の司会者は、24歳の起業家のTiffany Zhongだ。彼女が設立した「Islands」は、フォロワーを増やして収益化を図りたいインフルエンサー向けのプラットフォームを運営している。2人は、Yコンビネータで行われたハッカソンで出会った。当時、Zhongはまだ高校生で、オハニアンはYコンビネータのパートナーだった。Zhongは、ハッカソンで速読アプリを開発し、オハニアンはその後、自身でもSeven Seven Sixというベンチャーキャピタルを設立した。
2人は、ツイッターを通じて共通の趣味が多いことを知り、最近になって交流を深めるようになったという。「オハニアンとは、NFTミームを交換したり、関心のあるプロジェクトについて意見交換をしていた。ツイッターのDMで数ヶ月間会話をした中で、ポッドキャストのアイデアが生まれた」とZhongは話す。
NFTは、今年最大の話題の1つだ。1年前、NFTの1カ月あたりの販売額は1000万ドルに満たなかった。しかし、今年8月のピーク時には1日で過去最高の3億2300万ドル(約367億円)が取引された。
クリスティーズの担当者らをゲストに
NFTの取引額は急増し、世間の関心も高まっているが、NFT市場は規制されたファイナンスや投資といった主流マーケットとは依然として区別され、投機筋が群がっているのが実情だ。番組で、Zhongとオハニアンは自らのNFTの投資実績や、資産を保管するデジタルウォレットのリンクをポッドキャスト上で公開するという。
「人々は、NFTに関して、詐欺まがいではない、信頼できるコンテンツを求めるようになっている。我々は、コレクターやクリエイター、投資家など幅広い分野のゲストを招き、多くの人から頼りにされる番組を作りたい」とZhongは述べた。
ゲストには、NFTの投資家であるFarokh Sarmadや、オークションハウスのフィリップスで作品が取引されたことのあるアーティスト、ThankYouXなどが登場する。彼らの多くは、知名度がさほど高くないが、Zhongとオハニアンは、過去の雑誌の表紙をNFT化したタイム誌のキース・グロスマン社長や、NFTアートの取扱いを他社に先駆けて行ったオークションハウスのクリスティーズのノア・デイビスなどにもインタビューする予定だ。
クリスティーズは、3月にアーティストBeepleのコラージュ作品を競売にかけ、史上最高額の6930万ドルで落札された。
「ちょうどその頃、私はZhongと投資ポートフォリオが今後大きく変わり、投資対象が株や債券だけでなくなるという話をしていた。16年前にレディットを成長させたのと同じトレンドが、今ではより効果的に、より早く広まっている」とオハニアンは話す。
彼の言うトレンドとは、オンラインコミュニティが構築され、成長するスピードが速まっていることを指す。「これは、非常にエキサイティングなことだ」と彼は語った。