Apple(アップル)は、iPhoneを使ってうつ病や不安症、認知機能の低下などの症状を検出・診断する方法を研究していると報じられている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、研究者たちは、動きやすさ、睡眠パターン、人のタイピングの仕方などのデータを分析することで、これらの状態に関連する行動を発見できるのではないかと期待している。
また、そのデータには顔の表情分析や心拍数、呼吸数などの測定も含まれているかもしれない。すべての処理はデバイス上で行われ、Appleのサーバーにデータが送られることはない。
Appleは、これらの機能の開発につながる研究プロジェクトを進めている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)では、2021年から始まる研究で、3000人のボランティアのApple WatchとiPhoneのデータを用いてストレス、不安、うつ病について研究を進めている。2020年に始まった試験フェーズでは、150人の参加者のデータを記録した。
研究者たちは、iPhoneやApple Watchのセンサーから取得したデータと、参加者が記入した気分に関するアンケートを比較するとのことだ。また、参加者の毛根に含まれるストレスホルモンであるコルチゾールのレベルも測定すると言われている。AppleとUCLAは、2020年8月に3年間の研究を発表した。
今回のAppleのプロジェクトに関係しそうな別の研究プロジェクトも進行中だ。Appleと製薬会社Biogen(バイオジェン)は2021年1月、認知機能をモニターし、アルツハイマー病に発展する可能性のある軽度認知障害を発見するための2年間の研究に取り組んでいると発表した。計画では、約半数が認知機能障害のリスクが高いとされている約2万人の参加者を対象としている。
この調査で得られたデータがうつ病や不安神経症の症状と一致した場合、Appleはそのデータを、メンタルヘルス疾患の兆候が見られた場合にユーザーに警告する機能を作ることに使うことができる。iPhoneはユーザーに治療を受けるよう促すことができるようになり、早期発見が長期的には生活の質を向上させることにつながるため、この機能は重要な意味を持つことになる。
Appleとそのパートナーはこの研究の初期段階にあり、iPhoneにメンタルヘルスのモニタリング機能を追加するには、少なくとも数年はかかると思われる。また、この研究がそのような機能につながる保証はない。
先行研究では、特定の症状を持つ人は、他の人とは異なるデバイスの使い方をしているという結果も出ている。しかし、開発者がメンタルヘルスの状態を確実かつ正確に検知できるアルゴリズムを構築できるかどうかは定かではない。
しかし、火のないところに煙は立たない。ここ数年、Appleにとってヘルスは重要な分野であり、今回の研究に基づいた機能がいずれ登場する可能性はある。