M1搭載iMacは、プロセッサーがIntelからApple Siliconへと変更されただけではありません。そのほかにも、7色のカラーバリエーション、そしてディスプレーサイズ、これらを包み込むデザインの変更は大きなトピックです。
そもそも、これまでのiMacは鋭いアルミニウムのエッジと、ブラウン管を搭載した初代iMacを思わせる、レトロな背面の曲線という2面性を持ったデザインでした。エッジ部分については、今回のM1 iMacよりも薄いくらいです。
新しいデザインは、上から下まで、11.5mmの厚さを保つすっきりとした本体。
コンピュータの本体部分はディスプレイの下、いわゆる「アゴ」の部分におさめられているというから驚かされます。もっとも、MacBook Airと同じチップと基盤の組み合わせなので、大きくなる理由もありません。
ただしノート型、ファンレスのMacBook AirとiMacで、M1が同じであることは認めていますが、サーマルデザイン、つまり熱設計が異なることから、例えばピークパワーを持続できる時間が異なるなど、瞬時の計測であるベンチマークとは異なる面での性能の違いがあると指摘できます。
派手な色を、選ぼう
iMacは7色展開で、スタンダードカラーはシルバー、ブルー、グリーン、ピンク。こちらの4色は、7GPUモデル・8GPUモデル双方でラインアップされ、量販店を含むあらゆる店舗で販売されています。
一方、8GPUモデルのみの用意で、アップルストア、オンラインストア限定となるのがイエロー、オレンジ、パープルの3色。丸ノ内などの店舗では全色が展示してありますが、必ずしも在庫しているわけでもないようで、限定色を選ぶならオンラインでの発注が良いでしょう。
イエローやオレンジといった派手な色はなかなか選びにくい、と思われている方もいるかもしれません。個人的にはiMacやiBookのタンジェリンに憧れていたことから、今回のM1 iMacではオレンジを選択しました。
背面はかなり濃いオレンジで、これが24インチサイズに広がっているので、ド派手そのもの。ちょっとやりすぎたかなーと思わされる瞬間もありました。しかし設置してみて、いざ使い始めてみると「そうでもない」と思い直しました。
まず、ド派手な背面は、コンピュータを使っている人は普段目にしません。しかも日本の住宅事情を考えると、背面は壁側に向いていることがほとんどで、家のインテリアとしても、濃いオレンジを目にするチャンスがないのです。
一方、画面の下に見えているスタンドは、背面よりも薄いオレンジがあしらわれています。これは、後述のキーボード、マウス、トラックパッドのアルミパーツのオレンジと同じで、控えめのトーンを楽しむ事ができます。
加えて、ディスプレイの白い縁取りの下は、淡いボディカラーで塗り分けられています。これまで、あごの部分はアルミパーツで中央にAppleロゴが浮かんでいましたが、今回はディスプレイのカバーガラスがそのまま下に伸びており、Appleロゴもなくなりました。ここも、派手すぎる色を日々目にすることを避けるように、工夫がなされていました。
ちなみに、よく付箋を貼っている人も多かったのですが、アルミボディでは時間がたつと剥がれてしまっていたので、つるつるのガラスの方が剥がれにくいのではないでしょうか。思い切って、派手な色を選んでしまっても、飽きてしまったり、部屋とミスマッチになってしまうといった問題が起きにくいのではないかと思います。このあたりのデザインの演出は上手いな、と感じました。
コンパクトさと、ちょうどよさ
リモートワークやオンライン学習と、家の中でのコンピュータ活用が進み、定着する中、デスクトップ型コンピュータのポジションが見直されています。
iMacのスタンドのフットプリントは奥行き14.3cm、横幅13.0cmと非常にコンパクトです。スタンドの奥行きとMagic Keyboardの奥行きを合計しても25.8cmにしかならず、30.41cmのMacBook Airよりもコンパクトに置けてしまいます。
横幅の54.7cmを確保できれば、小さなデスクでも24インチの広大なディスプレーサイズを持つiMacが使えてしまうのです。大きくて邪魔、とデスクトップを敬遠していた人からすれば、新しいiMacは今一度デスクトップを考え直すことができるサイズを再提案してくれている、そんな存在と言えます。
しかしこの24インチ4.5Kというサイズのディスプレーもまた、実利用でのちょうどよさを感じることができました。
リモート会議では、必ずしもZoomなどのビデオ会議アプリの画面だけ表示できれば良いわけではなく、PDF、スライドも画面に共存させて作業が進みます。
オンライン授業だって、いまでは一方的に話を聞くわけではなく、4人程度のグループに分かれてグループワークを取り入れ、共同編集のドキュメントを仕上げると言った実習をしています。慣れてくると、教員も学生も、教室と同等もしくはそれ以上にスムーズなインタラクティブ授業を実現できるようになりました。
その点で行くと、この500ニト、24インチ、4.5Kというディスプレーは、リモート会議やオンライン授業を快適にする必要最低限の広さを確保できていると感じます。チップは同じM1でも、やはり13.3インチのMacBook AirやProでは、多様なアプリを同時へ高で使う現在の仕事には、画面が小さすぎたのです。
期待してしまう、XDRディスプレー
ちなみに、今回のiMacに搭載されたのは、これまでと同じRetina ディスプレー。十分に色鮮やかで最大輝度500ニトという明るさも満足いくレベルですが、iPhone 12等で撮影したHDRビデオを画面で再現することができません。
その点は、21.5インチモデルの置き換え、つまり24インチiMacがデスクトップのエントリーモデル位置づけられているのに対し、iPad Proはタブレットの最高峰という位置づけであることから、iPad Proにより品質の高いディスプレーが搭載されている点は理解できます。
iPad ProにはミニLEDバックライトを採用したLiquid Retina XDRディスプレーが搭載されており、Appleの液晶ディスプレーラインアップの中では、Pro Display XDRに次ぐ品質となりました。
今後、iMacの上位モデル、MacBook Proの上位モデルに、同様のディスプレーが採用されることは間違いないでしょう。その分価格が上昇する事も避けられません。では今回のiMacのディスプレー品質が悪いかと言われれば、前述の通り満足いくものでした。
M1の十分な性能と、これまた十分な品質のディスプレー、コンパクトな設置面積から、iMacは非常に幅広い層のユーザーをカバーすることができる製品と評価することができます。より多くの人が、派手な色も含め、安心して選択することができる製品と言えるでしょう。