電子書籍や音楽などDRM(デジタル著作権管理)がかかったものは、一般にあくまで「アクセス権」を購入しているにすぎず、ストアがサービスが終了したりアクセス権を停止すれば読んだり視聴できなくなるリスクがあります。
そうした文脈のもと、アップルがiTunesストアで映画やテレビ番組につき「購入」が詐欺的だとして集団訴訟に直面していると報じられています。
米メディアHollywood Reporterによると、本訴訟はカリフォルニア州の連邦地裁に提起されたものです。主席原告のデビッド・アンディーノ氏は、「購入」と「レンタル」の区別が欺瞞的だと言い、なぜならアップルが「購入した」コンテンツへのアクセスを停止する権利を持っており、実際に何度も行ってきた(だから「買う」と「借りる」の違いはない)と主張しているとのことです。
この裁判を担当するジョン・メンデス判事いわく、アップル側は「購入したコンテンツがiTunesプラットフォーム上に無期限に残ると信じている合理的消費者はいない(つまり永遠にアクセス権を取り消されないと信じてはいない)」と主張して訴訟を却下させようとしたとのことです。
しかし判事は「一般的な言い回しでは、『購入する』という言葉は何かの所有権を獲得することを意味しています」「合理的な消費者は自分のアクセスが取り消されないことを期待すると考えるのが妥当だと思われます」として、訴訟を却下せずに継続を認めています。
ほか、アンディーノ氏の主張に対してアップルは、原告が「デジタルコンテンツを買うのをやめたとも言ってないし、デジタルコンテンツが改善されたと思えるようなiTunes Storeの変更も申し立てていないので、有効な将来の脅迫侵害を主張していない」と反論したとのこと。これを判事は、原告が購入したコンテンツがいつか消える可能性があるという損害は具体性を欠き、むしろ憶測にすぎないと主張しているとまとめています。
アップルの主張につき判事は「原告が主張する損害は、アップルが言うような『購入したコンテンツへのアクセスをいつか失うかもしれない』というものではない。むしろ購入時に高額な金額を支払ったこと、または不当表示がなければ使わなかったであろうお金を払ったことが損害です。この経済的損害は、アップルが主張するような憶測ではなく、具体的かつ現実的なもの」だとコメントしています。
メンデス判事は、原告の主張のうち不当利得返還請求を棄却したものの、アップルにコンテンツ販売方法の変更を迫ることができる差止命令の余地は残したとのこと。つまりアンディーノ氏ら原告は払ったお金を返してもらうことはできないが、iTunesストアの「購入する」など表記の修正命令を勝ち取れる可能性はあるわけです。
こうしたデジタルコンテンツにまつわる問題は、アップルのみならずAmazonなどにも深く関係があり、実際に米Amazonプライムビデオは不公正な競争と虚偽の広告があるとして訴訟を起こされています。今回の訴訟もゆくえによっては、デジタルコンテンツ業界に広く影響を及ぼすのかもしれません。