アップルは初めてのヘッドホン製品である「AirPods Max」を昨年発表したが、未だに海外でもどこに何色が入荷したというニュースが続くほどの人気を得ている。イヤホンの「AirPods」シリーズは、完全ワイヤレスでは国内トップの人気で快走している。こうしてアップルのヘッドホン・イヤホン製品の売り上げが大きくなる中で、アップルが興味深い特許を出願した。
この件については、海外サイトのApple Insiderも3月18日に取り上げた。
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イヤホンがウェアラブルデバイス化する!?
米国特許出願番号20210084402号の"IDENTIFICATION OF CUSHIONING MEMBERS IN PERSONAL AUDIO DEVICES"というアップル社の特許だ。タイトルを直訳するとパーソナルオーディオ機器のクッション材の認識技術となる。この場合のクッション材とは具体的に言うとイヤホンのイヤーピースとヘッドホンのイヤーパッドとなる。(特許においては請求範囲を広げるために意図的に抽象的な表現をすることが多い)
この特許は図を参照するとわかりやすいが、イヤーピースやイヤーパッドにIDタグを組み込んで、どういうイヤーピースを実際に装着しているかをスマートフォン側で知るというものだ。図1では番号608、図2では番号408がIDタグとなる。つまりどのサイズのどのタイプのイヤーピースやイヤーパッドが実際に装着されているかがわかる。 IDタグにはおそらくNFCに類するバッテリーレス(電磁誘導による起電など)の仕組みが使われていると考えられる。
イヤーピースやイヤーパッドのタイプやサイズを知ってどういうメリットがあるのだろうか。「この識別コードによって音量の上限調整やアクティブノイズキャンセリングのプロファイルの調整、またはその他の適用が可能だ」と特許の概要欄に記されている。また、イヤーピースやイヤーパッドに生体センサーがつくことで、「体温や脈拍、皮膚の湿度が検知可能である」とも記されている。これによってイヤフォンのIoT機器化が促進されるかもしれない。
さらに興味深いのは、"User interface behavior can also be modified"と記載されているので、異なるイヤーピースやイヤーパッドを装着した際、UI画面にそれが反映されるかもしれないということだ。
ちなみに、Apple Insiderはこの特許の出願者の一人は以前アップルが取得した米国特許10,743,095号"Contextual audio system"の出願者と同じだと指摘している。この場合のcontextualとはどういうシチュエーションで音楽を聴いているかというものだ。このシチュエーションとはエクササイズとか散歩などを示す。それに応じて音量などを調整する特許だ。Computational Audioの例の一つともいえるが、その際にもおそらくこの技術が使われるのかもしれない。
サードパーティー牽制の可能性も
また、この特許は別な面からも見ることができる。つまりアップルはこのタグが内蔵されていないイヤーパッドやイヤーピースを知ることで、サードパーティ製のイヤーピースはどう扱われるのかという問題だ。これはあたかもMFI(Made for iPhone)認証のようなアクセサリー管理が、イヤーピースやイヤーパッドにも及ぶのではないかとも深読みすることもできる。
AirPods Maxについては、iFixitが内部の分解画像を撮影した際に、ヘッドバンドが簡単に外れることが発見され、修理以外のなにかの布石ではないかと憶測を呼んだこともあった。秘密主義のアップルは黙して語ることは少ないが、こうした新製品群に込めた思惑や戦略は、なかなかに我々が考えている以上に深いものがあるのかもしれない。
ちなみに特許を出す目的には製品化以外にも、ライバル会社に使わせないためとか、クロスライセンスを得るためなど、様々な戦略があるので、必ずしもこれが将来の製品に採用されるわけではないということを注記しておく。