以前掲載の「医学博士が教える、コロナワクチンの副作用と打たないことのリスク」で、「ワクチンを打つリスクより打たないことによるリスクの方が大幅に上回っている」と断言した、アメリカ在住の医学博士・しんコロさん。しんコロさんは今回もメルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』で、玉石混交の情報を整理することができずに接種にためらいを見せる人のために、ハーバード大学医学部が配信した情報を翻訳・要約し、Q&A形式方式でさまざまな疑問に答えています。
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【関連】医学博士が教える、コロナワクチンの副作用と打たないことのリスク
「コロナワクチンは不安」という方へ。医学博士が答えるワクチンの疑問
コロナウイルスに対するワクチンの承認と接種が日本でも行われ始めた中で、今日は大切な情報を皆さんと共有しておきたいと思い、コロナワクチンに関するトピックを選びました。
ツイッターでみなさんに「ワクチン接種したい?」という質問をした時(2021年2月23日)に、「したい」と回答した人が47.5%、「したくない」との回答が21.8%、「わからない」と回答した人が30.7%でした。この回答から見ても、半数以上の人が即ワクチンを受けようという意思ではないということがわかりました。日本国内の他の統計では、接種をしたいという人の割合は更に低いというデータも見たことがあります。アメリカと日本での感染状況や重症化の深刻度にかなり差があることから、日本ではアメリカほど「接種したい」という意思が強くはないのかなという印象を受けます。
ちなみに、マサチューセッツ州ではすでに200万人以上が接種を受けました。マサチューセッツ州の人口が700万人なので、すでに4人に1人は接種した形になります。ちなみに、現在はまだ高齢者やハイリスク群対象なので、僕達一家の接種の順番が回ってくるのは春以降になる予定です。
コロナウイルスのワクチンにまつわる情報に関しては、何を信じて良いのか?という疑問があるかと思います。スキャンダルの多い政府の言うことは信じられないという方もいるでしょうし、製薬会社の言うことも利益が関わるから信じられないかもしれませんし、テレビに出てくるコメンテーターはそもそも当てにならないし、メディアに出てくる学者達は買収されているかもしれないし…。このような懐疑心で一杯になっている方もいらっしゃるかもしれません。
懐疑心が生まれることは仕方がないことですし、お気持ちは良くわかります。そんな気持ちが湧くのは、政府や製薬会社やコメンテーターや学者達が、「ワクチンを打って下さい」と言うことによって「得をしているのだろう」という疑いを持ってしまうのが理由の一つかもしれません。「政府は政府のやりたいことを常に押し通すだろう」「製薬会社はワクチンを多く売って儲けたいだろう」「学者やコメンテーターはお金をもらって台本を喋っているのだろう」などなどの疑いを持ってしまうのかもしれません。
そこで共通しているのは、「彼らはそれによって得をするからだ」という発想です。
一方で、「ワクチンは毒だ」「ワクチンは陰謀だ」「ワクチンの副作用は隠されている」ということを発言する一部の人達は、それを言うことによって何の得があるのだろうかということを考えると、一見「得をしていない」ので「彼らの言うことは本当に違いない」と思ってしまうのかもしれません。陰謀論が信じられやすい理由の一つにもこれがあります。「陰謀論のような世間の意見と逆行することを言っても得をしないのだから、陰謀論こそ本当かもしれない」というような考え方になってしまうこともあります。
一方で、マスコミに関しては発信する情報が本当だろうがウソだろうが陰謀論だろうが、センセーショナルであればその情報がより「売れる」ので良いのです。一部のマスコミは正確な情報を伝えるよりも、とにかく「売れる」情報を伝えることに重きをおきます。そういった意味では、彼らは「得をする」わけです。
このような様々な情報に溢れる環境にいると、もはやそういった情報を選別して判断することができなくなり、最終的にはSNSでどこの誰かが発信しているのかわからない情報を信じてしまったりするようになります。「噂を信じる」のような根拠のない行動になってしまうわけです。その結果、大勢が進む方向に真似して自分も進んでしまうという現象が起きます。
人混みの中で誰かがある方向に走り出して、それを見た誰かが真似をして、そのうちもっと人が走り出して、それを見た他の人たちが後に続き、そして残りの人達が恐怖に煽られて「よくわからないけどついていけ」となって走り出します。人混みは混乱した状態で、走っていく先が崖だろうが海だろうが走り続けます。自分たちが置かれている状況をしっかりと把握できないと、そういった危険な連鎖も起きることがあります。
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ワクチンのガイダンス
さて、前置きが長くなりましたが、皆さんにはコロナワクチンの情報を見る時には、上に書いたような混乱と混沌に我々が置かれているとう状況を自覚して、その上でどういった情報を選別していくのかをご自身の目で判断していただきたいと思っています。ということで、製薬会社で研究をしている僕の発言は「嘘かもしれない」と思われてしまうかもしれないので、アカデミアからの配信を参照しましょう。今日はハーバード大学の医学部の「コロナウイルスリソース・センター」が先週配信した情報をかいつまみ要約し、皆さんが気になるであろう疑問にQ&A形式方式でお伝えしようと思います。
※ ハーバード大学医学の以下サイトより引用・翻訳・抜粋
●Harvard Health Publishing
【COVIDワクチンにはどのような副作用がありますか?】
COVID-19ワクチン接種による副作用は軽度なものが一般的です。ほとんどの人が注射部位の腕の痛みを経験します。その他の症状としては、微熱、体の痛み、悪寒、疲労感、頭痛などがあります。これらの副作用はおおむね24時間から48時間以内に改善します。一部の人々には、この期間中に仕事に行ったり通常の日常生活の活動を行ったりするには気分が悪い場合もあります。3日目までに症状が改善しない場合は、医師に相談してください。
痛みのある腕を動かすと不快感が和らぐことがあります。熱がある場合は水分をたくさん摂るようにしましょう。イブプロフェンやアセトアミノフェンなどの市販の鎮痛剤も、発熱や痛み、その他の不快感に効果があります。しかし、注射を受ける直前に鎮痛剤を飲まない方が良いでしょう。
これらの副作用は、ワクチンが効いていて、体が抗体反応を構築している証拠です。現在利用可能なワクチンは2回の注射が必要で、2回目の注射の後に副作用が起こる可能性が高くなります。
【COVIDワクチンで他の人への感染は防げますか?】
ワクチンを接種した人が他の人に感染する可能性は低いということが、2つの研究から示唆されています。
最初の研究では、感染者の鼻や喉に存在するウイルスの量を調べました。この研究では、ウイルス負荷が高い人ほど感染を広げる可能性が高く、ウイルス負荷が低い人ほど感染を広げる可能性が低いことがわかりました。2つ目の研究では、ワクチンを接種した後に感染した人は、COVIDワクチンを接種していない人に比べてウイルス負荷が低いことが示唆されました。
これらの研究を合わせると、COVIDワクチンは感染と拡散の両方を防ぐことが示唆されています。しかし、これらの知見を確認するためには、より多くの研究が必要です。今のところは、ワクチンを接種しているかどうかに関わらず、まだ接種していない人を守るためにも、マスクを着用し、物理的な距離を保つことを続けてください。
【mRNAのCOVID-19ワクチンを受けてはいけない場合はありますか?】
mRNAワクチンを受けるべきではない体質はいくつかあります。ポリエチレングリコール(PEG)やポリソルベートを含むmRNAワクチンの成分にアレルギーを持っている場合、mRNA COVID-19ワクチンの初回接種後30分以内にアレルギー反応を起こした例があります。これまでに他の(COVID以外の)ワクチンや注射薬に対するアレルギー反応の既往歴がある場合は、mRNAワクチンのいずれかを接種しても安全かどうか医師に確認してください。
自己免疫疾患を持つ人や免疫抑制療法を受けている人など、免疫システムが弱っている人は、感染すると重症化するリスクが高くなります。これらのグループの人々もmRNAワクチンを受けることができます。ただし、他にも安全性を考慮する必要があるかもしれないので、このようなグループに該当する場合は、リスクと利点について医師に相談してください。
COVID-19の治療に使用される回復期血漿やモノクローナル抗体が、ワクチンの効果を低下させる可能性があります。これらの治療を受けたことがある方は、ワクチンを受ける前に90日間は待ってください。
【重度のアレルギーがある場合、mRNAワクチンを接種できますか?】
まれに、mRNA COVID-19ワクチンを接種した後に重度のアレルギー反応を起こした人がいます。そのため、米国でmRNAワクチンを接種される方は、接種後15分以上の経過観察が義務付けられています。
リスクはゼロではないことは事実である一方で、重度のアレルギー歴のあるほとんどの人が安全にmRNA COVID-19ワクチンを接種することができます。これには、食物、花粉、蜂、口から服用するタイプの薬などにアレルギーがある人も含まれます。重度のアレルギーの既往歴がある場合は、ワクチンを接種する人にその旨を伝えましょう。そして、接種後30分以上の観察が必要となります。その間にもしアレルギー反応が起きたら、医師がすぐに対処することができます。
注射薬や他のワクチンに対するアレルギー反応の既往歴がある場合は、CDCは、現在利用可能なmRNAワクチンのいずれかを接種すべきかどうかを医師に相談すべきだとしています。
先述と重複しますが、ポリエチレングリコール(PEG)やポリソルベートを含むmRNAワクチンの成分にアレルギーがある場合は、受けるべきではありません。また、1回目の接種後30分以内にアレルギー反応が出た場合は、2回目のmRNAワクチンを接種してはいけません。
【mRNAワクチンは人間のDNAを書き換えることがありますか?】
現在FDAが許可したCOVID-19のmRNAワクチンは、ヒトのDNAを書き換えることはありません。
COVID-19用のmRNAワクチンには人工のmRNAが含まれています。体内では、mRNAはヒトの細胞に入り、COVID-19ウイルスの表面にある「スパイク」というタンパク質を作るように指示します。細胞がスパイク・プロテインを作った後すぐに、細胞はmRNAを無害な断片に分解します。この間、mRNAが私たちの遺伝物質(DNA)のある細胞の核に入ることはありません。免疫システムはスパイクタンパク質を侵入者として認識し、それに対する抗体を産生します。この抗体は、後に実際のウイルスに遭遇した場合、病気を引き起こす前にウイルスを認識して破壊する準備ができています。
さて、「mRNAがDNAを書き換えてしまう」という誤解は、HIV等の一部のウイルスが人間のDNAに自らのDNAを挿入することや、遺伝子治療によって目的遺伝子をDNAに差し込むイメージと混同しやすいからかもしれません。誤解を解くために、HIVなどのウイルスの特徴と、遺伝子治療について少し書きたいと思います。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)や HPV(ヒトパピローマウイルス)は、ヒトのDNAにランダムに自分自身を刺した後、細胞の複製機構を利用し、そしてウイルスのコピーを増産します。この時、ヒトのDNAのどこに自分自身を差し込むかについてはランダムな場合が多いのです。そのため、もし細胞に大事な情報が書かれている部分に差し込まれてしまうと、細胞を癌化させてしまうことがあります。HPVが子宮頸がんや頭頸部がんなどを引き起こすことがあるのはこのためです。なので、米国ではHPVに対してワクチン接種するのが一般的です。HIVも同様に自身を人間の白血球のDNAに挿入します。
そうして細胞にウイルスのコピーを増産させ、免疫を破壊していくのです。mRNAワクチンは、こうしたウイルスのようにヒトのDNAに挿入されたり書き換えたりということはしません。そもそもmRNAワクチンはヒトのDNAが存在する細胞核に入ることをせず、細胞質内でタンパク質の「設計図」として使われ、使用後は分解されて消えてしまいます。巷ではmRNAが人のDNAを書き換えて病気を起こしたり不妊になるかも、という根拠のない情報がありますが、mRNAワクチンはそのようなDNAの書き換えは引き起こしません。
遺伝子治療は、人為的に遺伝子をヒトのDNAに挿入する治療で、ウイルスを用います。例えば、1990年代に行われていた重症複合免疫不全症(SCID)のウイルス遺伝子治療があります。この病気はある遺伝子の欠陥により生じるので、その遺伝子を人為的に挿入するという治療です。まず患者から血球を取り出し、欠陥遺伝子を修正するためにウイルスでヒトのDNAを組み換えし、
そしてその血球を患者に移植するのです。当時、この方法は有効だった患者もいる一方で、20人の患者のうち5人が白血病を発症してしまいました。これは、ウイルスが細胞の成長と死を制御する上で重要なDNAの一部の真ん中に挿入されてしまい、細胞の正常な機能を破壊してしまったためであると考えられています。mRNAワクチンは遺伝子治療のようなDNAのの挿入とは根本的にメカニズムが違うので、同じようなことを引き起こすことはありません。
ちなみに、遺伝子治療は近年CRISPRのような技術の進歩により、ウイルスをより正確に挿入することで、がんのリスクが圧倒的に下げることが可能になりつつあります。しかし、ワクチンに関してはmRNAの方がはるかに安全で迅速なので、コロナウイルスのワクチンを作るためには考慮されていませんでした。
ちょっと無理を承知でレストランで例えてみましょう。遺伝子の書き換えは新しいシェフを厨房に入れたり、調理道具を替えたりするようなもので、一方mRNAワクチンはシェフや厨房はそのままでレシピを書いたものを持ってきた、というような感じです。新たなシェフや調理器具は料理を美味しくするかもしれない一方で、性格や技術の悪いシェフだったらレストラン全体の環境が悪くなる結果になりかねません。一方、レシピを書いた紙をレストランに持ってきた程度だと、置きうる悪影響は最悪でも「レシピ通りに作ったけどあまりうまくできなかった」くらいです。リスクの度合いが違うのがなんとなくおわかりいただけるでしょうか。
ということで、mRNAワクチンはヒトのDNAを書き換えるということはないので、がんなどのリスクはかなり低いと考えて良いでしょう。
【FDAが緊急使用を許可したジョンソン・エンド・ジョンソン社のアデノウイルスワクチンについて教えて下さい】
2021年2月27日、FDAはジョンソン・エンド・ジョンソンの単発アデノウイルスワクチンについて、FDAの「ワクチンおよび生物学的製剤諮問委員会」(VRBPAC)の勧告を受け、緊急使用承認しました。このワクチンは、18歳以上の方への使用が許可されています。
VRBPACは、全国の独立した、科学的、公衆衛生の専門家からなるグループです。彼らの勧告は、COVID-19による入院や死亡の予防を含む重症化予防にワクチン
が85%有効であることを示す臨床試験データに基づいていました。また、B.1.351型がより一般的な南アフリカでは、このワクチンは重症化したCOVIDの予防に80%以上の効果があると考えられています。
ジョンソン・エンド・ジョンソンが実施中の第3相の臨床試験は、18歳以上の成人を対象に、約45,000人の参加者が登録され、半数がCOVID-19ワクチンを、残りの半数がプラセボを投与されました。
ワクチンによる予防効果は、人種や年齢層を超えて概ね一貫していました。また、参加者の34%は60歳以上であり、41%は重度のCOVID疾患のリスクを高める病状を少なくとも1つ持っていました。結果は、糖尿病や心臓病などの疾患を併発している60歳以上の人ではワクチンの効果が低い可能性を示唆しましたが、この研究の参加者にCOVID関連の死亡や医療介入はありませんでした。副作用としては、注射部位の軽度から中等度の痛み、頭痛、疲労、筋肉痛などがありました。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは、コロナウイルスのスパイクタンパクを作るための遺伝的指示を体内に届けるために、ヒトの風邪アデノウイルスを無害化したものを使用しています。ヒトの細胞はこの指示を利用してスパイク蛋白質のコピーを作ります。体内の免疫がスパイク蛋白質を異物として認識し、それに対する抗体を産生します。この抗体が後に実際のウイルスに遭遇した場合、抗体は病気を引き起こす前にウイルスを認識して破壊する準備ができています。
1回接種で済むというメリットに加えて、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンのもう一つのポイントは、保管のしやすさです。凍らせなければならないmRNAワクチンとは違い、数ヶ月間は冷蔵保存が可能で冷凍保存も可能です。
【予防接種を受けました。今から何ができますか?】
COVID-19ワクチンの最終接種から約10日から14日後から、マスクの着用、ソーシャルディスタンス、大人数の集まりを避けることなどの予防措置を継続しながら、ある程度の自由の幅が広がります。
ワクチンは、100%ではありませんが、重症化、入院、死亡から守ってくれます。初期のエビデンスでは、ワクチンを接種すると他の人に感染する可能性が低くなることが示唆されていますが、確かなことは分かっていませんし、実際に感染のリスクがゼロになるとは考えにくいのも事実です。また、ワクチンが無症候性感染にどのような影響を与えるかも分かっていません。だからこそ、ワクチン接種後も予防措置を継続することが重要です。自分だけでなく、他の人へのリスクも考えて判断する必要があるのはそのためです。
ワクチン接種後は、薬局や食料品スーパーなどの場所に行くのも以前より安心になります。また、職種によってどうしてもリモートワークができない仕事をされている方々にとって、職場行くのがより安全に感じることになるでしょう。また、レストランで屋内で食事をする時のリスクも減るでしょう。一方で、もし予防接種を受けていない場合、自分たちだけでなく、レストランのスタッフや他の客を危険にさらす可能性があることも事実です。
家族や友人の多くが予防接種を受けるようになれば、人付き合いを再開することができます。訪問する側もされる側も全員がワクチンを接種した方がずっと安全です。ただし、念の為、屋外や窓を開けた室内で会う方が良いかもしれません。予防接種を受けていない友人や家族に会う予定がある場合は、外で会うようにしましょう。それができない場合は、集まる10~14日前に隔離するか、集まる1~3日前に検査を受けるのが良いでしょう。
今のところ、映画館やモールなどの広い屋内は避けた方がいいでしょう。また、まだ飛行機に乗るのもやめたほうがいいでしょう。
ワクチンを接種したらすぐにパンデミック前の生活に戻りたくなるかもしれませんが、我慢してください。ゆっくりと、しかし確実に、私たちはパンデミック前の状態に戻って行きます。
【ワクチンを子供たちが接種できるようになるのはいつでしょうか?】
米国内ではファイザー/バイオンテック社とモデルナ社はすでに子どもたちを対象としたワクチンの試験を行っており、ジョンソン・エンド・ジョンソンも同様の試験を行う予定です。現在、ファイザー/バイオンテックのCOVID-19ワクチンは16歳以上の子供への使用が認可されていますが、モデルナとジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは18歳以上の人への使用が認可されています。
ファイザー/バイオンテックとモデルナは、年齢の低い子供たちのグループでワクチンを試験する年齢解除試験を実施しています。ファイザー/バイオンテックは現在、12歳から15歳までの子供たちを対象にワクチンの試験を行っており、順調にいけば、次は5歳から11歳までの子供たちを対象としたワクチン試験が行われる予定です。モデルナは12歳から17歳までの子供たちを対象にワクチンの試験を開始しています。最終的には生後6ヶ月の子供を対象としたワクチン試験を計画しています。研究者たちにとって、各年齢層に対してワクチンが安全で効果的であることを確認することが最重要です。また、効果的でありつつ、許容可能な副作用と最適な投与量の判断も重要です。FDAは、各年齢層のワクチンを認可するかどうかを決定するためにこういった試験データを確認していきます。
ちなみに、年齢解除試験は成人試験よりも規模が小さいです。数万人の参加者を募集するのではなく、各年齢層で2,000人から3,000人の参加者を募集して行われます。年齢解除試験からのデータは夏までにまとまる可能性があります。それを元に、FDA は子供のためのワクチンの承認を開始する可能性があります。まずは米国ですが、こういった流れを日本も追う形になるかと思います。
【米国で発生したCOVID-19の変異種について教えてください】
新しいウイルスの変異種は常に発生していますが、これはウイルスが複製される際に生じたミスや突然変異の結果です。米国ではSARS-CoV-2(COVID-19)ウイルスの2つの新しい変異体が出現しましたが、1つはニューヨークで発生したもので、もう1つはカリフォルニアで発生したものです。これらは、他のウイルスよりも伝染性が高く、ワクチンや過去の感染によって発生した免疫反応に対して脆弱性が低いことを示す初期の証拠のため、「懸念される変異種」であると考えられています。
B.1.526と呼ばれるニューヨークの変異型には2つのバージョンの変異ウイルスがあります。1つのバージョンはE484Kという突然変異を持っています。この変異は南アフリカ(B.1.351)とブラジル(P.1)の変異体にも見られ、いくつかの研究でE484変異体を含む変異体はワクチンのが効きにくいことが示されています。もう一つのバージョンの変異体はスパイクタンパク質に変異があり、これはウイルスがヒト細胞に結合する強さに影響を与える可能性があります。
カリフォルニア州の変異型はB.1.427/B.1.429と呼ばれ、現在カリフォルニア州ではこれが優勢な変異型となっています。科学者たちは、この変異型に感染した人の鼻の中のウイルス粒子の数が2倍になることを確認しています。ウイルス粒子が多いと、拡散される率も高くなります。
新しい変異型が出るたびに、いくつかの懸念が出てきます。より感染力が強いのか?ワクチンの効果は低くなるのか?すでに別の変異体に感染していた人に再感染することはないのか?これらの疑問はすべて解決されているわけではありませんが、マスクの着用、物理的な距離の取り方、人ごみを避けること、そしてワクチン接種を受けることが、自分自身と他の人を守るための最善の方法であることは分かっています。
一方で、良いニュースもあります。ウイルスはスパイクタンパクをヒトのACE2というタンパク質に結合させることで感染しますが、ワクチンを打つとウイルスのスパイクタンパクに対する抗体ができます。ウイルスがこの抗体の監視から免れるためには、スパイクタンパクを変異させる必要があります。
しかし同時に、ヒトACE2タンパク質に結合する能力を失わないようにしながら抗体を回避しなければなりません。例えたら、ウイルスのスパイクプロテインが鍵で、ACE2が鍵穴で、抗体はその鍵を破壊する工具といったところです。抗体に破壊されないように鍵の形を変えてしまうと、鍵穴に合わなくなるということが起きるのです。鍵穴に合う形を維持しながら、抗体にみつからないようにしないとウイルスは感染できなくなります。そしてウイルスがそれを実現するにはかなりのピンポイントで難しいのです。
従って、いくつかの変異が見られている一方で、ウイルスは好き放題に変異をして次から次へとスーパーウイルスになることが出来るというわけではありません。一方で、我々もmRNAワクチンを定期的にアップデートする必要も出てくるでしょう。mRNAワクチンはこのアップデートは迅速にできるのが特徴なのと、バイオテック企業や製薬会社もmRNAワクチンの生産は一度経験済みのプロセスなので、今後のアップデートは初期の開発時よりも短時間で行うことが可能で、迅速に治験まで運ぶことができるだろうと予想できます。
ということで、コロナワクチンに対するいくつかの疑問が解消され、みなさんの判断基準の参考になれば幸いです。なにか疑問があったら質問コーナーにどうぞお便り下さい。
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