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Duality Labsはハードウェアアクセラレーション利用の準同型暗号テクノロジーで15.3億円のDARPA契約を獲得

現在、AIに適切な学習をさせることはテクノロジービジネスにとって不可欠の要素だが、そのために個人情報等を含む大量データを処理することには本質的に危険がつきまとう。米国防省のDARPA(国防高等研究計画局)がDuality Labsと1450万ドル(約15億3000万円)の調達契約を結んだのはデータを復号化せず、暗号化されたまま大量のデータを処理する新しいハードウェアアクセラレーションを開発しようと考えているためだ。

Dualityは完全準同型暗号化を採用したシステムを提供している。技術的な詳細に踏み込むことは避けるが、現在の暗号化手法の大きな問題点は、暗号化されたデータはまったく読み取れなくなることだ。読み取れなくすることがそもそも暗号化の目的だから当然だが、復号化鍵がない限り暗号化されたデータは無意味なノイズとなってしまう。大規模なデータセットをAI学習のために復号化すると膨大な処理コストがかかる。さらに平文は、外部のハッカーからの攻撃その他の悪用の危険に対して脆弱になる。

ただしデータを復号化せずにAI学習や分析のための処理ができるようにする方法がいくつか存在する。その1つが完全準同型暗号化(FHE)だ。ところがFHEは、通常の暗号化よりもさらに計算量が多くなる。このためギガバイト、テラバイト級の大きなデータが必要なアプリケーションではFHEは利用できなかった。同様の目的を達成する方法は他にもあるが、FHEが突然10倍も効率化されれば大変な朗報だ。

当然DARPAもこの分野に強い興味を抱いているが、暗号化分野の他の企業や組織に比べて桁違いに資金が豊富だ。今回の調達契約は、DPRIVE(仮想環境でのデータ保護)と呼ばれる広範な取り組みの一部だ。FHEを10倍からそれ以上高速に実行できるASICチップ(コードネーム「TREBUCHET」)を開発するという目標が発表されている。

Dualityチームは南カリフォルニア大学、ニューヨーク大学、カーネギーメロン大学、ドレクセル大学およびSpiralGen、TwoSix Labから人材を集めており、 この分野での経験も長い。実際、以前にもDARPAと協力したことがあり、熟知した領域だという。

Duality Labsのディレクターで主席研究員のDavid Bruce Cousins(デビッド・ブルース・カズンズ)氏はプレスリリースで次のように述べている。

Dualityは過去10年以上にわたってDARPAが資金提供するFHEの革新と応用に協力してきました。我々のメンバーは2010年にはDARPAのPROCEEDプログラムにおいて最初の準同型暗号化シのためのハードウェアアクセラレータのプロトタイプを開発しています。また2015年にはDARPAのSAFEWAREプログラムで最初に開発されたPALISADEオープンソースFHEライブラリの開発責任者でした。

ご覧のとおりDualityとDARPA頭字語には不足していないようだ。

開発、実用化のスケジュールは今のところ明確ではないが、完全準同型暗号処理の高速化はAIの利用に影響するところが極めて大きい画期的なテクノロジーであることを考えると、なんらかの結果が出るには少なくとも2、3年はかかると思われる。

カテゴリー:人工知能・AIタグ:Duality Labs、DARPA、機械学習、暗号化、資金調達



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