5Gはワイヤレス技術の現在進行形の革命だ。新旧のすべてのチップ会社がこの非常に競争の激しい、しかし非常に儲かる市場に参入しようとしている。この分野で最も興味深い新しいプレイヤーの1つがEdgeQ(エッジキュー)だ。同社は、Qualcomm(クアルコム)にルーツを持ち、強力な技術的血統を有するスタートアップで、2020年にシリーズAで約4000万ドル(約42億円)を調達した後にTechCrunchでも取り上げた。
同社がデザインに取り組んでいる間、テクノロジーに関しては謎に包まれていたが(筆者がこの記事を書いているとき、同社のウェブサイトには文字通り「WordPressへようこそ。これは最初の投稿です。編集または削除してから書き始めてください!」と書かれていた)、同社は米国時間1月26日、初めてその詳細を明らかにした(そして会社のウェブサイトも更新した)。
システムオンチップ(SoC)設計の最も興味深い点は、RISC-Vに基づいていることだ。x86やArmのようなプロセッサアーキテクチャとは異なり、RISC-Vはオープンソースであり、あらゆる種類の永続的な人気とエコシステムに到達した最初のオープンアーキテクチャの1つだ。EdgeQやTechCrunchが2020年末に取り上げたSiFiveなど、多数の新しい企業がRISC-Vで開発している。
EdgeQの創業者でCEOを務めるVinay Ravuri(ビネイ・ラブリ)氏は、EdgeQがRISC-Vを利用することによりFPGAと呼ばれる再プログラム可能なプロセッサの柔軟性を備えたチップを提供できると同時に、より優れた省電力を備えた、よりまとまりのある統合製品を提供できると説明した。同氏の見解では、これは5Gの展開にともなう、これまでの無線通信市場における大きな課題の1つだった。
同氏は「クローズドシステムを使用すればコンパクトになり、すべてが上手くはまります」と述べ、垂直統合型の基地局を世界中に広く展開しているHuawei(ファーウェイ)やEricsson(エリクソン)などのマーケットリーダーを指した。問題は、すべての機器を特定のベンダーから調達すると、代わりがきかないため顧客が不安を感じることだ。一方、OpenRANのような標準に基づく純粋にオープンなシステムから得られるのは、既製の部品からつぎはぎで作った「不格好なソリューションです」。ボックス内のコンポーネントは一緒に使用する目的で設計されていないため、消費電力の増加につながってしまう。
ラブリ氏によると、EdgeQはオープンとクローズドの中間に位置する。統合され、場合によっては、無線基地局の電力需要を最大50%節約できる拡張可能なシステムを提供している。重要なのは、より優れたSoCを介して機械学習をワイヤレス通信に組み合わせ、すべての部分をシームレスに連携させることだ。「通信チップの独自性はアルゴリズムにあります」と同氏は言う。「砂を売っているわけではありませんし、ただゲートを繋げてこれがプロセッサだというわけでもありません。ゲートを繋げるとともに、物理的な通信レイヤー向けのアルゴリズムがあるわけです」。
EdgeQのVP兼製品責任者であるAdil Kidwai(アディル・キドワイ)氏は、次のように述べた。「内部でハードウェアへの命令をソフトウェアが制御します。これは消費電力が非常に少ない『ソフト』モデムです」。EdgeQはRISC-Vを基盤としているため、そのエコシステムで利用可能な既存のツールチェーンは会社の製品にも使われ、エンジニアはRISC-V用に開発されたコンパイラとデバッガが使える。ラブリ氏は、EdgeQがパフォーマンスを最適化するためにベースRISC-V実装に約50~100の独自のベクトル拡張を追加したと述べた。
製品の設計がしっかりと確立されたことで、同社は2021年前半に顧客と一緒にシステムを試してみる予定だとキドワイ氏は語った。「顧客の製品化サイクルに合わせてサンプルを取ります」と同氏は述べた。そして2022年までに収益を計上し始めたいとのことだ。EdgeQの基地局は、OpenRANオプション7.xおよびオプション6と互換性がある。
同社はまた、Qualcommの元CEOであるPaul Jacobs(ポール・ジェイコブズ)氏と同社の元CTOであるMatt Grob(マット・グロブ)氏の両方が公式の立場でEdgeQの諮問委員会に加わったことにも本日初めて言及した。2人はQualcommにいたときにラブリ氏に会い、EdgeQの開発を通じて連絡を取り合っていた。