手のひらサイズの超小型スマートフォン「Jelly 2」はクラウドファンディングで資金調達を行ない、最近になって日本の消費者にも届き始めています。ミニサイズスマートフォンといえば数年前から中国では無名メーカーがこぞって様々な製品を出していました。小さいスマートフォンならコストも低いため一定の需要があると考えたわけです。しかし、シャオミのRedmiなど大手メーカーが格安端末を出すようになると価格では太刀打ちできなくなり、さらに品質が悪く使いにくいことから、今ではほとんど見かけなくなってしまいました。
同様に中国では無名メーカーがクレジットカード型の薄型携帯電話を山のように販売していました。スマートフォン全盛時代でもカードサイズなら通話用としてサイフに入れておくこともできますし、ディスプレーもバッテリーも小さいためコストが安く、1000円程度の製品も出てきたのです。しかし、この手の製品も「スマホだけあれば十分」な時代になると一気に廃れてしまいました。
それでもまだ数社がクレジットカード型携帯電話を販売しています。しかも本体デザインを見ると、数年前に作った在庫品を今でも売っているのではなく、最近になって開発された製品なのです。ニッチの中でもさらにニッチなカード型ケータイの最新モデル、残念ながら2G(GSM)のみ対応なので日本では使えませんが、他のスマートフォンと一緒に持ち歩きたくなるデザインをしています。
Atmanというメーカーの「V3」、背面デザインはどう見てもiPhone 11/12を意識していますね。本体サイズは約54×95×10mm、最薄部は6mmで重量は30gしかありません。カードと変わらぬ大きさですし、カメラ部分を出してポケットに入れてたら「あれ、iPhoneかな?」と見間違うかもしれません。バッテリー容量は不明ですが、GSMしか使えませんから数日は十分使えるでしょう。
ディスプレーは1.8型で数行表示が可能。こんな低スペックなケータイにカメラが3つも搭載されているとは考えにくいのですが、スペックを見るとカメラについての記述は一切ありません。ということはこのiPhoneっぽいカメラ部分はただの飾り、ということになります。一応LEDライトは内蔵しているので、暗闇でライトとしては使えるみたいです。価格は99元で売られているようで、約1600円。3G対応なら先進国あたりで売れそうですが、そもそもこのデザインはアウト。中国でもはたして売れているのでしょうか?
もう1つ見かけた製品はDoovというメーカーの「V9」。Doovは中国で女性向けスマートフォンを出している中小メーカーですが、このV9に関する情報はなし。無名メーカーが勝手にDoovの名前を付けているのか、こんな中小メーカーでもブランド供与して製品を出しているのか。いずれにせよこちらのカード型ケータイはちょっと期待できそうな製品なのです。
中国の大手ECサイトの大手家電量販店でも販売されているので、カメラが使えることを信じたいもの。しかし40を超す購入者レビューを見ても、誰もカメラについての感想を書いていません。中国のECサイトは写真入りのレビューが多く、やらせは少ないので信用できるのですが、V9を買う人たちはスマートフォンも持っており、通話のできるカードケータイとしてV9を入手しているのでしょう。V9のカメラを使う人はいないんでしょうね。
そういえば2018年にドコモから電子ペーパーディスプレーを搭載したカード型ケータイ「KY-01L」が発売になりましたが、積極的に活用されたとは言い難いようです。サブ用途やスマートフォンと連携できる小型のケータイというものは、残念ながら需要は少ないのが実情なのでしょう。
KaiOSあたりを搭載してSNSのタイムラインだけを表示するカード型ケータイ、なんてものがあったら面白そうなんですけどね。スマートフォンのサブ用途に使える次世代カード型ケータイやカード型スマートフォンが出てくることに期待しましょう。長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!
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