コンテンツモデレーションを行わないことを信条としているSNSアプリの「Parler」が、AWSにウェブホスティングを停止されたことでインターネット上から追い出されることになったとしてAmazonを訴えました。
2016年のアメリカ大統領選挙では選挙に関する誤報がSNS上で大量に拡散され、これが選挙結果に大きく影響を与えました。そのため、2020年のアメリカ大統領選挙の際には、各SNSが選挙に関する誤報を削除するためにコンテンツモデレーションに注力。SNSによるコンテンツモデレーションにより大きな影響を受けたのは、過激な発言を続けるトランプ陣営で、トランプ大統領の投稿は度々「問題のある投稿」として警告されることとなりました。
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その中で注目が集まったのが、コンテンツモデレーションを行わないSNSアプリのParler。Twitterなどではコンテンツモデレーションの対象となってしまう過激な投稿を行うトランプ大統領の支持者が、Parlerに殺到することとなります。
しかし、現地時間の2021年1月6日にトランプ大統領の支持者がアメリカの連邦議会議事堂を襲撃する事件が起こったため、事態は急変することとなります。連邦議会議事堂襲撃事件に関するコンテンツを各SNSが削除する中、Parlerは削除せずに放置したため、AppleやGoogleは公式のガイドラインに抵触するとして、App StoreやGoogle Playといったアプリストア上からParlerアプリを削除しました。
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これに続く形で、AWSのウェブホスティングサービスからParlerを排除するとAmazonが発表。Amazonの決定について、Parlerのジョン・メッツCEOは「サービスをゼロから再構築するため」にサービスが最大1週間程度オフラインになる可能性があると発表しています。
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その後、ウェブホスティングに関する契約を一方的に終了したとして、ParlerはAmazonを訴えました。Parlerは「AmazonはParlerがTwitterと競合するのを阻止するために我々との関係を断ち切った」と主張しており、裁判所に対して「AmazonがParlerのAWSアカウントをシャットダウンすることを阻止すること」を求めています。
AmazonのモデレーションチームはParlerがポリシー違反を繰り返していると主張しており、実際に電子メールで「Parler上に投稿されている暴力を扇動するような問題のある投稿98件」をParler側に提出しています。また、Amazonは「他人に対する暴力を助長あるいは扇動するようなコンテンツを効果的に特定し、削除できない顧客にサービスを提供することはできません」と公に述べました。
AWSは世界最大のクラウドサービスプロバイダーであり、市場の約3分の1を占めています。Parlerは「AWSから排除されたものの、別のウェブホスティングサービスを見つけることはできなかった」として、Amazonによる排除を「死の宣告だった」と主張しました。また、2020年にAmazonがTwitterとAWSの利用に関する複数年契約を結んだことを挙げ、「AmazonがTwitterを保護しようとした」とも主張しています。
海外メディアのThe Vergeは「民間企業であるAmazonは一部の顧客をシャットダウンするための幅広い法的自由度を有しており、Parlerが新しいホスティングサービスを見つけることができなかったことに対して責任を持つ必要があるわけではありません」と記しています。