ほとんどの電化製品は、世界の工場とも呼ばれる中国で作られているという認識がすっかり定着しました。でも、そこで働く人々は、どのような労働環境なのか? これまでも度々その過酷な条件での製造過程が批判されてきましたよね。少しでも低価格で製品を販売するためには、どれだけ低コストで作り出せるかが重要視されがちですけど、倫理にもとる従業員の酷使などは、当然ながらどの国であっても避けられねばなりません。
しかしながら、このほどWashington Postは、Appleのサプライヤーとして知られるLens Technologyが、中国の新疆ウイグル自治区で弾圧を受け強制収容所に送られた数千人規模のイスラム系少数民族を不当に働かせて、その製造を進めてきたと非難する糾弾レポートを発表しました。同レポートの基になった調査は、Tech Transparency Projectによって進められ、強制労働の一環でLens Technologyが弾圧された人々を工場で受け入れ、Apple製品の製造ラインに用いられてきたことが批判されていますよ!
我々が進めた調査を通じて、Appleがサプライチェーンにおいて、強制収容された人々を活用してきたことが、Appleも把握していない規模でなされていることが明るみとなった。
Tech Transparency Projectにおいて、同調査プロジェクトを率いたKatie Paul氏は、このような声明を出しています。なお、今回のレポートではApple製品の製造過程での非人道的な行為が非難されていますけど、Lens TechnologyはほかにもAmazonやMotorola、Tesla(テスラ)などのビッグブランドのサプライヤーとしても広く知られています。
(労働環境をめぐる)ポリシー違反があった場合には、即座に対応を取っており、契約の打ち切りも含まれています。すべての人が尊厳をもって扱われることこそ、当社が常に重視している点で、今後もサプライチェーンの全労働者を保護するため、最善を尽くしていきます。
今回の報道を受けて、Apple広報担当者のJosh Rosenstock氏はこのようにコメントし、Apple製品の製造にかかわるLens Technologyを含む全サプライヤーが、新疆ウイグル自治区から強制収容者を受け入れたことなどないと改めて強調しました。劣悪な労働条件を強いていないか、抜き打ちの監査まで定期的に実施して、サプライヤーの労働環境整備を徹底していると説明されていますね。
また、ただちに中国の外務省も今回の報道のような事実は一切ないと断言しています。新疆ウイグル自治区などから、別の地方の工場へ送られた労働者たちについては、貧困解消を目的とするトレーニングプログラムの一環に過ぎないとの説明が付されたんだとか。しかしながら、今回の調査レポートでは、そもそも住み慣れた故郷から別の地域へ送られるにあたって、当事者に選択の余地はなく強制的に工場へ連れて行かれて働かされていると指摘されていました。
同自治区で進むとされる少数民族の弾圧への関与をめぐっては、米国政府が名指しで自由な貿易を禁じる主な理由にも挙がっているため、今回の指摘が事実であれば、Appleにとっては大変なスキャンダルとなってしまいます。いまAppleは、中国以外の拠点でも同社製品の製造ラインの確立を目指してはいますが、今後も中国離れの流れが加速していくのかもしれませんよね。