新型コロナウイルス変異種の流行により、イギリスでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者が連日5万人を超え、南アフリカでは総感染者数が100万人を突破しています。「既存のワクチンは変異種には効かない可能性がある」と複数の専門家が主張する中、南アフリカの変異種の特定を主導したリチャード・レッセル氏が「変異種に既存のワクチンが効かない可能性は低い」と発言しました。
新型コロナウイルス変異種は多数確認されており、その中でも「感染力が強い」とされる南アフリカで発見された「501.V2」とイギリス南部で発見された「B.1.1.7」が特に猛威を振るっています。これらの変異種について、レティング大学のサイモン・クラーク准教授やウォーリック大学のローレンス・ヤング教授などの複数の専門家が「既存のワクチンが効かない可能性がある」という懸念を発表しており、イギリスのマット・ハンコック保健大臣が「変異種について非常に強く懸念している」と、同様の懸念を述べていました。
強力な変異種についてのワクチンの有効性について疑問が持たれている中、501.V2の特定について中心的な役割を担ったクワズールー・ナタール研究イノベーション・シーケンシング・プラットフォームのリチャード・レッセルズ氏が「変異種に既存のワクチンが効かない可能性は低い」と明言しました。
レッセルズ氏は、501.V2には中和抗体の産生に関わる部位に変異が生じているため、ワクチンの効果にある程度影響する可能性があるものの、既存のワクチンは幅広い免疫反応を誘発することでウイルスの複数の部位に効力を発揮することから、既存のワクチンを完全に無効化する可能性は非常に低いと解説。2020年1月第2週の末には予備調査の結果を発表できるだろうと語りました。
世界保健機関の健康緊急事態担当エグゼクティブディレクターであるマイク・ライアン氏と新興感染症課責任者のマリア・ヴァンケル・ホーブ氏は「変異種はウイルスの感染方法自体に変化はなく、現行のワクチンが効かないという兆候はありません。これは非常に良いニュースです」と発言。ファイザーと共同で新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」を開発したBioNTechは「変異種向けに調整したワクチンは6週間以内に完成させられるだろう」と発表しています。