Ryzen 5000シリーズを試す 性能編 - Ryzen 9 5900XとRyzen 7 5800X
Ryzen 7 5800XとRyzen 9 5900Xの性能レビューから年をまたいでしまって恐縮だが、やっと記事をまとめ終わったのでご紹介したい(*1)。
まず簡単に製品紹介など。Ryzen 7 5800XとRyzen 9 5900Xは既にご紹介したので、残るはRyzen 5 5600XとRyzen 9 5950Xのみである(Photo01~07)。どちらもWindows環境では問題なく認識された(Photo08~13)。
○今回のテスト環境
テスト環境は表1に示す通りである。基本的には以前のレポートと同じである。BIOSに関しても、Radeon RX 6000シリーズの評価「前」にテストを行った関係で、Version 2311である。
今回紹介するテストも以前のレポートと全く一緒で、単にRyzen 5 3600XT/5600X、Ryzen 9 3950X/5950Xを追加しただけである。なのでベンチマーク類のバージョンも全く同一であり、テスト手順も変更がない。それもあり、今回はテスト手順などは割愛させていただく。
グラフ中の表記であるが
3600XT:Ryzen 5 3600XT
3800XT:Ryzen 7 3800XT
3900XT:Ryzen 9 3900XT
3950X :Ryzen 9 3950X
5600X :Ryzen 5 5600X
5800X :Ryzen 7 5800X
5900X :Ryzen 9 5900X
5950X :Ryzen 9 5950X
10900K:Core i9-10900K
としている。また解像度表記は何時ものごとく
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただく。
(*1) 言うまでもなくRadeon RX 6800シリーズ、次いでRadeon RX 6900 XTを先行した結果である。
○◆PCMark 10 v2.1.2506(グラフ1~6)
PCMark 10 v2.1.2506
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
Overall(グラフ1)で言えば、勿論Ryzen 9 5950Xが最高速なのは当然だが、Ryzen 5 5600XですらRyzen 5 3000シリーズのどの製品よりも高速(PCMark10 Applicationですらそう)というのがなかなか衝撃的である。Test Group(グラフ2)を見ると、例えばDigital Contents CreationとかではRyzen 5 5600XはRyzen 9 3900Xにやや劣る程度であるが、EssentialsやProductivityで大きな差をつけているのが判る。そのEssentials(グラフ3)やProductivity(グラフ4)では、明らかにRyzen 5000シリーズがRyzen 3000シリーズを上回る性能を発揮している事が見て取れる。例外はDigital Contents Creations(グラフ5)で、Photo EditingとかRendering&Visualizationではコアの数に比例した性能という感じになっているが、Video Editingでは再びRyzen 5 5600XがRyzen 3000シリーズを上回っているあたり、Single Thread性能の高さが改めて再確認できた形だ。ちなみにRyzen 5 5600Xばかり取り上げたが、Ryzen 9 5950Xは文句なくハイエンドの性能を叩きだしている。
こうした傾向はOffice 365を利用したApplication(グラフ6)でも明確になっており、比較的コアの数が効きやすいExcelの結果ですら、Ryzen 7 3800X/Ryzen 9 3900Xを凌ぎ、Core i9-10900Kとほぼ並んでいるあたり、圧倒的と言える。
○◆CineBench R20(グラフ7)
CineBench R20
Maxon
https://www.maxon.net/
お約束のCineBench。Ryzen 9 5900Xではこれが再現できなかったとご紹介したが、Ryzen 9 5950Xは633で若干ではあるが上回るスコアを出しており、AMDのスコアはおそらく何回かトライした中のBest Scoreだったのだろうとは思うにしても、まぁそれほど誇張ではない性能の伸びが実現されている事が再確認できた。All Thereadsだともうコアの数がモロに効いてくるのであれだが、悪くないスコアだと思う。それと、All ThreadsではついにRyzen 9 5950Xが10000オーバーというのもすさまじい。
○◆POV-Ray V3.7.1 Beta9(グラフ8)
POV-Ray V3.7.1 Beta9
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/
ほぼグラフ7と同じ傾向のPOV-Ray。Core i9-10900Kが高めなのは、Core i9-10900Kだけが"avx2fma3-intel"を利用している事に関係しており、そのあたりを割り引いて考えればほぼグラフ7と同じ傾向と考えて良いと思う。
それはともかく、One Threadでの性能を見ると、Ryzen 3000シリーズとRyzen 5000シリーズの性能の差が明確になっていると思う。Ryzen 9 5950Xでは620pps以上の性能を達成しているのは流石としか言いようがない。
●TMPGEnc / DxO PhotoLab / 3DMark
○◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.17.19(グラフ9)
TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.17.19
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html
前回のレポートでは「16コアのRyzen 9 5950Xなら30fpsは無理にしても25fps近くが期待できることになる」と書いたが、そこまではいかずに23.6fps程度にとどまったのはちょっと残念である。
とはいえ絶対的なRyzen 9 5950Xの性能の高さは明白で、Core i9-10900Kに対しても大きく上回る。Ryzen 5 5600Xの方は、確かにRyzen 5 3600XTよりは明確に性能が伸びてはいるが、Ryzen 7 3800XTには及ばない程度でしかない。コア数が効くアプリケーションでは、やはり6コアであることが露骨に響く事が見て取れる。
○◆DxO PhotoLab 3 V3.3.0.4391(グラフ10・11)
DxO PhotoLab 3 V3.3.0.4391
DxO Labs
https://www.dxo.com/ja/dxo-photolab/
まずグラフ10がα7-IIのRAW現像であるが、今回からノイズ処理を加えた事もあってか、Ryzen 9 5950Xでもピークで6.09ppmとあまり伸びない印象である。勿論Core i9-10900Kよりはずっと高速なのだが、こうした現像ではOpenCLのアクセラレータを併用するか、CPUだけでやるならThreadRipper系を導入するか、という感じである。
より画素数が多いα7R IVの結果がグラフ11で、ピークでも3.56ppm。つまり1枚の現像に17秒弱かかる計算になる。これが遅いと思うか早いと思うかはユーザー次第だが、α7R IVを使うようなユーザーであればハイアマチュアもしくはプロであって、撮影枚数もそれなりに多いと考えると、やはりもうちょっと何とかしたいところではある。もっともこれはCPUの評価とは関係ない話であって、純粋にCPUの性能という意味では明確にRyzen 5000シリーズの優位性が際立つ。Ryzen 9 5900XとRyzen 9 5950Xの差は全体的に結構あり、やはり4コアのアップがこうした用途では効果的であることを物語っている。
○◆3DMark v2.14.7042(グラフ12~15)
3DMark v2.14.7042
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
最新バージョンから大分外れてしまったとか、12月16日にSky Diverがサポート対象外になったとか、色々そぐわない感はある3DMarkの結果であるが、今回はGPUの評価ではなくCPUの評価なのでご容赦いただきたい。
さてその結果であるが、Overall(グラフ12)を見るとSkyDiverでは妙に暴れる一方、Night Raideでは妙な偏りがあるといった、負荷が軽いところではやや不思議な状況になる一方、FireStrike以上になるとGPU負荷がメインになるためか、概ね大差ないという分かりやすい傾向が出ている。
もっともGraphics Test(グラフ13)を見ると、このレベルで暴れているのはNightRaidだけで、後はほぼ変わらずといった形。その分Physics/CPU Test(グラフ14)はCPU性能がモロに出ている格好だ。ここではRyzen 9 5950Xが「ほぼ」最高速である。ほぼ、というのはTimeSpyの様になぜかCore i9-10900Kが最高速というケースもあるからで、ただTimeSpy Extremeではそこまで性能が出ないあたりは、実質的にはRyzen 9 5950Xが最高速として良いかと思う。逆にRyzen 5 5600Xの性能が振るわないのがちょっと気になるところだ。
Combined Test(グラフ15)を見るとちゃんとRyzen 5 5600Xの性能が出ているあたりは、純粋にテスト側の問題なのかもしれない。
●ゲームその1:Borderlands 3 / F1 2020 / FF XV / Horizon Zero Dawn
○◆Borderlands 3(グラフ16~22)
Borderlands 3
2K Games
https://borderlands.com/ja-JP/
2.5K以降ではあまり変わらない(なぜか3K/4KでRyzen 9 3900Xが妙に高いフレームレートなのは例外と考えてほしい)Borderlands 3であるが、その2Kの平均フレームレート(グラフ16)で見ると、Ryzen 3000シリーズとRyzen 5000シリーズで綺麗に性能が分かれ、その下にCore i9-10900Kが居るという構図である。これは最大フレームレート(グラフ17)でもほぼ同じだが、むしろ最小フレームレート(グラフ18)の2Kが一番CPU性能を示すいい結果になっている気もする。
フレームレート変動も、2K(グラフ19)のみはっきりRyzen 3000系とRyzen 5000系が分かれているが、2.5K以上はGPUがネックになるためか、両者はほぼ融合しており、Core i9-10900Kのみがその下に分離しているという、これはこれでわかりやすい構図だ。
○◆F1 2020(グラフ23~29)
F1 2020
Codemasters
http://www.codemasters.com/game/f1-2020/
最初にお断りしておくと、筆者の手違いでRyzen 9 3950Xの4Kのみデータを取り損なっていたので、これのみデータなしである(別に動作しなかったわけではなく、4Kのつもりでデータを取っていたら、実は3Kだったというオチである)。まぁ大勢に影響はないと思うのでご了承いただきたい。
こちらも2K以外は概ね一緒という傾向であるが、その2K。最大フレームレート(グラフ23)が一番判りやすいかと思うが、Ryzen 3000シリーズとRyzen 5000シリーズが綺麗に分離しているのが判る。ちなみに絶対性能という意味では、Ryzen 7 5800が最高速で、Ryzen 9 5950Xですらやや及ばないが、そのRyzen 9 5950XとRyzen 5 5600Xがほぼ同じフレームレート、というのは色々考えさせられるものがある。
もっともフレームレート変動(グラフ26~29)を見る限りでは、そこまで明確には差が付いていないともいえるのだが。
○◆FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク Version 1.2(グラフ30~36)
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク Version 1.2
SQUARE ENIX
http://benchmark.finalfantasyxv.com/jp/
Radeon RX 6900 XTのレビューの時も書いたが、OCATで取った平均フレームレートとベンチマークのOfficial Scoreの間には非常に良い相関関係がみられる。実際Scoreを平均フレームレートで割った係数は、98.83~100.68の間に収まっており、平均を取ると99.4ほど。つまりこれまで示してきたOfficial Scoreを99.4で割ると、大体の平均フレームレートが出てくる計算だ。まぁざっくりOfficial Scoreの100分の1の値が平均フレームレートとして良いかと思う。
そんな訳でOfficial Score(グラフ30)を見ると、多少バラつきはあるものの、概ねRyzen 3000シリーズとRyzen 5000シリーズではそれなりに性能差があり、ほぼCore i9-10900Kと伍する性能になっている。平均フレームレート(グラフ31)も同様だ。なぜか最高速はRyzen 9 5950XではなくRyzen 9 5900Xではあるが。この性能の違いは、最大フレームレート(グラフ32)で明確であり、Ryzen 5 5600Xも2Kでは250fps超えをだしている。
もっともフレームレート変動(グラフ34~36)を見ると、そこまで差が明確ではない、という感じは受けるが、これはGeForce RTX 3080を使っているからという話でもあって、もう少し性能の低いGPUだとまた傾向は変わるかもしれないが。
○◆Horizon Zero Dawn(グラフ37~43)
Horizon Zero Dawn
SIE
https://www.jp.playstation.com/games/horizon-zero-dawn/
設定方法はこちらのHorizon Zero Dawnの項に準じる。今回もクオリティ優先で測定を行った。
平均フレームレート(グラフ37)がほぼCPU性能で決まる傾向にあるこのベンチ、実際にRyzen 9 5950Xがトップだし、Ryzen 5 5600XですらCore i9-10900Kを凌いでいるのは立派である。実際Ryzen 3000系とは少なくない差がある。Ryzen 5 3600XT vs Ryzen 5 5600X、Ryzen 9 3950X vs Ryzen 9 5950X、どちらも2Kで40fps、2.5Kでも30fps以上もの差があるからだ。
最大/最小フレームレート(グラフ38・39)はあてにならないので無視するとして、2Kのフレームレート変動(グラフ40)ではちょっと見にくいが明確に性能差が出ている。2.5K(グラフ41)でも、100~120秒とか160~180秒付近はその差がはっきりあるのが判るし、20~60秒あたりもRyzen 3000シリーズとRyzen 5000シリーズでグラフが分離しているのが判ると思う。3K/4K(グラフ42・43)だともう少し差が縮まるが、それでも確実に性能差がある事はここでも見て取れる。
●ゲームその2:Metro Exodus / RDR2 / Division 2 / Tomb Raider
○◆Metro Exodus(グラフ44~50)
Metro Exodus
4A Games
https://www.metrothegame.com/
前回も書いたが、今回唯一Core i9-10900Kが最高速だったゲームがこちら。平均フレームレート(グラフ44)で見ると、全解像度でCore i9-10900Kがフレームレート最高になっている。これに続くのはRyzen 9 5950XではなくRyzen 9 5900Xというのがちょっとアレだが、ただ差の絶対値はそう大きくないのがRyzen系にとって救いではある。最大/最小フレームレート(グラフ45・46)は適当にばらけている感じで、2Kの時以外は大きな差はみられない。強いて言えば、グラフ46で3Kの所でもう一度分離するのがちょっと面白いが、なぜかここではRyzen 5 5600Xが下側のグループに入ってしまっている。
フレームレート変動で見ると、2K(グラフ47)が一番わかりやすい。Ryzen 3000系とRyzen 5000系+Core i9-10900Kの2つに綺麗にグラフが分離しているからだ。逆に言えばRyzen 5000系の中での差は非常に少ない、と見做して良いと思う。2.5K~4Kに関しては、もうGPUネックなのか、CPUの違いによる差が殆ど見られない。
○◆Red Dead Redemption 2(グラフ51~57)
Red Dead Redemption 2
Rockstar Games
https://www.rockstargames.com/jp/games/info/reddeadredemption2
CPUの性能差が殆ど出ていない例がこちら。平均フレームレート(グラフ51)で見ると、辛うじて2KではRyzen系がCore i9-10900Kを凌いでいるのだが、それ以上になると差はあるとは言え、大きなものではないし、Ryzen同士の性能差も殆どあって無いが如し。
最大/最小フレームレート(グラフ52・53)はこれも暴れていて参考にならないので無視するとして、ではフレームレート変動(グラフ54~57)は? というと、こちらもグラフがかなり重なっていて、差は明確ではない。そもそも差が一番大きいとされる2K(グラフ54)でも、変動が多すぎて何が何だか、という感じになっているあたり、要するに変動が少ないほど平均フレームレートがやや高め、という感じになっているのではないかと思う。
○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ58~64)
Tom Clancy's The Division 2
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/division2/
こちらもまた、2K以外では殆ど差が見られない結果となった。その2Kにおける平均フレームレートでは、最高速はRyzen 9 5800Xで、これにCore i9-10900Kが続き、そこから数fps差で他のRyzen 5000シリーズがひしめき合うという構図になっており、なかなか興味深い。ただ2.5K以上は全体が数fpsの間に収まっているので、もう明確な差があるとは言いにくい。これは最大/最小フレームレート(グラフ59・60)も同じである。
フレームレート変動で見ると、2K(グラフ61)のみ明確に性能差があり、Ryzen 5000シリーズが有利(Ryzen 5 5600Xであっても、Ryzen 3000シリーズのどのCPUよりも高速)であるが、2.5K以上はその差が殆ど無くなって行く感じである。まぁ次のShadow of the Tomb Raiderに比べればそれでも変動幅が大きい方ではあるのだが。
○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ65~71)
Shadow of the Tomb Raider
SQUARE ENIX
https://tombraider.square-enix-games.com/en-us
最後のGame Benchmark。こちらは2K/2.5Kでは多少差が見られるものの、3K以上はほぼ同一と言った傾向。平均フレームレートを見ると、2Kの時は
Ryzen 3000シリーズ < Core i9-10900K < Ryzen 5000シリーズ
という傾向があり、各々のグループの間に10~20fpsの性能差があるのだから、これはやはり無視できない差であろう。最大フレームレート(グラフ66)ではこれが更に顕著で、2.5KだとRyzen 3000シリーズがCPUネックに、2KでCore i9-10900KがCPUネックになるが、Ryzen 5000シリーズはまだゆとりがあるという事だからだ(3K以上はGPUネックになるのでCPUは無関係になる)。最小フレームレート(グラフ67)もこうした傾向を反映したものになっている。
フレームレート変動もわかりやすい。2K(グラフ68)ではRyzen 5000シリーズ、Core i9-10900K、Ryzen 3000シリーズの3つに分離しているが、2.5K(グラフ69)だとRyzen 5000シリーズとCore i9-10900Kがほぼ重なる(ところどころ分離してはいるが)。3K以上(グラフ70・71)はすべてのケースが全部重なってほぼ1本の線になっている格好だ。
●RMMT / 消費電力 / 考察
○◆RMMT 1.1(グラフ72~74)
RMMT 1.1
Rightmark.org
http://cpu.rightmark.org/products/rmma.shtml
Ryzenの場合、メモリコントローラはDual Dieからのリクエストを受ける方が性能が上がりやすいようで、Read/WriteともにRyzen 9が最高速である。ただそれでもReadでRyzen 9 3900XT/3950XTよりもRyzen 9 5900X/5950Xの方がやや帯域が上がるのは、IPCというかLoad/Storeユニットがより効率よくLoadリクエストを発行できる様になったためかと思われる。
一方WriteはBurst転送が出来ない事もあってかそもそもそれほど性能差が出ないが、それでも2ダイ構成のRyzen 9が上位にいるのは流石である。謎なのはRyzen 9 5900X/5950Xの5Thread以降。どうしてここがピークになるのか、良く判らない。Ryzen 9 5900Xだけなら何か誤差とかミスの可能性も疑えるのだが、Ryzen 9 5950Xも同じ傾向を示している辺り、これはそういうものなのだと思う。
ちなみにRyzen 5 5600Xに関して言えば、Read/Writeともにそれなりといったところ。ただ別に低い訳ではなく、Ryzen 5 3600XTはもとよりRyzen 7 3800XTをも上回る帯域になっているから、ちゃんと性能は改善しているのだが。
Read/Write Mix(グラフ74)については、なぜかRyzen 9 5900Xが最高速になっているが、Ryzen 3000シリーズでもRyzen 9 3900XTが最高速なあたり、やはり2ダイ構成の製品の方が有利というのは判るが、Ryzen 9 3950X/5950XよりもRyzen 9 3900XT/5900Xの方が帯域が上なのは、やはりBase Clockが高い事が関係しているのだろうか?
○◆消費電力(グラフ75~81)
最後に消費電力について。前回同様Sandra 20/20のDhrystone/Whetstone(グラフ75)、CineBench(グラフ76)、TMPGEnc Mastering Works 7(グラフ77)、3DMark FireStrikeのDemo(グラフ78)、Final Fantasy XV(グラフ79)の消費電力変動をそれぞれ示す。
ちょっとグラフの線が多くなりすぎてて読みにくい部分もあるのだが、ポイントとしては
Ryzen 9 5950Xの消費電力は高めだが、それでもRyzen 9 3950Xより微妙に下がっている
Ryzen 5 5600Xの消費電力は、Ryzen 5 3600XTより結構下がっている
というあたりかと思う。ただこのままだと見にくいので、待機時の消費電力を含めた各々の平均値をまとめたのがグラフ80、ここでそれぞれの性能と待機時の差を取ったのがグラフ81である。
このグラフ81の数値を基に、
Ryzen 5 3600XTとRyzen 5 5600Xの差
Ryzen 7 3800XTとRyzen 7 5800Xの差
Ryzen 9 3900XTとRyzen 9 5900Xの差
Ryzen 9 3950XとRyzen 9 5950Xの差
の4つを算出したのが表2である。
ここで数字がプラスなのは、Ryzen 5000シリーズの方が消費電力が多い(マイナスならRyzen 3000シリーズの方が多い)という意味だが、見てみるとRyzen 5 5600はほぼすべての項目で大幅な省電力が実現できている。FireStrikeやFF15では省電力の効果が薄いが、これはGPUがフル稼働しているテストだからCPUの占める割合が低いわけで、致し方ない。またRyzen 9 5950Xも、おおむねCibneBenchとFF15以外は10~20Wの省電力化が実現できている。性能が上がりながら実質的な消費電力を減らせている訳で、これは大きな改善である。
もっとも全部が全部という訳でなく、Ryzen 7 5800Xは全体的に消費電力が結構増えている。Ryzen 7 3800XTはTDP 105Wといいつつそこまで使い切る事は無かったが、Ryzen 7 5800Xでは105W目いっぱいまで使うように設定されたようで、それもあって性能も上がるが消費電力も上がるという、ちょっと痛しかゆしではある。もっともその分性能も伸びているし、105Wの枠を超えている訳でもないので、許容範囲ではあろう。
○考察
というわけで性能編の完全版をお届けした。もうすでに購入を考えている読者の大半は購入してしまったのではないかと思うので、あまり意味のないレポートになった感は否めない(筆者の責任です。すいません)が、それでもまだ多少居られるであろう「これから購入するかどうかを考える」方へのガイドになれば幸いである。
結論としては以前の評価と余り変わらないのだが、付け加えるとすると
ゲームがメインで、しかもハイエンドビデオカードを組み合わせるのでなければ、Ryzen 5 5600Xで十分。消費電力も低く、それでいてGeForce RTX 3080との組み合わせでも力負けする(つまりCPUネックになる)シーンはそれほど多くなかった。
ベストバランスという意味では、Ryzen 5 5800Xをお勧めする。やや消費電力も増え、価格も増えるが、それこそ動画のエンコードとかデジカメ画像のレンダリングでもそれなりの性能が期待できる。ゲームもしばしば最高速を記録している。
絶対性能という意味ではやはりRyzen 9 5950Xであろう。CGのレンダリングみたいに、コア数で性能が決まるシーンでの性能の高さはピカ一である。もっともゲームとかでは思ったほど性能が出ない(というか、価格性能比が悪い)と感じるかもしれない。
というあたりだろうか。
原稿執筆時点(12月末)におけるAmazonでの価格を調べると
Ryzen 5 5600X: \47,500~
Ryzen 7 5800X: \60,980~
Ryzen 9 5900X: \88,888~
Ryzen 9 5950X:\134,980~
といった感じで、即納はRyzen 5 5600Xだけであった。もう発売後1か月以上経過しているのに、まだ品薄感は高い(手に入らないというほどではないが)。ただ性能を考えればこの価格はまぁまぁ妥当だろうか(ちなみに筆者も私物でRyzen 7 5800Xを購入した。2021年のベンチマーク用リファレンスになる予定だ)。
さて、今後の予定であるが、「Deep Dive編はどうした?」と言われそうだが、こちらはこれからである。その前に年末年始の恒例企画もこなしているので、その後の着手になる予定である。ということで、もうしばらくお待ちいただきたい m(_ _)m