Linuxの開発者のリーナス・トーバルズ氏が、技術コミュニティの「Real World Tech」内で「IntelはECCを死に至らせている」と発言し、IntelのECCに対する姿勢を厳しく批判しています。
コンピューターで利用されるDRAMは、電磁的影響により1ビットの値が反転してしまうことがあります。ECCメモリとは、そうした反転を訂正できる機能を追加したメモリのこと。ECCの機能を利用するためには、メモリだけでなくCPUやマザーボードもECCに対応している必要がありますが、IntelはECCへの対応をXeonシリーズなどのサーバー向けモデルに限定し、一般向けのモデルにはECC機能を提供していないのが現状。一般向けのハイエンドモデル「Core i7-10700K」も、ECCは非対応となっています。
インテル® Core™ i7-10700K プロセッサー (16M キャッシュ、最大 5.10GHz) 製品仕様
トーバルズ氏はECCについて「非常に重要なものです」とした上で、IntelのECCへの姿勢を「Intelはとてつもないく悪い市場細分化を行うことで、ECC市場全体を死に至らせています」「IntelのECCに対する議論は、いつもまったくゴミ同然でした」と発言。長い間CPU市場を支配してきたIntelが「消費者はECCを必要としていない」というポリシーのもと、ECC対応モデルを限定してきたことを厳しく批判しています。
「何十年も説明できない奇妙なカーネルエラーに悩まされてきましたが、それらはおそらくメモリのエラーによるものです」とトーバルズ氏は推測しており、ECCがあれば回避できたエラーに遭遇し続けていることに腹を立てているとのこと。「現代のメモリは信頼性が高いので、ECCは必要ない」という意見を自身の経験から一蹴しています。
ECCによる製品差別化を図っているIntelに対し、AMDは非公式ながら、サーバー向けモデルのRyzen Threadripperだけでなく、一般向けのRyzen 5000シリーズでもECCを提供しているとのこと。Linux 5.10では、実際にRyzen 5000シリーズでECCが機能しているそうです。トーバルズ氏はECC市場に復調のきっかけを作ったAMDに感謝していると語っています。
「以前はECCは簡単に利用できるものでしたが、Intelのひどいポリシーによってつぶされてしまいました。DRAMの信頼性が向上したことでECCは不要になったという意見には、耳を傾けないでください」とトーバルズ氏。なお、トーバルズ氏は2019年5月に自身のメインマシンのCPUをAMD製に移行しています。
Linux生みの親リーナス・トーバルズが15年ぶりにメインマシンのCPUをIntelからAMDに変更 - GIGAZINE