ドナルド・トランプが任期1期だけで退任した米大統領の一人となることが決まり、主流主要メディアやフェイスブック、ツイッターがトランプによる危険な陰謀論や根拠のない選挙不正の主張を無視(トランプ支持者に言わせれば検閲)することを決めたことで、トランプ支持者の多くは代替となる交流サイト(SNS)「パーラー」に注目し始めた。
ただ、こうした超保守層の大多数は今もツイッターやフェイスブックを使用し続けており、自分たちがパーラー上に集結していると宣言した場所は別のSNS上だった。トランプ支持者らのおかげでパーラーのユーザー数は100万人以上増え、アプリのダウンロード数でもトップに躍進。ウィキペディアにも「ドナルド・トランプ支持者、保守派、陰謀論者、右派過激派に大きなユーザー基盤を持つ」と記載されるようになった。
パーラーは2018年、保守派の富豪レベッカ・マーサーの出資を受けて立ち上げられた。マーサーはブライトバート・ニュースなどの極右サイトや選挙コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカなどへ投資してきた人物だ。
パーラーはユーザーに対し「言論の自由」を保証し、制限を一切受けずに発言できる場を提供することをうたっている。創業者によると、パーラーは「検閲のないオープンなコミュニティーの場」であり、「ニューヨークの街角で話せることはパーラー上でも話せる」としている。
ただもちろん、この主張は誤りだ。パーラーは、データ収集をめぐるスキャンダルで倒産したケンブリッジ・アナリティカと同じ人物から資金提供を受けているのみならず、介入も検閲もしないとのうたい文句はまやかしであり、実際にはかなり積極的に検閲を行なっている。パーラーはアカウントを削除したり、多数の表現や画像の投稿を禁止したりしており、利用規定はもはやフェイスブックやツイッターよりも厳しい水準にある。
唯一の例外がヘイトスピーチで、パーラー上ではヘイト投稿がまん延している。さらに、とんでもない陰謀論が飛び交うSNSにふさわしく、突飛な疑いが掛けられることも多い。例えば、パーラーの所有者は右翼の目の敵となっているジョージ・ソロスであるとフォックスニュースが報じたという誤情報も拡散した。
極めつきは、ポルノ問題だ。パーラーでは、「#keepamericasexy(アメリカをセクシーなままに)」や「#sexytrumpgirl(セクシートランプガール)」といったハッシュタグを使ったポルノ広告の投稿が横行している。
考えれば分かることだが、ルールなしのSNSを立ち上げても、問題のある人々が集まるだけだ。パーラーの創業者や出資者の経歴を見ても、同サイトが特定の層にアピールし、その層の内部での「エコーチェンバー」を増幅させることを狙っているのは明らかだ。パーラーのポリシーは「検閲をしない」ではなく「同意できない意見は検閲する」であり、他のSNSと何ら変わりはない。