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Aの左にある「CapsLock」キーは本当にいらない子?

 ITmedia NEWSの読者であれば、普段見慣れている……と言うより叩き慣れているであろう、PCのキーボード。しかし普段使っていて、どうにも使用頻度が低い……というか「これって何のために付いているの?」というキーはないだろうか。

 実はそうしたキーは、今の日本では使用頻度が少なくとも、海外では非常に便利だったり、面白い歴史があったり、はたまた「スマホゲームにおいて普段は使いにくいけれど、高難度クエストのみ輝くあのキャラ」的なキーだったり……と、その多くはやっぱり付いている意味があるのだ。

 この連載では、そうした普段は意識しない、使用頻度が比較的低いキーの機能や役割、由来、小話などを紹介していきたい。

英語圏では大文字固定に使われる「CapsLock」キー

今回紹介するのは「CapsLock」キーだ。このキーの基本機能は「アルファベットの大文字を、Shiftキーを押したままでなくても入力可能にする」というもの。他にも後述するいくつかの理由があり、日本では「これ必要ないのでは?」とよくいわれるキーの一つだ。

 しかしこのキー、アルファベットで読み書きする米国などでは、チャットなど口語的な文章を書くシーンで威力を発揮するのだ。若干乱暴な表現かもしれないが、CapsLockを使うと強い口調で言いたい文章を素早く書ける。

 英文では一般的に、単語の頭文字だけを大文字にする。大文字を英語ではCapital letterと表現するが、この状態で固定するからCapsLockという。しかし全てを大文字にすることで、その単語を強調したい、音でいえば声を張る表現となるのだ(ドナルド・トランプ大統領がTwitterでよく使っているあれだ)。

 ちょっと強引に日本語での使い方に例えるならば、「勝 ち 確」といったように、1文字ずつ空けての表記に近い文章表現になる。ここまで読んで「え? 特定のキーを押すだけで、わざわざ間にスペースを入れなくてもこの表現ができるの? そりゃあ使うよ」と思った方もいるだろう。それこそがこのキーが存続している理由だ。

 つまり、各種のチャットやツイートなどでは、それなり以上に使われるキーでもある。むしろ(統計を取ったわけではないが)「私は強く主張したい」というカジュアルな意思表示をネット上で多く見かける昨今では、むしろ使用頻度が高くなった、そして今後も高くなるキーかもしれない。

日本語配列の「英数」機能が不要論を後押し?
なお、あえて後回しにしたけれど、ここまで紹介した機能はUS配列などでの機能。日本語配列の場合、Shiftキーを押しながらでなければCapsLockとしては機能しない。

 では日本語配列の場合、このキーを単独で押すとどうなるのか? 実はカナ入力時に英数入力へと切り替える、「英数」キーとして動作する。特に日本語入力(日本語IME)をオンにしている場合「IMEをオンにしたままで英字入力をする」という役割になるのだ。

この機能を知らないユーザーが誤って押すと「IMEをオンにしているのに、入力中文字がひらがなにならない」という深刻な(知らない人によっては本当に深刻)トラブルになってしまう(なお、戻すには「カタカナ ひらがな」キーを使えばOK)。冒頭で「後述するいくつかの理由」と紹介したのは、この辺りの日本語配列ならではの事情を指していた。

 最近の使い方では、アルファベットを入力するならIMEの変換でカバーするか、IME自体をオフにしたほうが速いから、余計にややこしい。日本のユーザーにとっては、このあたりも不要論を後押しする要素になっていそうだ。

 そしてキータイプの上級者から見ると、タッチタイピングの際に小指で楽に押せる「特等席」な場所にありながら使用頻度が低い、という点も悔しいところ(え? 悔しい? と思われる方もいるだろうが、悔しくなるものなのだ)。

 実はこの位置にCtrl(コントロール)キーがあるタイプのキーボードも意外と多く、また高級キーボードではハードウェア的な入れ替え機能の搭載が当たり前になっている(キーの入れ替え機能で真っ先にサポートされるのがここといってもいい)。

Ctrlキーはヘビーユーザーになればなるほど、各種操作での使用が多いこともあり、また歴史的経緯を見れば、コンピュータの機種によっては「Aの左はCtrl」が標準になっている配列も多い。

 こうした理由で、CapsLockキーの入れ替え需要があることも不要論の背景にありそうだ。

 では、ハードウェアでの機能入れ替えができない安価なキーボードやノートPC付属キーボードでは、CapsLockキーを誤タッチしないために引き剥がしておけばいいかというと、それではせっかくの特等席がもったいない。

 CapsLock、あるいは英数キーとして使用しないとしても、各種IMEではキーへの機能割り当てがソフトウェア的にできるようになっている。例えば「半角/全角」キーと同じようにIMEのオンオフをCapsLockキーに割り当てることもできる。他の方法としては、レジストリを書き換えて別のキーとして振る舞わせる方法もある。

 CapsLockキーを「いらない子」として見放す前に、ちょっと設定を見直してみると案外便利に使えるかもしれない。

Macはさらに独特な配列に
ちなみに、独特のこだわりを見せているのがMacの配列。各種英語(USやUK)配列と日本語(JIS)配列では、CapsLockキーの位置が大きく異なる(当然、機種によって細かな違いはあるが)。具体的には、US配列などではWindows用と同じAキーの左側なのだが、JIS配列では左端の一番下に置かれている。つまり使用頻度に合わせてキーの位置自体が変更されているというわけ。

この辺りは、ユーザーメリットがあるとなったら思い切って手を入れてしまう、良くも悪くもAppleらしい姿勢でもある。最近はApple Siliconこと「M1チップ」の搭載で注目を浴びるMacだが、プロセッサだけでなく、キー配列にもこんなこだわりがあるわけだ。



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