全高16.5m - 巨大なITER用トロイダル磁場コイル初号機が完成
核融合科学研究所(NIFS)では、プラズマ核融合分野専用のスーパーコンピュータ(スパコン)である「プラズマシミュレータ雷神」の運用を2020年7月1日より開始した。ベクトル型スパコン「NEC SX-Aurora TSUBASA A412-8」×540基で構成されており、10.5PFLOPSの演算性能を持つ。2020年11月に発表されたHigh Performance Conjugate Gradients Benchmarkにおいて国内3位、世界10位の成績を収めている。
核融合科学研究所では、数値実験炉研究プロジェクトと呼称し、大型ヘリカル装置での実験結果や理論と連携しつつ、ヘリカル数値試験炉の構築を目指している。核融合研究では、1億度を超え、複雑な振る舞いをする核融合プラズマの動きを解析・予測するためにハードウェアベースの研究とほぼ並走でシミュレーション研究が進められてきた。プラズマ中の磁力線をつなぎ替えたときの粒子の運動や容器内のプラズマの微妙な動き、容器内にある機器への影響などがあり、装置全体のプラズマの振る舞いを予測することができれば、核融合開発はよりスムーズに進められる。2020年時点での数値実験炉研究プロジェクトの中核に据えられているのが、プラズマシミュレータ雷神だ。
公募により決定された雷神という愛称
雷神の名称は公募により決定された。雷神は雷を司る神であり、雷はプラズマの形態のひとつ。プラズマを制御する研究をしている背景、雷光のように一瞬で膨大な計算ができるといった点から採用されたそうだ。また俵屋宗達筆の風神雷神図屏風などは海外でもよく知られている点も選考のポイントになったとのこと。デザインも愛称をベースにしており、雷と雷神をアクセントとしたデザインになっている。
プラズマシミュレータ雷神の演算性能は10.5PFLOPS。SX-Aurora TSUBASA A412-8を540基を並列接続したもので、ベクトルエンジンは4320基になる。構成を見ていくと、30ラックで構成され、ラックあたり18ノード、ベクトルエンジン144基。1ノードは2UにNEC製ベクトルエンジンType 10AEを8基を搭載し、ベクトルホストに接続している。1ノードあたりの性能は2.433TFlops。ベクトルホストはAMD EPYC 7402P、メモリ128GB、OS CentOS 7。この1ノードのシステムがSX-Aurora TSUBASA A412-8になる。またファイルサーバはシステム214TB、バックアップ505TB。外部記憶装置の容量は32.1PB。
上記のような大規模並列システムで、数千から数万オーダーを処理していく。容器内のプラズマをある程度のグループに分けて処理することもあれば、部分的により細かいグループでシミュレーションしていくこともあるほか、プラズマだけでなく磁場の動きや水素の動きなども演算するそうだ。また実際にプラズマがどういう形でどう動いているかを実物大でチェックすることもある。これはCompleXcopeというバーチャルリアリティ装置にシミュレーション結果リアルタイムに実物大で見ていく。一般公開で体験できることもあるそうだ。
世界最大の超伝導プラズマ閉じ込め実験装置「大型ヘリカル装置」
今回の取材は第22次実験中であったのだが、一部、世界最大の超伝導プラズマ閉じ込め実験装置である「大型ヘリカル装置」も見ることが許されたので、少し写真を掲載していく。真空容器内は2021年に撮影できる予定なのでまた別の機会にレポートをできればと思っている(今回の取材はほぼロケハンに近い感じであった)。