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LGやモトローラなどがペン付きスマホを投入する理由(山根博士)

モトローラから「moto g Pro」が日本向けに発表となりました。すでにアメリカで販売中の「moto g stylus」の日本向けモデル。そのオリジナルの名前からわかるように、スタイラスペンの使えるスマートフォンです。ビジネス市場をターゲットにしていますが、ペンでちょっとしたメモが書ける機能は一般ユーザーにもあれば便利なもの。ペンは静電容量式で充電が不要なため筆圧感知などはないようですが、本体から取り出してすぐに使える利便性は高そう。ぜひともSIMフリー市場で販売してほしいものです。

ペンの使えるスマートフォンと言えばサムスンの「Galaxy Note」シリーズが10年の歴史を誇るロングセラーとなっています。この間にはQWERTYキーボード付きスマートフォンが次々と姿を消すなど、スマートフォンはディスプレイに指先タッチで操作する製品ばかりとなっていきました。しかしサムスンは毎年欠かさずペン付きスマートフォンの新製品を投入し続けてきたのです。

またLGが対抗して「Vu」シリーズを出すものの、3機種で終わっています。ASUSも2013年に6インチという当時としては大型なディスプレイを搭載した「Fonepad Note FHD6」にペンを搭載、市場性を伺った時期がありました。ちなみに当時は「ファブレット」という名称が使われていたころでした。なおLGはその後、簡易的な細いペンを本体に内蔵した「Stylus」「Stylo」シリーズをアメリカなどで展開しています。

このようにスマートフォンでペンと言えばGalaxy Note、という時代が長く続きましたが、ライバル各社から対抗製品が次々と出てきています。

まずはLGが今年発売した「V60 ThinQ」は専用スタイラスペンに対応します。日本ではペンの試供品としてドコモ販売モデルの購入者の一部に限定提供されたのみですが、海外では別売品として販売されています。このペンはActive Electrostatic Digitizer (AES) technologyを採用しているので、他社の同技術対応ペンも利用できます。後継機となる「VELVET」や「WING」も同じペン入力に対応しています。

そして10月22日に発表されたファーウェイの「Mate 40」シリーズも、新しいスタイラスペン「M-Pen2」に対応しました。充電は初代Apple Pencil同様、本体のType-Cに直刺しして行うので電池切れの心配が少なくなります。ファーウェイのタブレットにも対応するため、スマートフォンとシームレスに使うことができるのも特徴です。

これら各社のスタイラスペンに対し、本家サムスンの最新モデル「Galaxy Note20 Ultra」ではスタイラスペンにBluetoothを内蔵し、本体のリモート操作も可能になっています。ペンをペンとしてではなくリモコンとして使うことができるわけです。またペンを抜けばすぐにメモが取れたり、手書きした文字をテキスト化する機能などソフトウェアも年々進化し続けています。

さて、現在スマートフォンを使っている人で「ペンが必要」と考える人はあまり多くないでしょう。一方、iPad Proなどタブレットではペンがあったほうがはかどる作業も多くあります。つまり小さい画面ではペンはあまり使いやすい入力デバイスではなく、大きい画面のタブレットなら紙のノートのように使えることから、ペンを活用すると作業がはかどるわけです。

ではどうしてここにきてスタイラスペンが使えるスマートフォンが急に増えているのでしょうか。それは、スマートフォンのディスプレイサイズが大型化してきたからでしょう。2018年10月にファーウェイが発表した初のペン対応スマートフォン「Mate 20 X」は7.2インチのディスプレイを搭載していました。これだけの大きさがあればペンも快適に使えるとファーウェイは当時判断したのでしょう。最近のスマートフォンは6インチ台ながらもアスペクト比が19:9などワイドサイズになっており、片手でも持てる上に小型の紙の手帳のようにペンを使って文字を書くことも苦にはなりません。

moto g PROのディスプレイは6.4インチ、本体サイズは158.55x75.8x9.2mmです。システム手帳のバイブルサイズが171x95mmですからそれよりも若干小さめ。しかし本体を手に持って右下からペンを抜き、手書きするには十分な大きさです。モトローラ社員の方による実際のペンの手書きデモを見せてもらいましたが、細かい書き込みはやや不得意なもののメモを取るには十分です。

またモトローラの振って操作するmotoエクスペリエンスを使うとさらに便利。気になるものがあったらmoto g PROを振るとカメラが起動します。続けてGoogleレンズで商品を検索、出てきた結果ページのスクショを撮ってメモ。それをメールやSNSで送るなど、ペンがあると日常の情報収集もはかどるわけです。

本体にペンを内蔵すると構造が複雑になりますが、長年のペンスマートフォンの開発ノウハウを持つサムスンは細いペンの中にバッテリーとBluetoothまで内蔵してしまいました。最新のGalaxy Note20シリーズでは本体のカメラサイズが大型化したことにより、ペンの収納位置を右下から左下に移動させています。このように本体内にペンを収納させるとなると入念な内部設計が必要になるわけで、ペン内蔵スマートフォンがあまり増えなかったのもこのあたりに理由があったのかもしれません。moto g PROは充電を不要とすることやカメラユニットが小さいためにすんなりと右下にペンを収納しています。

一方、LGやファーウェイは市販のボールペンに近い太さのペンとすることで握りやすくし、本体に収納することはあきらめています。ペンをなくしてしまう可能性もあるものの、ペンに握り心地はこちらのほうが上です。Mate 20 Xはペンを収納できるフリップケースがサードパーティから発売されましたが、今後はそんなケースがいろいろ出てくるかもしれません。

なおサムスンは大手ペンメーカーのLAMYと組んでボールペンと同じサイズのスタイラスペンを発売、そのペンを保持できる「Galaxy Note10」シリーズ用のフリップ式革ケースも出しています。

スマートフォンにペンは不要、と考えている人でも、最近の大画面スマートフォンでスタイラスペンを使うと意識が変わるかもしれません。マルチウィンドウにしてブラウザとメモアプリを同時に起動してメモを取る、なんてこともできるわけですから。iPhoneでApple Pencilが使えるようになったら、もしかするとペン対応スマートフォンが急増するかもしれませんね。moto g PROのペンの書き心地も、ぜひ試してみたいものです。



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