ジュピターテレコムの運営するMVNOのJ:COM MOBILEが、料金プランを刷新した。同時に、第2世代のiPhone SEを“実質0円”で販売するなど、勢いを加速させている。料金プランの改定に合わせブランドもリニューアルし、これまで取り逃していた若年層にもユーザー層を広げていく方針だ。
J:COM MOBILEは、KDDI傘下のMVNOという側面も持つ。いわば、サブブランドといえそうだが、その色合いは他のブランドとは大きく異なり、ケーブルテレビの加入者が中心のMVNOだった。手厚いサポートや低料金が受け、比較的高い年齢層のユーザーが集中していた。このユーザー層を広げ、規模を拡大させていくのが同社の狙いだ。
もともとはケーブルテレビが中心で広げていたMVNOだが、逆にMVNOのユーザーを軸に、ケーブルテレビを広げていくのも、料金プランやブランド刷新の目的の1つだ。そんな新生J:COM MOBILEの狙いや意気込みを、ジュピターテレコムの代表取締役社長を務める、石川雄三氏が語った。
iPhoneの比率が上がってきている
―― いきなりで恐縮ですが、規制がある中、iPhone SE(第2世代)が実質0円だったのは、衝撃を受けました(笑)。
石川氏 (規制の対象にならないのは)KDDIの特定関係法人ではないからです。正確に言うと、ジュピターテレコムは特定関係法人ですが、J:COM MOBILEはジェイコム東京やジェイコム湘南・神奈川などの各地域会社が提供しています。数字は発表していませんが、それぞれの数は非常に小さい。もちろん、恣意(しい)的に分散させているわけではなく、以前からそうなっていました。(100万契約を超えて)規制の対象になるなら東京が最初になると思いますが、そのときには全国で400万、500万契約になっているのではないでしょうか。
―― なるほど。100万契約を超えるのも、時間がかかりそうですね。久しぶりに聞いた実質0円で、しかも今年出たばかりのiPhone SEということもあり、反響は大きかったのではないでしょうか。おかげ様で、反響は大きかったですね。本格的なプロモーションはこれからですが、iPhoneの比率は上がってきています。そもそも、J:COM MOBILEはJ:COMのお客さま向けのMVNOでした。J:COMのお客さまというのは、テレビかネットのお客さまという狭い定義です。そうではなく、それぞれの地域のお客さまに対し、いろいろなサービスを提供していく会社にしていきたい。モバイルがよければモバイルから入っていただき、そのうちJ:COM LINK(Android TVを採用したセットトップボックス)のようなものを使って、テレビやネットに来ていただく。そういうふうに、考え方を変えました。
ありがたいことに、今まではJ:COMのお客さまが99%でしたが、今回ストラクチャーを変えたことで、J:COM以外から入ってくださるお客さまが4割ぐらいになっています。これは、われわれにとって非常に大きいことです。
オンラインの仕組みを充実させる必要がある
―― その意味では、大胆に構造が変わりましたね。
石川氏 ただ、絶対値はまだまだ少ないので、地味と言えば地味な感じですが(笑)。
もともと、J:COM MOBILEのお客さまは60代以上が非常に多かった。J:COMのお客さまで、かつリテラシーの高い方や、データ容量をたくさん使う方には、なかなかオススメしづらい料金プランになっていました。まだシニア比率は高いのですが、今回の形にしたことで、若い方の数は確実に増えています。認知度の問題はありますが、戦略の狙い通りには動いています。
―― もともと、J:COM MOBILEは、訪問サポートなどの手厚いサポートが売りだったと思いますが、その意味で言うと、そういったものを必要としていないユーザーが増えていくことになるのでしょうか。
石川氏 オフラインの力で、オンラインをより充実したものにすることができないかと考えています。確かにオフラインには強いのですが、サポートがわざわざ来てというのはお客さまにとっても負担です。アプリなどはしっかり説明して、オンラインで楽しんでいただいたり、スマホで簡単にサポートしたりといった構造は作りたいと思います。
―― なるほど。一般的に、MVNOはサポートが手薄と言われる中で、売りになっていたような印象でしたが、ユーザーを広げる上ではオンラインサポートの充実も欠かせないということですね。
石川氏 J:COMの弱みはエリアが限られていることで、全国津々浦々ではありません。販売やサポートまでできる人員や地域が1社でここまで広い会社は他にはありませんので、そこは非常に強いのですが、エリア外になるとどうしてもオンラインになってしまいます。ですから、オンラインの仕組みを充実させることが必要なのです。