ASUSの「ROG Zephyrus M15」シリーズは、15.6型の液晶ディスプレイを採用するゲーミングノート。4K液晶を採用する上位モデルの「GU502LW」(実売価格27万円前後)とフルHDでリフレッシュレートが240Hzの高速液晶を備える下位モデルの「GU502LV」(実売価格23万円前後)をランナップしている。ここでは、上位モデルのレビューをお届けする。
ASUS、薄型軽量の新デザイン15型ノートPC「ROG Zephyrus M15」
○薄型ボディなのに中身は重厚なゲーミングノート
まずは、基本スペックをチェックしよう。CPUは、Intel第10世代Coreプロセッサ「Core i7-10750H」を搭載。6コア12スレッドで動作クロックは最大5GHz(TurboBoost時)とノート向けのCPUとしては十分すぎるほど高い性能だ。コア数が効く処理、動作クロックが効く処理のどちらにも強い。メモリはDDR4-2933が16GBと十分な容量だ。ストレージは500GBのNVMe SSDを2枚搭載し、RAID 0を構築済み。大容量と高速なデータ転送速度を両立している
GPUには、NVIDIAの「GeForce RTX 2070 with Max-Q」を搭載。ノートPC向けのアッパーミドルGPUで、ビデオメモリはGDDR6が8GB、ブーストクロックは1,125MHzとなっていた。Max-Qは薄型ノート向けなので、デスクトップ向けのGeForce RTX 2070に比べて、動作クロックなどは若干低めだが、それでもGPUとしては高性能と言えるもの。RTXシリーズなので、リアルタイムレイトレーシングを楽しめるのも強みだ。
ちなみに、下位モデルのGU502LVはCPU、メモリは共通だが、GPUがNVIDIAの「GeForce RTX 2060」、ストレージがNVMe SSDの512GBになる。
ディスプレイは15.6型で解像度は4Kだ。表面は映り込みのないノングレア仕様、リフレッシュレートは一般的な60Hzだ。魅力的なのはAdobeRGBカバー率100%の広い色域だ。色の鮮やかさをハッキリと感じられる表現力があり、ゲームをプレイしていても気持ちがいい。HDRにも対応している。
サイズはW360×D252×H18.9~19.9mm、重量は2kg。15.6型のゲーミングノートとしては薄型、軽量だ。これならLANパーティなどのイベントに持ち込みやすい。バッテリー駆動時間は公称で約9時間(JEITA測定法2.0)と十分長い。
インタフェースは右側面にUSB 3.0×2、Thunderbolt 3×1、左側面にヘッドホン出力、マイク入力、ギガビットイーサ、HDMI出力、USB 3.1 Gen2×1を備えている。無線はWi-Fi 6に対応。Bluetooth 5.0も備えている。
次に入力インタフェースを見て行く。キーボードは日本語配列だ。詳しいスペックは公表されていないが、実測でキーピッチは約19mmと十分なサイズ。HomeやPageup、Pagedown、End、FNキーが縦に並ぶちょっと特殊な配列だが、使用頻度の高いキーではないので実用上困ることはあまりないだろう。キーはしっかりクリック感があるので、ゲームプレイでも使いやすい印象だ。Nキーロールオーバーに対応しているので、すべてのキーを同時に押しても認識が可能なのもポイントと言える。なお、テンキーは搭載されていない。
○液体金属グリス効果か、高性能なOCモードが実用に
ここからは性能チェックに移りたいと思う。まず知っておきたいのが本機には、動作モードとして性能を絞って動作音を静かにする「サイレント」、標準的な設定の「パフォーマンス」、オーバークロック(OC)動作でエンコードなど負荷の高い処理速度をアップする「Turbo」が用意されていること。ASUSのゲーミングノートでは最近標準機能の一つとなっている。モードごとにどう性能が変わるのかにも注目してほしい。
まずは、「PCMark 10 v2.1.2177」、「3DMark v2.12.6964」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 7.0.0f」の結果から見ていこう。
PCMark 10のスコアは、6コア12スレッドのCPUだけに十分高い。しかし、サイレントモードでは性能はワンランク下がる。とくにクリエイティブ系の処理を行うDigital Content Creationでは顕著だ。WebブラウザやOffice程度ならサイレントでも十分だが、レタッチや動画編集をするならパフォーマンスモード以上がいいだろう。
一方でGPU性能を大きく関わる3DMarkでもモードごとに大きな差が出ている。3Dゲームをプレイするなら、パフォーマンスまたはTurboモードにしておいたほうがいいだろう。CINEBENCH R20の結果もTurboモードが最も高スコアだ。
ストレージの最大性能を見るCrystalDiskMark 7.0.0fについては、RAID 0構成ではあるが内部の接続インタフェースがPCI Express 3.0 x2となっているため、NVMe SSDとして超高速というわけではないが、それでもSerial ATA接続よりもずっと高速。ゲームのロード時間などで不満を感じることはないだろう。
なお、各モードの動作音とCPU、GPUの温度もチェックしてみた。動作音は本体前面から10cmの位置に騒音計を設置し、3DMarkのFire Strike実行時の数値だ。CPUとGPUの温度はPCMark 10実行後に出力されるモニタリングデータから最大値を拾っている。
注目したいのはTurboモードの数値だ。オーバークロック動作により性能は最も高いにもかかわらず、CPUとGPUの温度はパフォーマンスモードよりも低く抑えられている。動作音が大きくなるというトレードオフは発生しているが、オーバークロック動作にあわせて冷却機能も最大化することで冷やしているのだろう。CPUに熱伝導率の高いThermal Grizzly社製の液体金属グリスを使用するなど、冷却性能にこだわっているだけある。これなら、長時間のゲームプレイも安心だ。ただ、動作音の大きさを考えるとヘッドセットを装着してのプレイをオススメしたいところ。
基本的なベンチマークはここまでにして、実ゲームのベンチを紹介していきたい。定番としてMMORPGの「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、軽めのゲームとしてFPSの「レインボーシックス シージ」、中量級のゲームとして「フォートナイト」、高い性能を求める重量級ゲームとして「モンスターハンターワールド:アイスボーン」を用意した。モードは「Turbo」に設定し、フルHD解像度と4K解像度でテストを行っている。
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークは、最高画質かつ4K画質でも「非常に快適」という評価。4Kでも遊べるのは心強い。
レインボーシックス シージは内蔵のベンチマーク機能で測定した。比較的軽めのゲームなので、4K解像度でも平均92fpsと快適にプレイ可能だ。
フォートナイトはソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートをCapFrameXで計測している。4K解像度だとなんとかプレイできるというフレームレート。フルHDなら最高画質でも十分すぎるほど快適だ。
モンスターハンターワールド:アイスボーンは集会エリアを作成し、一定のコースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測している。さすが重量級ゲームだけあり、4K解像度では平均27.9fpsと快適なプレイは厳しい。フルHDなら平均80.5fpsと最高画質でも余裕でプレイが可能だ。今年の年末はAAA級ゲームがドサッと発売されるが、フルHDなら最高画質で十分遊べるだろう。
最後に、ROG Zephyrus M15 GU502LWはフルHDなら重量級のゲームを最高画質で遊べるだけの性能があり、高画質なHDR対応の4K液晶によって映像コンテンツも存分に楽しめる。基本スペックが高いので、クリエイティブ系の作業にも十分対応が可能と汎用性も高い。多くの人にオススメしやすいゲーミングノートだ。