モトローラは9月10日(日本時間)、昨年発売した折りたたみスマホ「razr」の5G版を発表した。
注目はスペック表におけるBandの部分だ。あえて「Japan」という表記が記載されており、日本投入の可能性がきわめて高いことが窺える。初代Razrは、eSIMにしか対応しておらず、日本のキャリアやMVNOで採用できるところがかなり限定的になるという「欠点」が存在していたが、今回発表の新型は「eSIMとnanoSIM」のデュアルに対応している。
つまり、nanoSIMを提供しているあらゆるキャリア、MVNOで採用することが可能というわけだ。
実は、モトローラ製品を日本で展開するモトローラ・モビリティ・ジャパンの社長が、この7月、ダニー・アダモポウロス氏から松原丈太氏にバトンタッチされた。これはモトローラとしても、日本市場をさらに強化するという意識のあらわれのようだ。
■モトローラ日本展開「3つの軸」
まず、1つ目の軸は従来の路線を強化するということだ。モトローラの日本展開ではコストパフォーマンスの良い製品を揃えてきた。
8月下旬には、従来よりもさらに手に取りやすい価格帯の「moto g8 power lite」「moto e6s」を発売したばかりだ。これらの製品はケータイからスマホに初めて乗り換えるユーザーを意識した価格帯だ。SNSやウェブ閲覧など基本的な使い勝手は申し分なく、カメラも2眼で写真を楽しめるようにもなっている。
日本市場におけるモトローラ製品は、売り場では品質の良さに定評があるという。故障が少なく、販売スタッフが売りやすいというわけだ。
ただ、品質に対しては評価が高いものの、製品がマジメすぎて、面白味が欠けるというのが弱点になりつつある。
そこで松原社長は「ユーザーはValue for Price(コストパフォーマンス)を求めているが、それだけではなく、ワクワク感も欲している。海外市場では攻めた、とがった製品を出している。5Gではちょっと面白いと思える個性的な商品を出していきたい」と語る。個性的な商品展開が2つ目の軸となるようだが、まさに冒頭のrazr 5Gはワクワク感のあるとがった製品と言えるだろう。
では、razr 5Gの日本上陸はありうるのか。
■「razr 5G」日本上陸は期待できそう
松原社長は「razr 5Gを日本のお客様にお届けできるよう、現在準備を進めている。razr 5Gは大画面を折りたたんでポケットに入れられるだけでなく、質感の高い素材や画期的なヒンジ機構など、モトローラ製品のクオリティの高さを実感いただける製品。是非楽しみにお待ちください」と語る。これは相当、期待しても良いだろう。
松原社長が3つ目の軸として考えているのが、日本市場特有のニーズをとらえた製品の展開だ。
「防水やFeliCaだけでなくサイズ感やデザインなど日本のニーズに向き合った製品を出していきたい。日本にはいろいろお客さんがいて、様々なニーズが存在する。1つのモデルで全てのニーズを捉えることはできない。より深掘りしてニーズを見極めていきたい」という。
ただ、日本仕様を取り込んだ製品となると、グローバルの発表、発売からどうしても時期が空いてしまうことがある。結果、日本のユーザーとしては日本上陸した頃には目新しさに欠け、購入意欲が減退しているということも多い。
松原社長は「グローバル発売後、すぐに日本で発売するには苦労を強いられるが、オペレーションで慣れていき、タイムラグなく、発売できるようにしたい」と意気込んでいる。
■日本にもモトローラブランド浸透か
昨年10月に電気通信事業法が改正され、通信契約とセットになった端末販売では割引額に上限が設定された。ユーザーはスマホ本体の代金を今まで以上に意識するようになり、コストパフォーマンスの良いスマホが求められるようになりつつある。
松原社長も「ユーザーの見る目が変わってきた。スマホに対していくら払うのか、どういうものが買えるのかといった視点で選ばれるようになる。まさに競争の原点になっていく」と気を引き締める。
そんななか、コスパのいい中国メーカーが相次いでキャリアのラインナップに採用されていく中、キャリアのカタログでモトローラの名前を目にすることはいまのところない。果たして、キャリアへの納入は、どうなっているのだろうか。
「キャリア向けは重要であり、現在、いろいろな話をしている最中でもある。キャリアとコミュニケーションをするのはハードルが高いが、モトローラでは日本のプライオリティが上がっており、チームを拡充し、コミュニケーションを強化している」という。
かつて、日本で折りたたみケータイの「razr」はNTTドコモが取り扱いをしていた。
今回、発表となったrazr 5Gが日本のキャリアから発売されるなんてことがあれば、日本でもモトローラのブランドが一気に全国規模で浸透することになりそうだ。